需給動向 海外

◆豪州◆

生乳生産は回復せず、輸出も減少傾向


今年度の生乳生産見込み、前年度以下に下方修正

 デーリー・オーストラリア(DA)によると、2013年10月の生乳生産量は、100万7600キロリットル(前年同月比4.9%減)と、11カ月連続で前年同月を下回った(図25)。放牧が主体の豪州では、牧草の生育が良く、牛にとっても比較的望ましい気象条件となる10月は、通常最も生乳生産が多くなり、11月以降減少するが、今年の10月は、昨年の11月と同程度の数量にとどまっている。こうした推移を見ると、2013/14年度(7月〜翌6月)開始以来期待されていた生乳生産の回復は、あまり進んでいない模様である。この背景としてDAは、2012/13年度後半の乾燥気候が牧草の生育、乳牛の泌乳能力、酪農家の財務状況へ及ぼした影響の大きさを指摘している。加えて、9月以降の豪州南部での気温低下が牧草に与えた影響や、生乳生産が思うように伸びないことが酪農家に与える心理的な影響も懸念されている。

 こうした状況を反映してDAは、今年度の生乳生産見込みを、これまでの930〜950万キロリットルから900〜920万キロリットルへと下方修正した。昨年度の生乳生産量は、920万キロリットルであるため、「今年度の生乳生産は多くても前年度並み」と、DAは見込みを改めたことになる。
図25 生乳生産量の推移
資料:DA
  注:年度は7月〜翌6月

乳製品輸出量も減少傾向が継続

 DAによると、2013年9月の主な乳製品の輸出量は、脱脂粉乳が7,910トン(同35.4%減)、全粉乳は6,989トン(同17.8%減)、バターは2,947トン(同14.4%増)、チーズは1万1178トン(同11.4%減)となった(図26)。生乳生産の減少傾向や、米ドルなどに対して堅調に推移した豪ドルの為替相場などを背景におおむね前年同月を下回っているが、バターについては、世界最大の輸入国であるロシア向けが増加したことで、前年同月を上回った。ただし、ロシアのバター輸入量は、月別の変動が大きく、今後、ロシアの輸入動向次第では、バターの輸出量も減少に転じる可能性がある。
図26 9月の牛乳および乳製品の輸出量
資料:DA

日本向けチーズ輸出量、過去3年間で最低の水準に

 豪州からの日本向け主要輸出品であるチーズの輸出量の推移を見ると、6月に増加した後、3カ月連続で前年同月を下回っている(図27)。例年、7〜9月は輸出量が少ない時期であるが、今年度は、生乳生産の減少が重なり、特に減少が目立っている。日本向けについても同様に減少しており、7月以降の輸出量は、過去3年で最も少ない水準となっている。これは、中国やマレーシア向けの輸出増加に伴うものである。

 一方、チーズの輸出単価を見ると、過去3年間緩やかな上下を繰り返しているが、2013年4月頃から、輸出単価は徐々に上昇している。また、安定的な輸出先である日本向けについては、総輸出単価より安価で取引されているものの、基調としては、同様に上昇傾向となっている。
図27 チーズ輸出量および輸出単価の推移
資料:GTI社「Global Trade Atlas」

中国向け輸出量、日本を抜き最大に

 DAは11月、2012/13年度の乳製品需給を総括した「Australian Dairy Industry In Focus 2013」を公表した。このうち、乳製品輸出に関連した事項を見ると、2012/13年度の世界の乳製品輸出に占める豪州のシェアは、ニュージーランド(シェア37%)、EU(同31%)、米国(同11%)に次ぐ世界4番目(同7%)となっており、前年と同じ順位であった。なお、世界5番目の輸出国アルゼンチンのシェアは5パーセントであり、今後も豪州の生乳生産が伸び悩めば、豪州と順位が逆転する可能性がある。

 また、同資料などによると、豪州の国別輸出量および輸出シェアは、中国が12万9320トン(輸出先シェア16.2%)、日本が12万5104トン(同15.6%)と、わずかながら中国が日本を抜き、最大の輸出先となった(図28)。豪州にとって日本は長らく最大の輸出先であり、安定的な輸出量を維持しているが、経済成長に伴う中国の乳製品需要の伸びがそれを上回る格好となった。ただし、輸出額のシェアを見ると、中国の15.9パーセントに対し、日本は18.5パーセントと、未だ日本が最大の輸出先となっている。中国は、現在の輸入の中心である粉乳類に加え、今後は単価の高いチーズの輸入の増加も予想されるため、長期的には、輸出額ベースでも日本を抜いて最大となることが予想される。
図28 2012/13年度の国別乳製品輸出量
資料:DA「Australian Dairy Industry In Focus 2013」
    「YTD Export Summary Report June 2013」
  注:年度は7月〜翌6月

                                       (調査情報部 根本 悠)


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