需給動向 海外

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輸出は好調を維持するも、季節的な生産増により価格は下落


2013年11月の豚枝肉卸売価格、前年同月比5.1パーセント安

 欧州委員会によると、EUの11月の豚枝肉卸売価格は、100キログラム当たり171.29ユーロ(2万5180円:1ユーロ=147円)と、前月からやや下落し、前年同月比5.1パーセント安となった(図5)。豚枝肉卸売価格は、2010年10月以降、一貫して前年同月を上回って推移してきたが、3年ぶりに前年同月を下回った。
図5 豚枝肉卸売価格の推移
資料:欧州委員会
 主要豚肉生産国では、軒並み前年同月の価格を下回った。特に下落幅が大きかったのは、オランダ(前年同月比9.5%安)、ドイツ(同8.8%安)、ポーランド(同7.7%安)である。一方、スペイン(同3.3%高)、スウェーデン(同3.4%高)、英国(同2.5%高)は、前年同月比を上回ったものの、これらの国々についても前月と比較すると、減少傾向で推移している。ただし、堅調な域外輸出を要因として、価格は依然として高水準を維持しており、2011年の同月と比べ7.2パーセント高となっている。

 価格下落の要因は、例年の季節的な変動により、秋以降の豚肉生産量が増加してきていることに加え、EU域内の豚肉消費の鈍化が影響しているとみられている(図6)。
図6 豚肉生産量の推移
資料:欧州委員会
  注:2013年7月以降は予測値を含む

域外向け豚肉輸出は好調を維持

 欧州委員会によると、2013年1月から10月のEU域外への豚肉等輸出量は、前年よりわずかに増加し、253万4000トン(前年同期比2.0%増)となった(表6)。

 輸出増をけん引したのは、輸出先第1位のロシア(同2.1%増)と第2位の中国(同17.4%増)向けの増加が大きな要因となっている。
表6 EU域外への豚肉等輸出量(輸入先国別、2013年1〜10月)
資料:欧州委員会
  注:製品重量ベース

 ロシアへの輸出増の背景として、同国がラクトパミンを使用した米国産豚肉の輸入を停止していることが挙げられる。これを受け、EUからの輸出は、米国産を補完する形で引き合いが強まり、前年同期と比べ23.8パーセント増と大幅に増加した。

 また、中国は、これまで特徴的であった内臓などについては、小幅な増加(5.2%増)にとどまったが、ロシアと同様にラクトパミン使用豚肉の輸入規制により、同42.9パーセント増と大幅に増加した。

ドイツ、スペインを除き主要国の輸出が増加

 主要豚肉輸出国の状況をみると、ドイツとスペインを除き多くの国が域外への輸出量を増やした(表7)。ドイツとスペインの減少要因として、ロシア衛生当局から食肉処理場の衛生上の問題を指摘され、輸出を一部禁止されたことが影響している。
表7 EU域外への豚肉等輸出量(輸出先国別、2013年1〜10月)
資料:欧州委員会
  注:製品重量ベース

 一方、顕著な増加をみせたのは、オランダ(前年同期比29.2%増)と、ポーランド(同11.0%増)である。この2カ国は、豚肉(冷凍・冷蔵)輸出を大幅に増加させており、結果として、ドイツとスペインのシェアを奪う形となった。

                                       (調査情報部 宅間 淳)

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