畜産の情報−豪州の牛肉の需給動向 5月の牛肉輸出量、と畜頭数の増加により単月での記録を更新− 2014年7月
需給動向 海外

◆豪 州◆

5月の牛肉輸出量、と畜頭数の増加により単月での記録を更新


干ばつの影響により、と畜頭数は記録的な水準に

 豪州統計局(ABS)によると、2014年4月の牛と畜頭数は68万6041頭(前年同月比2.0%増)と、2012年10月以来19カ月連続で前年同月を上回った(図4)。肉用牛の主産地であるクイーンズランド(QLD)州など北部を中心とした干ばつによる早期淘汰の増加が要因となっており、同年1〜4月では285万8618頭(前年同期比12.6%増)と高水準となっている。
図4 牛と畜頭数の推移
資料:ABS
  注:子牛は含まない
 また、豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、QLD州やニューサウスウェールズ州北部で依然として厳しい干ばつが続いていることに加え、3〜4月には降雨を得た南部でも、牧草が減少する冬を控えて季節的に老廃牛の出荷増がみられることから、同年5月のと畜頭数も引き続き記録的な水準になったとしている。

輸出量、最高記録を更新

 豪州農漁林業省(DAFF)によると、と畜頭数の増加を反映し、5月の牛肉輸出量は10万8126トン(前年同月比4.8%増)と、同年3月に記録した単月での輸出記録を再び更新した(図5、表1)。
図5 牛肉輸出量の推移
資料:DAFF
  注:船積重量ベース
表1 2014年5月の国別牛肉輸出量
資料:DAFF
  注:船積重量ベース
 輸出状況を国別で見ると、米国向けが日本向けを4カ月連続で上回り、3万1054トン(同57.8%増)と、2009年3月以来の高水準となった。これは、米国国内での牛肉供給量が減少し、国内価格が上昇していることによる。内訳は、チルドが6194トン(同79.2%増)、フローズンが2万4859トン(同53.2%増)と、チルドの増加が目立っており、従来の米国向けの大半を占める加工用以外の品目にも引き合いを強めていることがうかがえる。

 また、韓国向け(同1.0%増)は2012年10月以降ほぼ前年同月を上回って推移しており、インドネシア向け(同66.8%増)やカナダ向け(同187.0%増)なども好調となった。

 一方、日本向けは2万6245トン(同13.6%減)、中国向けは8427トン(同26.6%減)と減少した。例年、5月は日本向け輸出量が多い月であるものの、米国や韓国向けなどとの競合が影響を及ぼしたとみられている。中国も他国向けと競合したほか、中国政府が同年5月、成長ホルモンを使用した豪州産牛肉の輸入を禁止したことが、輸出減少につながったとみられている。

2014年1〜3月の内臓肉輸出量、堅調

 MLAによると、2014年第1四半期(1〜3月)の内臓肉輸出は、堅調な需要と為替相場が豪ドル安にあることで、輸出量は3万5609トン(前年同期比20%増)、輸出額は1億2000万豪ドル(同30%増、116億円:1豪ドル=97円)となった。

 主要輸出先を見ると、韓国向けが輸出量では6540トン(同31%増)、輸出額では2050万豪ドル(同65%増、20億円)、日本向けが5465トン(同7%増)、3570万豪ドル(同3%増、35億円)、香港向けが5114トン(同3%減)、1730豪ドル(同11%増、17億円)となった(図6)。輸出単価の高いタンの輸出量の9割近くを日本向けが占めており、輸出額では日本が最大の市場となっている。

 日本向けの内訳を見ると、タンが2153トン(同23%増)と堅調である一方、横隔膜(ハラミ・サガリ)は1338トン(同21%減)と、韓国からの引合いの強まりから減少している(図7)。
図6 1〜3月の主要輸出先別内臓肉輸出量の推移
資料:MLA
  注:船積重量ベース
図7 1〜3月の日本向け主要部位別内臓肉輸出量の推移
資料:MLA
  注:船積重量ベース
(調査情報部 伊藤 久美)


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