乳価、最需要期に向け堅調に推移
オランダ農業園芸組織連合会(LTO)によると、EU域内主要乳業メーカー17社の8月の平均生乳価格は、100キログラム当たり39.86ユーロ(5,620円:1ユーロ=141円)となり、前年同月比19.1パーセント高となった。EUでは、上半期の生乳生産量の減少に加え、最需要期であるクリスマスシーズンに向け需要が高まっていることから、乳価が堅調に推移しており、過去最高値となっている(図21)。
図21 EUの生乳価格の推移
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資料:LTO
注:域内主要乳業17社の平均値 |
9月の生乳出荷量は、前年同月比3.3パーセント増の1億1271万トンとなり、今年に入り前年同月比で最も高い伸び率を示した(図22)。また、下半期からの生乳生産の回復により、1月から9月までの生乳出荷量は、前年並みの水準に達する見込みである。9月単月で見ると、生乳出荷量が多かったのは、アイルランド、オランダ、英国およびドイツなど主要生産国であった。10月以降も前年を上回る生乳出荷量が見込まれており、年間では前年を約1パーセント上回る予測である。
図22 EU(28カ国)の生乳出荷量
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資料:ZMB
注:2013年は暫定数値 |
クリスマス需要でバター堅調
ドイツ乳製品市場価格情報センター(ZMB)によると、下半期に入り生乳生産は回復しているものの、上半期の生乳出荷量減少は、依然として乳製品生産量に影響を及ぼしている。1月から8月までの乳製品生産量は、前年同期比0.5パーセント増となったチーズを除き依然として下回っている(表6)。バターは同2.5パーセント減となり、最需要期であるクリスマスシーズンに向け価格も高値で推移している(図23)。また、輸出製品の主力商品である脱脂粉乳も同8.8パーセント減と大幅に減少している。
図23 バター卸売価格の推移
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資料:ZMB オランダバター価格 |
表6 EU(28カ国)の乳製品生産量(1月〜8月)
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資料:ZMB |
チーズ輸出は好調、脱脂粉乳輸出は大幅減
1月から8月までの乳製品別の輸出量を見ると、チーズで前年同期比5.9パーセント増の51万9000トン、チーズの副産物であるホエイは同2.7パーセント増の34万4000トンと前年を上回っている(図24)。これは、国際市場におけるチーズ価格が高水準で推移しているため、EU産の価格競争力が強くなったこと、また、主要輸出先であるロシアの需要が強いことが主な要因である。
また、その一方で、近年大幅に輸出量を伸ばしていた脱脂粉乳は、生産量の減少により同31.2パーセント減の27万1000トン、全粉乳も同10.4パーセント減の25万トンとなった。
図24 EU(27カ国)の乳製品別輸出量(1月〜8月)
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資料:ZMB
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乳業メーカーは、アジア市場進出を視野
スウェーデンおよびデンマークを拠点とするEU最大の乳業メーカーであるArla Foodsの英国法人Arla Foods UKは、12月17日に開催されるNZのフォンテラ社主催のグローバルデーリートレード(GDT)オークション注に脱脂粉乳で初参加することを発表した。
発表に際しArla Foods UKは、「アジア市場における高い乳製品需要は、潜在的な輸出拡大の可能性がある。このオークションへの参加により我々はこれらの市場にアクセスすることが可能となり、3,200名もの契約生産者に対して高い利益をもたらすだけではなく、新たな成長のための機会を創出することになる。」とコメントした。EUでは、2015年の生乳クオータ廃止による生乳生産の増加分を、乳製品の成熟市場であるEUで消費することは難しい。そのため、乳業メーカー各社は、乳製品市場が拡大しているアジア市場などへの進出が必須となっており、当該市場の粉乳などの需要に向けた乳製品工場への投資が盛んに行われている。今回のArla Foods UKのGDTオークションへの参加は、アジア市場獲得への積極的な姿勢を示している。
注:GDTオークション:NZのフォンテラ社主催の電子入札。年々取扱量は増加しており、
当該オークションによる乳製品の落札価格は、国際価格の指標となっている。
(調査情報部 矢野 麻未子)
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