需給動向 海外

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好調なアジア向け輸出により、枝肉価格は上昇に転じる


2014年4月の豚枝肉卸売価格、6カ月ぶりに上昇

 欧州委員会によると、EUの2014年4月の豚枝肉卸売価格は、前年同月比4.3%安の100キログラム当たり163.54ユーロ(2万2896円:1ユーロ=140円)と、前月からやや上昇した(図12)。
図12 豚枝肉卸売価格の推移
資料:欧州委員会
 同年3月は、リトアニア、ポーランド国内の野生イノシシにおけるアフリカ豚コレラ(ASF)の発生確認により、ロシアがEU産豚肉の輸入を禁止したため、前年同月比9.5%安とかなり値を下げた。しかし、北米での豚流行性下痢(PED)の発生による供給不足を補う形で、アジア地域向けの輸出量が増加し、EUの豚肉価格は上昇に転じた。

 主要な豚肉生産国の枝肉価格は、いずれも前月から上向いた。前月から最も値を上げたのはフランスで、前月比13ユーロ高(9.0%高)の100キログラム当たり161.13ユーロ(2万2558円)となった。次いで、ポーランドが同11ユーロ高(7.6%高)の同160.70ユーロ(2万2498円)、スペインが同10ユーロ高(5.7%高)の同185.63ユーロ(2万5988円)であった。フランスは輸出量の増加と国内生産量の減少、ポーランドはASFの沈静化と周辺国の生産量の減少、スペインは輸出量の増加が、それぞれ上昇の要因とみられている。

アジア向けを中心に、豚肉輸出が増加

 欧州委員会によると、2014年1〜3月のEU域外への豚肉等輸出量は全体で64万トンとなり、前年同期比9.4%の減少となった(表4)。
表4 EU域外への輸出先国別豚肉等輸出量
資料:欧州委員会
  注:製品重量ベース
 減少の要因は、ロシアがEU産豚肉の輸入を禁止しているためであり、同国向けは前年同期比71.4%減と大幅な減少をみせた。

 一方、アジア向けの輸出は、日本(前年同期比19.0%増)、韓国(同91.6%増)、フィリピン(同68.7%増)と大幅に増加した。これまで、米国やカナダなどから豚肉を輸入していた国々が、PED発生による現地相場の上昇から、調達先をEU加盟国に変更したものとみられる。

 なお、2014年3月の豚肉(冷凍・冷蔵)の輸出量を前年同月と比較すると、ロシア向けで大幅な減少(前年同月比98.8%減)となったものの、日本(同14.9%増)や韓国(同2.2倍)向けの増加により、全体では6.3%の減少にとどまった(表5)。特に台湾向けは、輸出量は2627トン(占有率:2.3%)と少ないが、前年同月比で16倍以上と大幅な増加をみせた。
表5 EU域外への豚肉輸出量
資料:GTI社 「Global Trade Atlas」
注1:HSコード0203
注2:製品重量ベース

子豚価格は再び上昇

 豚枝肉価格が上昇傾向で推移する中、子豚価格も上昇に転じている。2014年4月の子豚価格は、前年同月比2.3%高の1頭当たり52.61ユーロ(7,365円)と、前月からやや上昇した(図13)。
図13 子豚価格の推移
資料:欧州委員会
 子豚価格は、3月に入り一度値を下げたが、枝肉価格の上昇に加え、配合飼料価格が2013年8月より9カ月連続で前年同月を下回る状況にあることから(図14)、肥育経営からの需要が強く、価格は高水準を維持している。
図14 豚用配合飼料価格の推移
資料:欧州委員会
 なお、主要な子豚供給国であるデンマークの生体豚輸出の状況を見ると、2014年1〜3月の子豚(生体重50キログラム未満)の輸出頭数は、前年同期比11.0%増の257万8000頭となっている(表6)。主要な輸出先であるポーランドでのASF発生により、同国内の肥育経営からの引き合いが弱まり、輸出が鈍化するとの見方もあった。しかし、ドイツなどへの好調な輸出が継続していることから、増加が続いている。
表6 生体豚(子豚)輸出頭数の推移(デンマーク)
資料:デンマーク統計局
 一方、種豚が多くを占めるとみられる生体重135キログラム以上の輸出頭数は、前年同期比58.1%減となっている(表7)。これは、昨年好調であったロシア向け種豚輸出が、禁輸措置により停滞していることが要因とみられている。

表7 生体豚(成豚)輸出頭数の推移(デンマーク)
資料:デンマーク統計局
                                       (調査情報部 宅間 淳)

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