需給動向 海外

◆中 国◆

乳価の下落により、生乳生産量の減少が懸念


生乳の農場出荷価格は下落傾向が継続

 中国農業部によると、生乳の農場出荷価格は2014年1月以降、下落基調にあり9月には1キログラム当たり3.9元(約69円:1元=17.8円)となった(図24)。前年同月比では0.2元高(3円)であるが、昨今、飼料費や人件費を中心に生乳生産コストは上昇しており、乳価下落によるコスト割れも懸念されている。現地報道によると、乳価の下落は乳製品国際相場の軟化の影響によるものとされ、国際相場との価格差を埋めるために、乳業メーカーが生乳を買い叩いていると見る向きもある。

図24 生乳の農場出荷価格の推移
資料:中国農業部畜産局よりALIC作成
  注:統計の集計対象範囲は河北、山西、内モンゴル、遼寧、黒龍江、
    山東、河南、陝西、寧夏、新疆の10省で、全国の生乳生産量の
    8割強を占める。

 中国乳業協会によると、政策転換により大規模経営への支援が中心となったことや生産コストの上昇によって、小規模経営の離農が進み生乳の供給不足は継続しているとしており、乳価が下落する中で、今後さらなる生乳生産量の減少が懸念されている。

 国内生産の低迷を受けて、国内の乳業メーカーは近年、安価で良質な原料乳を求めて海外に進出する動きを活発化させている。中国最大手の伊利は、2013年初めにニュージーランド(NZ)南島カンタベリーで、年間の粉乳生産能力4万7000トンの育児用粉乳生産プロジェクトを立ち上げた。これは、現地で生乳を調達し、生産した育児用粉乳を中国に送るものである。一方、雅士利(現在は蒙牛に買収)は、2013年初にNZ北島ワイカトに粉乳製造工場を新設し、今年の6月から稼働させている(年間生産能力5万2000トン)。また、貝因美は、今年の8月にNZフォンテラ社と資本提携を行い、豪州ビクトリア州に合弁会社を設立し、粉乳生産を行う予定である。

2014年1〜8月の輸入量は、全粉乳が59万トン、脱脂粉乳が19万トン

 2014年1〜8月の全粉乳の輸入量は、前年同期比64.6%増の59万6000トンと大幅に増加した(図25)。国別輸入量は、全体の9割以上を占めるNZから54万2000トン(前年同月比58.0%増)となったほか、ウルグアイやアルゼンチン、チリなど南米からも堅調に増加している。一方、8月単月の輸入量を見ると、前年同月比20.5%増の2万6000トンと、2014年上半期の輸入量の伸びと比べ鈍化している。こうしたことから、中国国内で輸入品の在庫が積み増されていると見る向きもある。

図25 脱脂粉乳および全粉乳の輸入量の推移
資料:Global Trade Atlas
注1:HSコード040210(脱脂粉乳)、040221および040229(全粉乳)
  2:全粉乳輸入単価はHSコード040221

 また、脱脂粉乳の1〜8月の輸入量も、前年同期比53.5%増の19万2000トンと大幅に増加した。このうちNZが8万9000トン(同20.1%増)と輸入量全体の4割以上を占め、これに米国が3万8000トン(同72.4%増)と続いている。

 なお、国際相場の軟化を受け、全粉乳および脱脂粉乳の輸入単価はともに下落傾向にあり、それぞれ1トン当たり4742米ドル(52万1620円、1米ドル=110円)、同4329米ドル(47万6190円)となった。

 育児用調製品の2014年1〜8月の輸入量は、8万トン(前年同期比3.9%増)と堅調に増加している(表14)。前述した豪州やNZに建設された中国乳業メーカーの粉乳工場は順次本格稼働しており、すでに国内に輸入される事例も増えているとされる。今後、原料のみならず育児用調製品での輸入量も増加すると見込まれる。

表14 育児用調製品の輸入量の推移
資料:Global Trade Atlas
  注:HSコード190110、育児用粉乳も含む。
(調査情報部 木下 瞬)

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