2013年の輸出量、2年連続で過去最高
豪州農漁林業省(DAFF)によると、2013年12月の牛肉輸出量(子牛肉含む。船積重量ベース)は9万6349トン(前年同月比11.7%増)となった(表2)。これにより、2013年の総輸出量は109万9484トン(前年比14.1%増)と、2012年に続き2年連続で過去最高を更新した。この要因には、2012年後半からのクイーンズランド州などの干ばつによると畜頭数の増加から牛肉生産が増加した中で、中国や中東、東南アジアからの強い引き合いがあったこと、決済通貨の米ドルに対する豪ドル為替相場の下落(図2)により、豪州産牛肉の価格競争力が改善したことーが挙げられる。また、2010年から2012年前半までの2年間、各地で降雨に恵まれ、牛の保留が進んだ結果、2012年の飼養頭数が過去30年来で最高水準にまで拡大したことも、と畜の増加を後押しした。
表2 2013年の牛肉輸出先上位10カ国・地域
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資料:DAFF
注 1:船積重量ベース
注 2:CISはロシア他 |
図2 豪ドル為替相場の推移
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資料:豪州準備銀行(RBA) |
中国向けは第3位の輸出先に
2013年の牛肉輸出量を国別に見ると、日本向けが28万8794トン(前年比6.4%減)と第1位を維持しているが、日本での米国産の輸入増加に伴って、2007年以降、右肩下がりで推移している(図3)。また、2013年2月の米国産の月齢制限緩和や、円安による輸入コストの増加が、さらなる輸出量減少につながったとみられている。
第2位の米国向けも前年から減少し、21万2702トン(同5.1%減)となった。米国では、より安価な食肉への需要に押されて牛肉需要が減退したことや、豪州産に比べて価格面で優位に立つニュージーランド産牛肉の輸入増加が影響した。
2012年8月より急増をみせる中国向けは、2013年に15万4833トン(同4.8倍)と、第3位の輸出先となった。中国からの強い引き合いは、日本向けブリスケット(ばら)や、台湾向けシン・シャンク(すね)と競合し、他国への輸出にも影響を及ぼしたとされている。
その他では、2013年7月以降、輸入割当量を増やしているインドネシア向けが3万9418トン(同45.5%増)、2012年12月のブラジルでのBSE発生により、同国産の輸入を停止しているサウジアラビア向けが3万1126トン(同5.9倍)と、大きく伸びた。
図3 輸出先別牛肉輸出量の推移 |
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資料:DAFF
注:船積重量ベース |
2013/14年度も牛と畜頭数は高水準が続く見通し
豪州農業資源経済科学局(ABARES)は12月、四半期ごとの牛肉需給見通しを公表した。これによると、2013/14年度(7月〜翌6月)の牛と畜頭数は、893万頭(前年度比5.6%増)と、前回予測(870万頭)から上方修正された(表3)。これは、2013年7〜10月のと畜頭数が、前年同期比16パーセント増の330万頭となったことを反映したものである。干ばつが続く中、肉用牛飼養頭数が依然として高水準にあり、牛群の縮小傾向は継続するものとみられている。
また、2013年7〜10月のと畜頭数のうち、雌牛は同28パーセント増の140万頭であった。雌牛のと畜増に伴う分娩頭数の減少などにより、2014年6月末時点での肉用牛飼養頭数は、2500万頭(前年同期比1.8%減)と、2年連続での減少が見込まれている。
と畜頭数の増加から、2013/14年度の牛肉生産量は231万5000トン(前年度比3.1%増)、牛肉輸出量は108万5000トン(同7.0%増)と、いずれも増加の見通しであり、牛肉輸出量は、年度ベースでも引き続き、過去最高を更新するとみられている。
表3 2013/14年度の需給見通し(牛肉) |
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資料:ABARES
注 1:肉用牛飼養頭数は6月末時点
注 2:2011/12年度および2012/13年度の牛肉輸出量はDAFFによる実績数値
注 3:牛肉生産量および家畜市場取引価格は枝肉重量ベース、牛肉輸出量は船積重量ベース
注 4:( )内は、前回公表(9月)の予測数値 |
(調査情報部 伊藤 久美)
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