需給動向 海外

◆中国◆

供給過剰により豚価は下落基調


豚価の下落により養豚経営の収益は悪化

 中国商務部によると、2014年3月の豚と畜頭数は、2049万頭(前年同月比15.4%増)となり、前年同月をかなり大きく上回った(図12)。中国では、昨年7、8月にかけて多くの生産者が豚価の上昇を見込んで増頭したため、これが現在のと畜頭数増加を招いている。

 一方、現地報道によると、暖冬や三公消費(公費による接待飲食、出張、公用車の私的流用)の引き締め政策などが影響して、最需要期となる2014年1月の春節(旧正月)の豚肉需要は、前年から1割程度減少したとしている。

 こうしたことから、豚出荷価格は春節以降、下落基調にあり、4月は1キログラム当たり11.19元(182円:1元=16.3円、同12.7%安)となった(図13)。また、価格の下落により、養豚経営の収益性は悪化しつつあり、政府が収益性の指標値とする豚/穀物比(注)は、4月末時点で4.7となった。現在、平均的な生産費は1キログラム当たり14元(228円)とされ、出荷価格(同11元(179円)程度)を上回るため、仮に120キログラムの豚を出荷すれば1頭当たり360元(5868円)の赤字となる。

 このような状況の中、国家発展改革委員会は3月末、価格安定のため2014年第1回目となる冷凍豚肉の買入れと備蓄を実施した。今回の買入れ数量は6万5000トンとされるが、依然として価格は下落基調にあり、買入れによる価格安定効果はみられない。また、同委員会は5月に2回目の買入れと備蓄を実施したが、例年、豚価は5〜6月にかけて値上がりする傾向にあるため、今後上昇すると見込まれる。

(注)1キログラム当たり豚肉(生体)価格/1キログラム当たりトウモロコシ卸売価格、政府の目標基準は6であり、損益分岐点は5.5とされる。

図12 豚と畜頭数の推移
資料:中国農業部
  注:年間と畜頭数2万頭以上の企業が対象
図13 豚出荷価格の推移
資料:中国商務部

1〜3月の冷凍豚肉の輸入量は前年から増加

 1〜3月の冷凍豚肉の輸入量は、前年同期比13.9%増の11万772トンとなった(表3)。輸入相手国別に見ると、米国が同41.8%増の2万5649トンと大幅に増加した一方、ドイツが同43.4%減の1万2756トンと急減した。また、ポーランド、スペイン、英国などのドイツ以外のEU諸国からの輸入量の伸びが顕著であった。

 なお、国家質量監督検査検疫総局は2月19日、ポーランドでアフリカ豚コレラの発生が確認されたことを受け、2月13日以降に同国およびそれ以外の港から出荷されたポーランド産豚肉の輸入を一時停止する措置をとった。このため、同国からの輸入量については今後減少することが見込まれている。
表3 冷凍豚肉の国別輸入量
資料:GTI社「Global Trade Atlas」
 注:HSコード020329

(調査情報部 木下 瞬)


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