生乳生産は気象条件の回復により増加
デーリー・オーストラリア(DA)によると、2014年3月の生乳生産量は64万2500キロリットル(前年同月比3.8%増)となり、4カ月連続で前年同月を上回った(図25)。州ごとの生産状況を見ると、豪州全体の生乳生産の約3分の2を占めるビクトリア(VIC)州に加え、タスマニア(TAS)州、西オーストラリア州が前年同月を上回っている。
特にTAS州は、前年同月を16.6%上回っており、増加傾向が顕著となっている。現地報道によると、同州では、春先は気温が低く、生乳生産は低調であったものの、秋頃から気象条件が回復したことから、牧草の生育が改善し、生乳生産が増加したとしている。そのため、酪農家の増産意欲も高まっており、今後も増加傾向で推移すると見込んでいる。また、州内の乳業メーカーが、乳牛の導入や農場インフラの整備などに対する支援制度を通じて、酪農家の増産を奨励しているとしている。
図25 豪州の生乳生産量の推移 |
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資料:DA
注:年度は7月〜翌6月 |
乳製品輸出、脱脂粉乳は増加する一方、チーズは減少
DAによると、2014年2月の主な乳製品の輸出量は、脱脂粉乳が1万7112トン(前年同月比37.4%増)、全粉乳が8381トン(同14.1%減)、バターが5917トン(同15.5%増)、チーズが1万2319トン(同22.4%減)となった(図26)。生乳生産の回復に伴い、脱脂粉乳とバターの輸出量は前年同月を10%を超えて上回っている。粉乳類については、一時期より国際価格は下落したものの、依然として、海外からの需要が堅調なことから、乳業メーカーはその生産・輸出に注力しているとみられている。一方、チーズについては、粉乳類に生乳が優先的に仕向けられたため、2013年7月以降、前年同月を下回って推移している。
図26 豪州の乳製品輸出量の推移 |
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資料:DA
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国際相場、下落傾向が継続
2014年5月6日に開催された、乳製品国際相場の指標とされるグローバルデーリートレード(GDT:フォンテラ社主催の電子オークション、月2回開催)の結果によると、脱脂粉乳の平均取引価格は1トン当たり3873米ドル(40万2792円:1米ドル=104円、前年比9.5%安、前回比2.4%安)、全粉乳は同3928米ドル(40万8512円、前年比16.8%安、前回比1.6%安)となった(図27)。2013年2月以降、GDTの平均取引価格は、粉乳類を中心に高止まりを続けていたものの、2014年2月頃から下落傾向となっている。これは、主要輸出国の生乳生産の増加などが背景にあるとみられている。しかしながら、5〜7月にかけて、豪州、ニュージーランドの生乳生産は季節的に減少することから、再び価格上昇に転じる可能性を指摘する見方もある。
図27 GDTにおける乳製品相場の推移 |
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資料:GDT
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豪州最大手乳業、積極的な投資計画を発表
豪州最大手の酪農協系乳業メーカーであるマレーゴールバン社(MG)は5月、アジア諸国における乳製品需要の高まりを背景に、VIC州の2工場およびTAS州の1工場に関する、総額1億2700万豪ドル(123億円:1豪ドル=97円)の投資計画を公表した。計画には、チーズのカット・包装施設の新設や乳幼児向け栄養補助製品の生産能力の拡大、飲用乳の充填ラインの増設などが挙げられている。MGは、積極的な投資により、乳製品販売額の増加を通じて、酪農家への高乳価と高配当を実現できるとしている。
豪州の酪農家団体、今後の豪州の酪農乳業に関するレポートを公表
オーストラリア・デーリー・ファーマーズ(ADF)は4月、今後の豪州の酪農乳業の見通しなどに関するレポートを公表した。これによると、世界の生乳生産は2020年まで年平均2%の割合で増加するものの、世界の乳製品需要は、アジアや中東、北アフリカの経済成長により、それを上回るペースで増加することから、世界の乳業はグローバルな再編が求められるとしている。また、豪州の酪農乳業については、国際市場における低コスト生産国というこれまでの認識を捨て、更なる生産性の向上とともに、付加価値の高い乳製品販売意識の徹底が不可欠であるとしている。また、需要者が求める製品を効率良く確実に供給しつつ、最新の製造技術をたゆまず追求することが必須としている。このように取り組めば、豪州の酪農乳業は、世界の乳製品主要輸出国としての地位を維持できるとしている。
(調査情報部 根本 悠) |