牛肉や水産品へシフトするも、豚肉消費は微増
米国農務省海外農業局(USDA/FAS)が11月8日に公表した「Livestock and Poultry: World Markets and Trade」によると、2014年の中国の豚肉生産量は前年比1.7パーセント増の5470万トン、豚肉輸出量は同6.0パーセント増の26万5000トン、豚肉消費量は同1.9パーセント増の5526万トンと予測している(表3)。また、肥育豚のと畜頭数については同1.8パーセント増の7億2350万頭、輸入頭数は同10.0パーセント増の2万2000頭、輸出頭数は同4.1パーセント増の177万頭と見込んでいる(表4)。
表3 豚肉需給の推移 |
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資料:USDA/FAS
注:2013年および2014年は予測値 |
表4 豚の飼養、と畜および輸出入頭数の推移
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資料:USDA/FAS
注:2013年および2014年は予測値 |
同局が9月27日に公表した「China-Peoples Republic of Livestock and Products Annual」によると、豚肉生産量および肥育豚のと畜頭数の増加要因として、主産地での供給過剰を挙げている。一方で、2013年3月に上海市の河川で確認された豚の不法投棄は、消費行動に少なからずとも影響したことで、生産意欲の減退を招くこともあることから、生産量は前年をわずかに上回る水準になると見込まれる。また、消費者における食の多様化も進んでおり、消費の一部が、豚肉から牛肉、水産物などにシフトしていることから、消費量は微増に留まると見込まれる。
豚肉輸出量の増加要因としては、最大輸出先である香港の価格優位性を挙げており、食肉向けの輸出頭数も増加するとしている。なお、輸入頭数の増加要因としては、主に改良を目的に、輸入需要が持続的に高まっているとしており、中国国内の生産性向上に向けての取組みが進められていることがうかがえる。
豚肉価格の上昇により、養豚農家の収益性改善が進む
中国商務部によると、2013年5月を境に上昇に転じた豚肉卸売価格は、6月以降、前年を上回る状況が続き、11月は1キログラム当たり21.7元(369円:1元=17円、前年同月比4.5%高)となった(図13)。政府が収益性の指標値とする豚穀物比(1キログラム豚肉(生体)価格/同トウモロコシ卸売価格)を見ると、7月第4週以降、政府の目標基準である6を上回って上昇基調にあり(11月第2週の当該比率:6.58)、養豚経営の収益性は着実に改善されていることがわかる。
今後、春節に向けて、豚肉の需要期を迎えることから、豚肉価格の上昇基調は継続されるものと見られており、豚穀物比がさらに上昇する状況が続けば、養豚農家の生産意欲が高まり、肥育頭数の増加が進むことも予想されている。
図13 全国豚肉卸売価格の推移 |
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資料:中国商務部 |
EU産冷凍豚肉輸入量が急増
1〜10月の冷凍豚肉の輸入量は、前年同期比18.7パーセント増の36万1074トンとなった(表5)。輸入先国別に見ると、米国が同32.6パーセント減の7万6138トンとかなりの程度減少した一方、ドイツが同73.1パーセント増の7万6904トンと急増するなど、EU諸国からの輸入量の伸びが顕著となっている。
2013年3月以降、輸入申告の際に、ラクトパミン無残留証明書の提出義務が課せられることとなった影響を受けて、同期間の輸入シェアは、米国が37.1パーセントから21.1パーセントに減少した一方、ドイツが14.6パーセントから21.3パーセント、カナダが7.8パーセントから8.4パーセント、ポーランドが0.8パーセントから7.5パーセントとそれぞれ上昇するなど、ラクトパミンの使用を禁止しているEU諸国をはじめとして、輸入先国が多角化している。
表5 冷凍豚肉の国別輸入量 |
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資料:GTI社「Global Trade Atlas」
注:HSコード020329 |
(調査情報部 山ア 博之)
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