生乳生産量は回復の見込み
中国乳業協会によると、2013年の中国の生乳生産量は3531万トン(前年比5.7%減)となり、建国(1949年)以来の最大の減少幅となった(注)。減少の要因は、2013年7〜8月にかけて主産地の猛暑が長期化したことや、小規模経営の離農が進んだほか、一部の大規模経営での経産牛の淘汰・更新が重なったことなどによるとみられている。小規模経営の離農については、政府の小規模経営に対する支援の中止に加え、2013年の好調な牛肉価格により、乳牛を淘汰する小規模経営が続出したことで加速したとみられている。
一方、生乳の農場出荷価格を見ると、2013年6月以降は生産量減少による供給不足を反映し上昇傾向にあった。しかし、需要期の春節(旧正月、2014年は1月末)を過ぎてからは、天候の回復とともに生乳生産が増加に転じたことで供給不足が緩和され、2月下旬の1キログラム当たり4.3元(69円、1元=16円)をピークに同価格は下落に転じ、5月末は同4.1元(66円)となった(図24)。
国家発展改革委員会(中央政府)は、乳牛の生産性を向上させるために、2012年から品種改良や優良品種の導入を奨励しており、前者については優良な種雄牛の凍結精液の購入や授精料に補助金を交付している。また、経産牛(生体牛)の輸入はオセアニアを中心に増加傾向にあり、2013年の生体牛輸入量は、1万8644トン(6万2000頭程度)、このうち豪州からは1万4794トン(4万9000頭程度)となった(表15)。
中国乳業協会は、こうした取り組みが功を奏し、生乳生産量は今後増加するとしている。
注:「畜産の情報2014年3月号」では、米国農務省(USDA)のデータを用い、2013年の生乳生産量を3450万トン(前年比4.8%増)とした。2008年のメラミン事件以降、USDAのデータと中国政府のデータの乖離は毎年大きく、中国側のデータには信憑性に欠ける点もあったが、2013年は両者の乖離幅は縮小した。したがって、本号では中国側の見解を採用することとした。
図24 生乳の農場出荷価格の推移
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資料:中国農業部畜産局
注:統計の集計対象範囲は河北、山西、内モンゴル、遼寧、黒龍江、山東、
河南、陝西、寧夏、新疆の10省で、中国全体の生乳生産量の8割強を
占める。
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表15 中国における純粋種の繁殖用生体牛の国別輸入量
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資料:GTI社 「Global Trade Atlas」
注1:HSコード010221
注2:中国の統計では生体牛の輸入はトン単位で公表される。 |
増加傾向の粉乳の輸入需要は一服
2014年1〜4月の全粉乳の輸入量は、前年同期比73.1%増の42万トンと大幅に増加した(図25)。最大の輸入先は自由貿易協定(FTA)を締結しているニュージーランド(NZ)で、38万2000トン(同61.4%増)と輸入量全体の9割以上を占めた。一方、脱脂粉乳も同99.6%増の11万2000トンと大幅に増加している。このうちNZ産は5万7000トン(同18.8%増)と輸入量全体の5割以上を占めた。
中国では、2013年の生乳生産の低迷と輸入粉乳に対する需要増を受けて、国際相場が堅調な中、2013年後半から2014年第1四半期にかけて粉乳を大量に輸入してきた。しかし、現在、国内の生乳生産は徐々に回復しており、4月単月の粉乳輸入量は前月比で減少している。今後、需要が一服すれば、さらに輸入量は減少に向かうと見込まれている。
図25 脱脂粉乳および全粉乳の輸入量の推移 |
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資料:GTI社「Global Trade Atlas」
注1:HSコード040210(脱脂粉乳)、040221及び040229(全粉乳)
注2:全粉乳輸入単価はHS04221のもの。
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(調査情報部 木下 瞬) |