需給動向 海外

◆中国◆

飼養頭数は増加するも、需要期に向けての供給不足が懸念


収益性の向上により豚飼養頭数は増加傾向

 中国農業部によると、2014年9月の豚飼養頭数は4億3626万頭(前年同月比6.1%減)となった(図13)。豚飼養頭数は2014年5月以降緩やかな増加傾向にあるものの、繁殖母豚頭数は減少傾向にあり、同月は4478万頭(同10.6%減)とかなり減少している。中国では2014年1月の春節(旧正月)以降、豚肉の供給過剰により豚価は下落基調にあった。このため、生産者の経営環境が悪化し、零細農家を中心に豚の早期出荷や繁殖母豚の淘汰が行われた。

 中国では、豚肉需給が均衡するための繁殖母豚頭数の警戒ラインは4800万頭といわれており、この頭数を割り込むと生産頭数の減少から豚価の上昇につながるとされ、3月以降このラインを下回っている。この結果、豚出荷価格は5月に反騰し、10月は1キログラム当たり14.5元(263円:1元=18.2円、前年同期比8.7%安)となった(図14)。

図13 豚飼養頭数の推移
資料:中国農業部
  注:4000カ所の定点観測による推計値
図14 豚出荷価格の推移
資料:中国国家発展改革委員会よりalic作成

 豚価の上昇によって、政府が収益性の指標値とする豚/穀物比(注)は10月時点で5.8と、損益分岐点の5.5を上回った。生産者の収益は徐々に好転していることから、現地報道などによると、一部の生産者は、さらなる価格上昇を見込んで、売り惜しんでいるとされ、冬場の需要期に向けての供給不足が懸念されている。

(注)1キログラム当たり豚肉(生体)価格/1キログラム当たりトウモロコシ卸売価格。損益分岐点は5.5とされ、政府の目標基準は6である。

1月〜9月の豚肉輸入量、前年を下回る

 2014年1月〜9月の豚肉の輸入量は、42万3673トンと前年同期を1.6%下回った(表3)。最大の輸入先は米国であるが、中国政府が2013年3月からラクトパミンの残留検査に対する規制を強化したため、2013年輸入シェアは前年に比べ減少している。米国に次ぐドイツは、米国産の輸入量が減少したことや米国産に比べて価格が安いことなどから、2013年に輸入シェアが増加した。しかし、2014年に入ってからは、スペイン、英国などドイツ以外のEU諸国からの輸入量の伸びが著しく、ドイツ産のシェアは低下している。なお、ポーランドについては、2月19日に同国で発生が確認されたアフリカ豚コレラにより禁輸措置が取られたため、6月以降の輸入実績はない。米国農務省(USDA)は、2014年の中国の豚肉輸入量について、国内生産量の増加や在庫の積み増しが進んだことなどから、2013年実績を下回ると見込んでいる。

 一方、豚肉輸出については、10月に黒竜江省の企業からロシア向けに800トンが初めて輸出された。これはロシアがウクライナ問題をめぐり、ロシアに対して経済制裁を行う国に対する禁輸措置により、近隣の中国から豚肉輸入を開始したためである。しかし、中国畜牧業協会は、ロシア向け輸出は今後も少量にとどまり、国内市場への影響はないと見ている。

表3 豚肉の国別輸入量
資料:Global Trade Atlas
  注:HSコード0203
(調査情報部 木下 瞬)


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