需給動向 海外 |
2014年の牛肉生産量は過去最高の見通し
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干ばつの影響で、と畜頭数は依然高水準 豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、肉牛取引価格の指標となる東部地区若齢牛指標(EYCI)価格は、2014年10月10日時点で1キログラム当たり363豪セント(352円:1豪ドル=97円)と高水準を維持している(図5)。EYCI価格は、2014年8月以降上昇基調にあり、9月に入ってから同350豪セントを超える水準にある。豪州では、堅調な輸出需要からフィードロットや牧草肥育生産者からの肥育もと牛需要が高まっており、MLAでは、これが価格上昇の要因としている。
豪州統計局(ABS)によると、8月の牛と畜頭数は79万6900頭(前年同月比8.6%増)となった。特にと畜頭数が増えたのが、ニューサウスウェールズ(NSW)州とビクトリア(VIC)州であり、それぞれ17万400頭(同14%増)、16万8000頭(同15%増)となった。MLAは、これらの地域では冬季に平年並みの降雨が得られなかったことで、放牧環境の悪化から成牛の出荷が増えたとみている。また、2014年以降最大の輸出市場となった米国を中心に輸出需要が高まっていることも、と畜頭数の増加につながったとしている。 干ばつが長引くにつれて雌牛の淘汰も進んでおり、全体のと畜頭数に占める雌牛の割合は2014年2月以降、50%を上回っている。8月は42万1200頭(同23.7%増)と大幅に増加し、全体の53%となった。 こうしたことから、2014年1〜8月までの牛肉生産量は170万トン(前年同期比10%増、枝肉重量ベース)と、過去最高を記録した前年を上回るものとなった。MLAは、現在も前年を上回るペースでのと畜が進んでいることから、2014年の牛肉生産量は過去最高に達するとみている。 9月の牛肉輸出量、高水準を維持 豪州農漁林業省(DAFF)が10月1日に公表した「Red Meat Statistics」によると、2014年9月の牛肉輸出量は11万8605トン(前年同月比24.9%増)と、前年同月を大幅に上回った(図6)。国別の輸出量は、米国向けが4万7238トン(同141.5%増)、日本向けが2万6792トン(同23.1%増)、韓国向けが1万1393トン(同10.1%減)、中国向けが8741トン(同39.8%減)となった。2大市場である米国、日本向けは、と畜頭数の増加傾向を反映して増加しており、特に米国向けは、2001年7月の単月での記録を更新し、急増が顕著となっている。これは、米国国内で、干ばつ後の牛群再構築が進み、加工向け牛肉を中心に国内生産が不足していることが背景にある。一方、日本向けは2カ月連続で増加しており、低水準であった前年と比べると比較的安定した水準となっている。
今年度の需給見通し、生産、輸出ともに減少 豪州農業資源経済科学局(ABARES)は9月、2014/15年度(7月〜翌6月)の牛肉需給に関する見通しの改訂版を公表した(表1)。 これによると、牛飼養頭数は、高水準のと畜頭数と生体牛輸出の増加から減少が見込まれている。一方、と畜頭数は、気象条件の回復が予想されるため、干ばつによる記録的な高水準となった前年度の反動から減少するとしており、牛肉生産量については、枝肉重量の増加により、と畜頭数よりも小幅な減少と見込まれている。 需要面では、米国や中国、韓国、中東などからの強い引合いは続くとみているが、牛肉生産量の減少を反映して輸出量の減少が見込まれるため、米国向け以外の伸びは限定的なものになるとしている。一方、日本向けについては、日本国内で引き続き米国産と競合することや、米国からの豪州産への強い引合いにより、減少するとみている。
(調査情報部 根本 悠、木下 瞬)
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