需給動向 海外

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堅調な乳価により生乳生産増加


乳価、引き続き堅調な動き

 オランダ農業園芸組織連合会(LTO)によると、EU域内主要乳業メーカー17社の2014年2月の平均乳価(生産者乳価)は、100キログラム当たり40.81ユーロ(5,836円:1ユーロ=143円)となり、前年同月比17.5パーセント高となった。この要因として、国際乳製品価格が高水準で推移したことでEU産乳製品の競争力が高まったため輸出が好調であること、さらにEUの乳製品在庫水準が低い中で域内需要が高いことなどを挙げている(図20)。
図20 EUの平均乳価の推移

資料:LTO
  注:域内主要乳業17社の平均値
 また、ドイツ乳製品市場価格情報センター(ZMB)によると、2014年1月の生乳出荷量は、同4.5パーセント増の1207万6000トンとなり、2013年下半期からの増加傾向が依然として継続している(図21)。これは、秋口からの天候に恵まれたため牧草の品質が良好であったこと、また高水準で推移する乳価により生産者の生産意欲が増していることが要因と見られている。  今後の動向としてZMBは、すでに一部の乳業メーカーで3月に乳価引き下げが公表されていること、生乳生産が前年と比べて増加していること、ロシアがエストニアなど一部のEU加盟国からの乳製品輸入を禁止していることから、域内の出回り量が増えるなどの要因により、乳価は下落に転じると予測している。
図21 EU(28ヵ国)の生乳出荷量

資料:ZMB
  注:2014年は暫定数値

チーズ輸出量、過去最高の78万8000トン

 2013年のEUの乳製品の輸出状況を見ると、春先の長雨および低温による牧草の生育不良により上半期の生乳生産量が減少したことで、近年増加傾向であった乳製品輸出に歯止めがかかった年となった。特に、脱脂粉乳の輸出量は、前年比21パーセント減と大幅に減少した。これは、生乳生産が制限される中で、より利益率の高い飲用乳やチーズの生産が優先されたためである(図22)。

 一方で、チーズ輸出量は、過去最高の78万8000トンを記録した。主な輸出先はロシアで、輸出量全体の32.7パーセントを占め、前年比4.4パーセント増の25万7000トンとなった。次いで、米国が同4.7パーセント増の11万3000トン、第3位にスイスで同1.6パーセント増の5万2000トン、第4位に日本で同11.6パーセント減の4万1000トンとなっている。

 ZMBは、ロシア向けチーズ輸出が好調だった要因として、ロシア国内での生乳生産の減少による乳製品需給のひっ迫化と国際市場価格が高水準で推移したためEU産チーズの価格競争力が強まったことを挙げている。日本向け輸出の減少については、日本市場での米国産チーズとの競合にあるとしている。

 また、ZMBは、今後のチーズ輸出の動向として、ウクライナ問題によるロシアとの関係悪化によりロシアへの乳製品輸出が制限されるなどの影響から、2014年の輸出量は減少するとの予測である。
図22 EUからの乳製品輸出量
資料:ZMB

中国向け飲用乳輸出が増加

 ZMBによると、2013年の飲用乳生産量は、前年比0.2パーセント増の3万3205トンと前年並みとなった。加盟国別に見ると、最も飲用乳生産の多い英国で同0.8パーセント増、ドイツで同2.3パーセント減、フランスで同0.1パーセント増、また、ポーランドでは同14.2パーセント増と大幅な増加となった(表5)。飲用乳の消費動向は、EU加盟国間で異なった様相を呈しており、英国やポーランドなど消費が増加している国とドイツやフランスなど減少している国とに分かれるが、全体的な動向としては、旧加盟国では減少傾向、新加盟国では増加傾向となっている。

 また、飲用乳は、依然としてEU域内での取引が全体の9割以上を占めるものの、EU域外である第三国への輸出量は同12.1パーセント増と伸びを見せている。輸出される飲用乳は、常温保存が可能で消費期限の長い超高温殺菌牛乳(UHT)のパック詰めが主流である。主な輸出国はドイツで、2013年の輸出量は16万1000トン、次いでフランスが5万8000トンとなっている。飲用乳は、他の乳製品と比べると輸出量に占める割合は低いものの、近年増加している品目であり、特に中国向けは、2013年の輸出量が、同82.3パーセント増の10万2000トンと伸びが目立っている(表6)。
表5 国別飲用乳生産量(1〜12月)
資料:ZMB
注 1:2013年は暫定値である。
  2:閏年調整済み
表6 飲用乳輸出量(パック詰め)
資料:ZMB
  注:2011年及び2012年は、EU27カ国、2013年はEU28カ国。

                                    (調査情報部 矢野 麻未子)


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