需給動向 海外

◆チリ◆

2013年のチーズ輸入量は増加の一方、輸出量は減少


チーズの生産量が粉乳を上回る

 チリにおける生乳の加工仕向けは、主に粉乳、チーズ、飲用乳、ヨーグルトであり、大手の乳業メーカーは主に粉乳を生産している。チリ農業省農業政策・調査局(ODEPA)によると、2004年以降の乳製品統計では、粉乳の生産量が最も多かったのは2008年で、大手乳業メーカーが受け入れた生乳の47パーセント(9億3000万リットル)を粉乳生産に仕向けた。2012年は粉乳生産に仕向けられた生乳は総受入量の40パーセントに当たる8億3900万リットルであった。一方で、同年のチーズへの仕向け量は同41パーセントに当たる8億6800万リットルとなり、その割合が逆転した。このように最近では、生乳の仕向け割合は、チーズ生産が粉乳生産を上回る水準となっている。

 2013年1〜10月の生乳受入量は前年同期比1.1パーセント増の16億9000万リットルであった。粉乳の生産量は同4.2パーセント増の7万900トン、チーズの生産量は同7.2パーセント増の7万1350トンとなった。

輸入量は大幅増

 2013年1〜11月のチーズの輸入量は、前年同期比29.6パーセント増の2万844トンとなり、主な輸入先はニュージーランド(総輸入量に占める割合:34.8%)、次いで米国(同26.7%)、アルゼンチン(同26.5%)の3カ国で全体の8割以上を占めている(図20)。過去6年間における最大の輸入先はアルゼンチンであり、総輸入量の約5割のシェアを占めてきた。これは、アルゼンチンが距離的に近いこと、チーズの競争力の高さや種類の多さなどの優位性を有してきたことが大きい。しかしながら、2013年に入り、最大の輸出先は2011年以来南米向け輸出にも力を入れ始めたニュージーランドとなった(表10)。なお、チリへのチーズ輸出を行っているすべての国について、関税率はゼロとなっている。

 種類別に見ると、ゴーダチーズが53パーセント、次いでモツァレラチーズおよびクリームチーズがそれぞれ15パーセントを占めている。
図20 国別チーズ輸入割合(2013年1〜11月)

資料:ODEPA
表10 国別チーズ輸入量の推移

資料:ODEPA

チーズの主要輸出先はメキシコ

 輸出動向を見ると、2000年からの10年間の最大の輸出先はメキシコであった。これは経済連携協定(EPA、1999年発効)により、輸出割当制限もなく、無税により輸出が行われてきたことによる。しかし、2011年以降は、輸出先の多様化が図られたことから、メキシコの占める割合は相対的にやや減少している。

 2013年1〜11月の輸出量は前年同期比8.9パーセント減の6,935トンとなり、メキシコが全体の68.8パーセントを占め、次いで、韓国(18.1%)、ペルー(3.1%)となった(図21)。種類別では、ゴーダチーズが97.9パーセント、モツァレラチーズが2.1パーセントの割合となっている。
図21 国別チーズ輸出割合(2013年1〜11月)

資料:ODEPA

輸出先の拡大が今後の課題

 ODEPAでは、今後のチーズ輸出に関して、貿易協定を締結している国々について、新たな市場を開拓していくことが重要としている。2006年10月に発効した中国との自由貿易協定(FTA)では、チリ産チーズは、5年間の段階的な関税引き下げが実施されており、関税削減の恩恵を背景に、中国向け輸出を拡大させる意向である。また、米国とのFTAにおいても、2015年以降にはチーズの関税が撤廃されることから、米国向けの輸出戦略も必要としている。また、チリがすでに獲得しているワイン市場への輸出に補完するというアイデアもあり、手始めにチリが参加する各国でのワイン祭りにおいて、チリ産チーズを紹介し、販路の拡大につなげたいとしている。

                                      (調査情報部 横打 友恵)


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