需給動向 海外

◆豪州◆

生乳生産、12カ月連続の減少


 デーリー・オーストラリア(DA)によると、2013年11月の生乳生産量は、97万6200キロリットル(前年同月比2.9%減)となった。2012/13年度(7月〜翌6月)後半以降の乾燥気候に伴う減少傾向が継続し、12カ月連続で前年同月の水準を下回ることとなった(図16)。
図16 生乳生産量の推移
資料:DA
  注:年度は7月〜翌6月
 州別の生乳生産を見ると、国内飲用乳向けが多いニューサウスウェールズ州、クイーンズランド州は、それぞれ前年同月比5.6パーセント減、同9.1パーセント減と、全国平均の水準を上回る減少となっている。一方、輸出乳製品向けが多いビクトリア(VIC)州、タスマニア州は、それぞれ同2.3パーセント減、同0.6パーセント減と、全国平均の水準を下回る減少となっている。さらに、豪州全体の約3分の2の生乳生産量を占めるVIC州を地域別に見ると、州東部および西部は前年同月の水準を下回るものの、州北部は同0.1パーセント増と前年並みの水準となっている。北部はかんがい用水を用いた酪農が行われており、水源の貯水量が比較的豊富であるため、一定の水配分の確保ができたことが要因とみられている。

 なお、牧草の生育に影響を及ぼす降雨量実績を見ると、10月から12月にかけて、多くの酪農生産地域で平年並みまたは平年の水準を下回っており、生乳生産にとって厳しい気象環境が継続している(図17)。
図17 最近の豪州の降雨量実績
資料:豪州気象庁
  注:2013年10〜12月

乳製品輸出量も減少傾向が継続

 DAによると、2013年10月の主な乳製品の輸出量は、脱脂粉乳が1万3096トン(同28.4%減)、全粉乳が1万1981トン(同1.2%減)、バターが3,925トン(同9.4%減)、チーズが1万3250トン(同13.3%減)となった(図18)。生乳生産量の減少傾向に伴い、輸出量も減少傾向が継続している。なお、全粉乳の輸出量については、主要輸出先である中国向けが大幅に増加したことに伴い、わずかな減少にとどまっている。
図18 10月の豪州の乳製品および牛乳の輸出量
資料:DA

乳製品国際相場、粉乳中心に高水準

 12月17日に開催された、国際相場の指標の一つとされるグローバルデーリートレード(GDT:ニュージーランド(NZ)の大手乳業フォンテラ社主催の電子オークション、月2回開催)によると、脱脂粉乳の平均価格は、トン当たり4,868米ドル(51万6008円:1米ドル=106円、前年同期比42.4%高、前回比1.6%高)、全粉乳は同4,958米ドル(52万5548円、前年同期比57.5%高、前回比1.5%安)となった(図19)。国際的に乳製品全般の需要が高まる中、脱脂粉乳および全粉乳の価格は、バターやチーズと比べ高い水準となっており、中国を中心とした粉乳需要の高まりの影響が表れた結果となっている。12月以降、豪州・NZともに生乳生産が減少傾向となることを踏まえると、当面は価格下落の可能性は低いと見込まれている。
図19 GDTにおける平均価格の推移
資料:GDT

2013/14年度の需給見通し、生乳生産減少の一方、輸出は増加

 豪州農業資源経済科学局(ABARES)は2013年12月、2013/14年度の生乳需給に関する見通しの改訂版を公表した(表9)。生乳生産については、VIC州北部は増加するものの、同州西部などは乾燥気候により減少するため、豪州全体では前年の水準をわずかに下回るとしている。生乳生産の減少が見込まれる一方、乳製品の輸出額は、前年の水準を大幅に上回るとしている。これは、豪ドル安の相場推移や、国際的な需要の高まりによる国際乳製品価格の上昇を見込んだものである。国際乳製品価格は、チーズを除き前年の水準を10パーセント以上上回るとしており、これを背景に豪州の乳価は1リットル当たり47.7豪セント(45.3円:1豪ドル=95円)と前年の水準を大幅に上回ることが見込まれている。
表9 2013/14年度の需給見通し(生乳・乳製品)
資料:ABARES「Agricultural commodities December quarter 2013」
  注:2012/13年度は暫定値、2013/14年度は予測値

                                       (調査情報部 根本 悠)


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