中国の生乳出荷価格、10カ月ぶりに下落
中国国内の生乳生産を見ると、2013年は夏場の記録的な猛暑により低水準での推移が伝えられたが、2014年に入り回復傾向で推移しているとされる。中国乳業協会によると、近年、国内大手乳業各社は原料の確保を目的に自社牧場の拡大や酪農家への支援を進めており、その効果が生産回復要因の一つになったとしている。
中国農業部によると、国内主要生乳生産省※の平均生乳出荷価格は、2014年2月第2週に1キログラム当たり4.27元(72円:1元=17円)となった以降、高水準を維持するものの値を下げ始めている(3月第3週:1キログラム当たり4.22元)。
生乳出荷価格は、昨年4月以降、夏場の生産低迷を境に上昇基調にあったが、輸入乳製品の増加や生乳生産の回復により国内需要が落ち着いてきたことがうかがえる(図31)。
※河北、山西、内蒙古、遼寧、黒龍江、江蘇、安徽、山東、陝西、寧夏、新疆の10省・
自治区を指す(2012年の生乳生産シェア:83.4%)。
図31 主要生産省における平均生乳出荷価格の推移 |
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資料:中国農業部 |
2013年の粉乳輸入は、前年比5割増
一方、中国では経済成長に伴い乳製品需要が拡大する中で、近年、乳製品輸入量の増加が目立っている(表8)。2013年の全粉乳の輸入量を見ると、前年比52.7パーセント増の61万9400トンと大幅に伸びており、米国農務省(USDA)が2013年12月に公表した「Dairy: World Markets and Trade」によると、中国の乳製品の国別輸入シェアは2013年の世界全体の全粉乳輸入量の約59%パーセント(予測値)を占めている。
輸入増加の要因としては、2013年の国内の生乳生産の低迷が挙げられるが、中国国内では、全粉乳は主に飲用乳や育児用粉乳、ヨーグルトの原料などに用いられるなど用途の利用範囲が広く、旺盛な国内需要を背景に輸入が増加したものとみられている。
輸入の内訳を国別に見ると、9割をニュージーランド(NZ)が占めており、前年比44.2パーセント増の56万2600トンとなった。中国とNZは2008年に自由貿易協定(FTA)を発効し、輸入税率は2018年までに段階的に削減(2013年の粉乳類の輸入税率は5.0%、2018年には0%)されていることから、中国にとって最大の輸入先となっている。
表8 全粉乳の国別輸入量 |
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資料:GTI社「Global Trade Atlas」
注:HSコード040221、040229 |
このような中、中国政府は2014年4月1日から、「輸入乳幼児向け調製粉乳(育児用粉乳)の品質安全のさらなる強化に関する公告」を施行した。具体的な内容としては輸入品に対する原産地での中国語表記の義務化(中国国内での表記貼り付けの禁止)、大型包装による輸入の禁止(輸入製品に対する小売単位での包装の義務化)、海外ブランド乳製品の登録の義務化(2014年5月1日までに登録されないものは輸入禁止)など、輸入育児用粉乳に対する規制を強化するものとなっている。規制強化の背景には、海外ブランドの流入を抑えることで、国内の酪農振興や乳業各社の市場競争力の強化を図りたいとする政府の意向がある。
(調査情報部 山ア 博之)
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