需給動向 海外

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生乳価格安も生産は堅調に推移、輸出需要に期待感


2014年8月の生乳出荷量、前年同月比3.8%増

 ドイツ乳製品市場価格情報センター(ZMB)によると、2014年8月の生乳出荷量は、1281万トン(前年同月比3.8%増)となり、14カ月連続で前年同月を上回った。また、2014年の8月までの累計では、1億78万トン(前年同期比5.0%増)と、前年同期を478万トン上回っている(図25)。8月までの増加要因として、全体的に天候に恵まれ放牧環境が良好であったことに加え、2015年3月末で終了する生乳クオータ制度を見据えて生産者が増産体制を整える中で、旺盛な輸出需要に支えられた高い乳価が生産者の増産意欲をさらにかき立てたことが挙げられる。

 一方、輸出需要に陰りがみられることから、2014年下半期の生乳出荷量は減少との見方も出ているが、欧州委員会が9月に公表した短期見通しでは、2014年の生産量は1億4640万トンと、前年を510万トン上回るとしている。

図25 生乳出荷量の推移
資料:ZMB
  注:2014年は暫定数値

2014年9月の生乳価格、前年同月比5.5%安

 オランダ農業園芸組織連合会(LTO)によると、2014年9月のEU域内主要乳業メーカー16社の平均生乳買取価格は、100キログラム当たり37.47ユーロ(5208円:1ユーロ=139円)と前月から同1.03ユーロ(145円)値を下げ、前年同月比5.5%安となった(図26)。

 しかし、依然として乳価は高水準にあり、生産者の増産意欲を減退させるものとはなっていない。また、一部ではウクライナ問題を契機としたロシアによるEU産乳製品の禁輸措置の影響で供給過剰が懸念されるものの、一部では一服感が出ているとされる中国の輸入需要が回復するとの期待なども相まって、減産に向けた動きは高まっていない。

図26 生乳価格の推移
資料:LTO
  注:域内主要乳業16社の平均値

 LTOによると、主要乳業メーカー16社のほぼ全てが9月の生乳買取価格を引き下げている。さらに10月以降も引き下げを公表しているメーカーも多く、中国向けなどの輸出需要の回復が遅れた場合、同価格のさらなる下げも予測されており、中国の輸入動向に注目が集まっている。

欧州委員会、農産物の市場拡大策を拡充

 欧州委員会は10月30日、予算7700万ユーロ(109億円)の新たな農産物市場拡大策を公表した。これは、EUの域内・域外を問わず、欧州の高品質な農産物の輸出市場を拡大・開拓する既存のPR事業について、補助対象品目の拡大や予算の増加、手続きの簡素化などにより拡充するものである。欧州委員会は、先進諸国を中心に、農産物の質を求める消費者が増えているとされる中で、EUはその要求に沿う農産物を提供できることから、PR事業の拡充により、的確な情報を提供することで、EU産農産物の消費拡大につながるものとしている。

 対象とされる農産物には、食肉や生鮮野菜、果物、有機農産物などが含まれるが、このうち乳製品については、以下の国が実施することとしており、域内・域外のさらなる需要の拡大が期待されている。

表4 乳製品の市場拡大策の実施状況(予算額)
資料:欧州委員会
(調査情報部 中野 貴史)

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