3月輸出量、米国向けが2カ月連続で首位
豪州農漁林業省(DAFF)によると、2014年3月の牛肉輸出量は、干ばつによると畜頭数の増加を反映し、前年同月から大幅増の10万6297トン(前年同月比21.1%増)となり、2013年7月の単月での輸出記録を更新した(表1)。
表1 2014年3月の牛肉輸出先上位10カ国・地域
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資料:DAFF
注:船積重量ベース |
豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)は、2014年後半の見通しについて、これまでの数カ月間、と畜頭数が高水準で推移してきた反動で、肉用牛の供給の縮小が見込まれる中、海外市場からの豪州産牛肉への強い引き合いは継続していることから、今後は需給がひっ迫傾向となり、肉用牛の生体取引価格は高値に向かうとみている。
国別に見ると、米国向けが3万97トン(同66.7%増)と2カ月連続で第1位となり、2014年第1四半期(1〜3月)を見ても、2003年以来の首位となった(図4)。一方、日本向けは、ブリスケット(ばら)を中心に中国など他市場向けと競合したことから、2万2613トン(同6.8%減)となった。
図4 主要国別輸出量の推移
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資料:DAFF
注:船積重量ベース |
米国向け加工用牛肉価格が高騰
米国向け輸出の躍進には、米国内における経産牛の供給減が反映されている。MLAによると、米国では数年続いた干ばつが収束し、ここ数カ月間の牛群再構築により経産牛のと畜頭数が減少していることから、国内の加工用牛肉価格が堅調に推移し、米国向けの7割を占める加工用牛肉に対する引き合いが強まっている。これにより、豪州の米国向け加工用牛肉価格(90CL、FAS価格)は高騰し、2014年3月第3週には1キログラム当たり495.8豪セント(前年同期比22.9%高、481円:1豪ドル=97円)と、過去最高値をつけた(図5)。
日本向けの加工用(85CL、FAS価格)も、3月平均は同435.5豪セント(前年同月比14.0%高、422円)と、米国向けの高値に引きずられる形で堅調な推移を見せているものの、豪州の輸出業者は米国向け輸出を優先させる状況となっている。MLAは、今後の米国向け輸出見通しについて、向こう3カ月間も価格がこの水準を維持すれば、2013/14年度(7月〜翌6月)は日本向けを追い越し、10年ぶりに最大の輸出先になる可能性を示唆している。
図5 米国向け加工用牛肉価格の推移
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資料:MLA
注:90CL、FAS価格 |
肉用牛生産者の経営状況は悪化
豪州農業資源経済科学局(ABARES)によると、2012/13年度の肉用牛生産者の現金所得は、1戸当たり4万7700豪ドル(前年度比28.8%減、463万円)となった。干ばつによる出荷頭数の増加から、肉用牛の生体取引価格が下落し、肉用牛販売収入が前年度比15パーセント減となる一方、補助飼料購入費が増加したことから、前年度より大幅な減少となった。
2013/14年度については、同4万4000豪ドル(同7.8%減、427万円)と見込んでいる。減少の要因としてABARESは、出荷頭数の増加により肉用牛販売収入は増加するものの、継続する干ばつによって、燃料代および運送費などの出荷経費や補助飼料購入費の増加が見込まれることを挙げている。
2013/14年度の肉用牛生産者以外の経営を見ると、穀物生産者は西オーストラリア州や南部州での増産、酪農家は生産者乳価の上昇によって、現金所得の上昇が見込まれており、明暗が分かれる結果となった(図6)。
図6 生産者の現金所得の推移 |
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資料:ABARES
注:2012/13年度は暫定値、2013/14年度は推計値 |
(調査情報部 伊藤 久美)
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