需給動向 海外

◆豪 州◆

生体価格は堅調に推移、フィードロット飼養頭数は減少


11月の生体価格は堅調に推移

 豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、肉牛生体価格は2013年11月に入り、上昇基調で推移している。

 11月末時点の東部地区若齢牛指標(EYCI)価格(枝肉重量ベース)は、前月同期比10.5パーセント高の1キログラム当たり325.25豪セント(前年同期比1.7%安、309円:1豪ドル=95円)となった(図3)。EYCI価格は、継続する干ばつによる飼養環境の悪化から、肥育農家からのもと牛需要の低下などにより2012年半ばから下落した。このため、2013年以降は、直近5カ年平均を20〜70豪セント下回る水準で推移していた。しかし、11月は、東部沿岸部を中心に十分な降雨を得たことで、飼育環境が改善に向かったことから、肥育もと牛需要が増加し、価格は上昇基調に転じた。

図3 EYCI価格の推移
資料:MLA
注 1:枝肉重量ベース
注 2:EYCI価格は東部3州(QLD州、NSW州、VIC州)の主要家畜市場に
    おける若齢牛の加重平均取引価格。家畜市場の指標価格となっており、
    肥育牛や経産牛の家畜市場価格などとも9割近い相関関係にある。

 一方、11月の肥育牛価格(QLD州、枝肉重量ベース)は、前月比1.2パーセント高の1キログラム当たり318.2豪セント(前年同月比3.8%安、302円)となった(図4)。肥育牛価格は2012年11月以降、EYCI価格と同様、下落基調で推移したが、2013年6月に底を打った後は、おおむね上昇基調となっている。直近5カ年平均からの下落幅は、最大でも15豪セント台にとどまっており、11月には直近5カ年平均とほぼ同水準にまで回復した。EYCI価格と比べて下落が小幅な要因として、飼育環境の悪化により肥育が困難な状況下で、生産量を上回る海外市場からの堅調な需要が影響しているとみられる。

図4 肥育牛価格の推移
資料:MLA
注 1:枝肉重量ベース
注 2:QLD州、生体重500キログラム以上あるいは枝肉重量320〜400キロ
     グラムのと畜場直行牛、主に日本向けなど海外市場に仕向けられる

2013年1〜11月の輸出量は100万トン超

 豪州農漁林業省(DAFF)によると、2013年11月の牛肉輸出量(子牛肉含む。船積重量ベース)は9万4923トン(前年同月比18.8%増)となった(表2)。干ばつによると畜頭数の増加と輸出市場からの好調な需要に支えられて、13カ月連続で前年同月を上回った。2013年1〜11月では100万3134トン(前年同期比14.3%増)となり、過去最高となった2012年の輸出量96万3779トンを、すでに上回った。

 2013年11月の国別輸出量を見ると、日本向けは、米国産との競合などから、2万5005トン(前年同月比10.2%減)とかなりの程度減少した。一方、米国向けは、7月以降5カ月連続で前年同月を上回って推移し、1万7667トン(同32.6%増)となった。米国向けは、米国内の肉牛頭数の減少から、加工用牛肉を中心に、今後も引き続き好調に推移するものとみられる。また、中国向けは1万5820トン(同98.9%増)、韓国向けは1万4934トン(同1.9%減)となった。
表2 2013年11月の牛肉輸出先上位10カ国・地域
資料:DAFF
注 1:船積重量ベース
注 2:CISはロシア他

2013年9月のフィードロット飼養頭数は、6月から1割減

 豪州フィードロット協会(ALFA)によると、2013年9月末のフィードロット総飼養頭数は、78万7487頭(前年同期比9.8%増)となり、同年6月末から9.8パーセント減となった(図5)。2013年第2四半期(4〜6月)は、肥育もと牛価格の下落や、クイーンズランド(QLD)州や北部準州内陸部での干ばつ悪化によるフィードロットへの導入頭数増加から、2007年6月末以来の高い数値(87万2992頭)を記録した。しかしながら、第3四半期(7〜9月)は、肥育もと牛価格が堅調に推移したことや、主要穀物生産地帯でありフィードロットが集まるQLD州南部での穀物価格の上昇、第3四半期のグレインフェッド牛肉輸出増(前年同期比8%増)などが、飼養頭数減少につながった。
図5 フィードロット飼養頭数および出荷頭数の推移
資料:ALFA
 豪州農業資源科学経済局(ABARES)が12月3日に公表した2013/14年度(7月〜翌6月)の穀物生産見通しによると、QLD州では、干ばつの影響が穀物生産にも及んでいる。収穫がほぼ終了した小麦および大麦と、これからは種が行われるソルガムのいずれも、前年度から1〜2割の減産を見込んでいる。同州の飼料穀物価格は、生産量の減少と国内外からの飼料需要により、現在、他地域と比べて堅調に推移している(図6)。このため、今後の穀物価格の動向が、フィードロットの飼養動向に影響を及ぼすことが懸念されている。
図6 飼料穀物価格の推移
資料:MLA
注 1:QLD州はダーリングダウン地域、NSW州はリベリナ地域の価格
注 2:すべて飼料用価格
                                      (調査情報部 伊藤 久美)


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