10年ぶりの輸入が可能に
タイでは高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)の清浄性が確認され、タイ政府は日本政府と家畜衛生条件に合意したことから、2013年12月25日付で、日本向け生鮮鶏肉の輸出が解禁された。
認定された生産・輸出施設で、同日以降に処理されたものが、日本向けに輸出されることになる。2004年1月の輸入停止以降、10年ぶりの輸入再開となる見通しである。
また、タイは、10月のシンガポール、12月の日本に続き、現在、韓国向け輸出の解禁に向けた交渉を進めている。
2013年7〜9月の生産量は前年同期比6パーセント増
タイ農業・協同組合省によると、2013年7月、タイのブロイラー処理羽数の2割を占める大手インテグレーターは、飼料価格の上昇、法定賃金の値上げ、米ドルに対するバーツ高による輸出不振から食鳥処理場を一時閉鎖し、現在も再開の見通しが立っていない。
しかし、閉鎖した食鳥処理場と契約していた生産農場のブロイラーは、他の大手インテグレーターが受け入れたため、鶏肉生産や輸出への影響は軽微にとどまり、2013年第3四半期(7〜9月)の食鳥処理羽数は、2億7668万羽(前年同期比6.1%増)、鶏肉生産量は37万9045トン(同6.1%増)と増加した(図7)。
図7 四半期別食鳥処理羽数と生産量の推移
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資料:タイ農業・協同組合省
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また、10月の食鳥処理羽数は9038万羽、11月が9211万羽と見込まれており、12月が前月並の水準で推移すれば、2013年の年間処理羽数は11億羽を超え、鶏肉生産量は150万トン台に達する見通しである。
鶏肉の小売価格は、食鳥処理場の一時閉鎖による生産停滞懸念などから、第3四半期は上昇傾向となったものの、その後、懸念が払しょくされたことから、10月以降は小売価格は下がっている(図8)。
図8 ブロイラーの農場出荷価格と鶏肉の小売価格の推移
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資料:タイ農業・協同組合省(農場出荷価格)、
タイ国内通商局(小売価格)
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2013年1〜11月の鶏肉輸出量は前年並み
2013年1〜11月の鶏肉輸出量は、生鮮鶏肉(冷凍カット品や冷凍塩蔵品を含む)が好調に推移する一方、鶏肉調製品が減少したことから、鶏肉輸出量全体では、49万7794トン(前年同期比1.0%減)と、前年同水準にとどまった(図9)。
図9 鶏肉輸出量(1〜11月)
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資料:GTI社「Global Trade Atlas」
注:HSコード:020714(冷凍鶏肉カット品)、
021099(冷凍加塩鶏肉)、160232(鶏肉調製品)を合計した値である。
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品目別で見ると、冷凍鶏肉(HSコード:020714(カット品))が7万9368トン(同7.6%増)で、主な輸出先はラオス向けが4万5308トン(同68.8%増)、EU向けが1万3489トン(同27.5%増)となった(図10)。
図10 冷凍鶏肉カット品(1〜11月)
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資料:GTI社「Global Trade Atlas」
注:HSコード:020714
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冷凍加塩鶏肉(HSコード:021099)は3万8948トン(同207.8%増)となり、そのほとんどがEU向けであった(図11)。
図11 冷凍加塩鶏肉輸出量(1〜11月)
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資料:GTI社「Global Trade Atlas」
注:HSコード:021099
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鶏肉調製品(HS:160232)は37万9478トン(同7.5%減)で、主な輸出先である日本向けが18万1517トン(同7.4%減)、EU向けが16万731トン(同10.8%減)となった(図12)。
図12 鶏肉調製品輸出量(1〜11月)
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資料:GTI社「Global Trade Atlas」
注:HSコード:160232
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日本向け生鮮鶏肉輸出がただちに増加するかは不透明
タイ・ブロイラー加工輸出協会によると、タイ産はブラジル産と比べ日本向けの地勢的優位性を持っていることから、2014年の日本向け生鮮冷凍鶏肉輸出は10万トンと見込んでいる。
現在、タイでは、幼びなの価格が低下していることに加え、豊作により飼料用トウモロコシの価格も下落しており、鶏肉の生産コストは減少傾向にあるとみられている(図13)。
さらに、2014年2月の総選挙のボイコットなど現政権への反発による政情不安の広がりにより、決済通貨である米ドルに対してバーツ安が進行しており、生鮮鶏肉の輸出は有利な状況にある。
しかし、2004年1月の生鮮鶏肉の輸出停止を機に、日本向け輸出については、鶏肉調製品に重点を置いた生産基盤の確立や販売拡大を行ってきた経緯を踏まえると、同協会が期待するほどの輸出が実現する可能性は低いとみられている。
図13 2013年の幼びなおよびトウモロコシの価格
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資料:タイ国内通商局
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(調査情報部 宗政 修平)
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