需給動向 海外

◆E U◆

EUの生乳価格、40ユーロ台へ


11月の生乳価格、前年対比16.9パーセント高

 オランダ農業園芸組織連合会(LTO)によると、EU域内主要乳業メーカー17社の11月の平均生乳価格は、100キログラム当たり40.55ユーロ(5,961円:1ユーロ=147円)となり、前年同月比16.9パーセント高となった。EUでは、上半期の生乳生産量の減少に加え、最需要期であるクリスマスシーズンに向けた需要の高まりから、過去最高値の40ユーロ台となった(図14)。
図14 EUの生乳価格の推移

資料:LTO
  注:域内主要乳業17社の平均値
 10月の生乳出荷量は、前年同月比4.6パーセント増の1億1551万トンとなり、2013年に入って以降、前年同月比で最も高い伸び率を示した(図15)。特に、アイルランドおよび英国の生乳生産量が大幅に増加した。また、生乳生産の回復により、乳製品の生産も回復してきており、上半期に生産量が減少した脱脂粉乳およびバターは、各々10月単月で前年対比14.7パーセント増、同6.5パーセント増となった。
図15 EU(28カ国)の生乳出荷量
資料:ZMB
  注:2013年は暫定数値

2013年の生乳出荷量は、前年同期比0.9パーセント増

 ドイツ乳製品市場価格情報センター(ZMB)によると、2013年全体のEU28カ国の生乳出荷量は、前年同期比0.9パーセント増の1億4200万トンとなる見込みである(表8)。2013年7月1日にクロアチアが加盟したことにより、生乳出荷量は、60万トン増加した。
表8 牛乳・乳製品需給表(生乳換算)
資料:ZMB
 一方、同年の輸出量は、前年と比べて生乳換算でおよそ100万トン減の1600万トンとなる見込みである。輸出量が減少した理由として、2013年上半期の生乳生産量の減少および在庫量の減少が挙げられている。

 乳製品の消費量は、景気後退が続くものの大きな減少はみられず、生乳換算で一人当たり年間消費量は24.9キログラムと、前年水準を維持している。

 2013年の生乳生産を見ると、上半期は、2012年秋以降の天候不良による影響で生乳生産が抑制されたのに対し、下半期は、主要生産地域で天候が良好であったこと、また、乳価が高水準で推移していたことから生産者の生産意欲が増したことなどの理由により、生乳生産は拡大した。

CAP改革における乳製品部門の改正内容

 EUでは12月20日、2014〜2020年に係る新たな共通農業政策(CAP:Common Agricultural Policy)が決定した。CAPは、EU全体の農業生産の方向を示すもので、今回の改革では、生産者が環境保護に対する条件をクリアすることが、補助金受給の条件となるなど新たな試みが打ち出された。酪農部門は、2012年に「ミルクパッケージ」と呼ばれる酪農部門の政策がすでに作成されていることから、本改革はそれに準拠した形となっている。

 酪農部門の主な改革内容は、以下のとおりである。

(1)供給管理

・生乳クオータ廃止は、2015年4月1日で変更なし。
・新たなCAP改革の中には、生乳クオータに代わる供給管理措置について言及なし。

(2)公的介入

・バターおよび脱脂粉乳の参考価格および介入価格は変更なし。
・ただし、欧州委員会は、これらの価格について、市場動向や生産コストと照らし合わ
 せて必要と認める場合は、変更の提案が可能であるが、欧州議会および欧州理事
 会の承認を必要とする。
・公的介入の開始は、3月1日から9月30日まで(現行は、8月31日まで)。また、欧州
 委員会は、この期間以外でも必要と思われる危機が発生した場合は、介入をする
 ことが可能。
・介入買入によるバターの上限数量は、現在の3万トンから5万トンに引き上げ。
 脱脂粉乳は、現行と同様の10万9千トン。
・買入制限の数量を超えた場合は、現在と同様に入札による買入となる。

(3)民間在庫

・民間在庫補助の対象は、バターおよび脱脂粉乳に加え、特定の原産地呼称保護
 (PDO)および地理的表示保護(PGI)を取得した熟成チーズとする。
・欧州委員会は、市場の状況により、民間在庫補助の開始を決定。

(4)輸出補助金

 輸出補助金の制度は維持するが、規則で定義されている市場の混乱といった状況が発生し、欧州委員会が委員会を開催、承認された場合のみ発動。しかし、現在、予算は計上していない。

(5)助成

 カゼインにスキムミルクを加える加工およびスキムミルクと脱脂粉乳の飼料利用に対する助成制度は廃止。

                                    (調査情報部 矢野 麻未子)


元のページに戻る