需給動向 海外 |
生乳価格続落、19カ月ぶりに前年割れ
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2014年7月の生乳出荷量、前年同月比4.1%増 ドイツ乳製品市場価格情報センター(ZMB)によると、2014年7月の生乳出荷量は、前年同月比4.1%増の1278万トンとなった(図16)。 EUの酪農は放牧主体が多く、2014年は天候が安定し、草地状態が良好なことに加え、生乳価格が高水準で推移してきたことから、生乳生産量は前年を上回って推移してきた。しかし、乳製品の国際需給が緩み、生乳価格が下落に転じたことを受け、今後は、酪農経営は乾乳期の延長や、濃厚飼料給与量の減少などにより、生産量を抑える方向に動くとみられている。
2014年8月の生乳価格、前年同月比0.7%安 オランダ農業園芸組織連合会(LTO)によると、2014年8月のEU域内主要乳業メーカー16社の平均生乳買取価格は、100キログラム当たり38.50ユーロ(5390円:1ユーロ=140円)となり、前月からわずかに値を下げ、前年同月比0.7%安となった(図17)。前年同月を下回ったのは、2013年1月以来、19カ月ぶりであり、高水準を維持してきた生乳価格の鈍化が顕著になってきている。
欧州の乳業メーカーのほぼ全社が買取価格を引き下げており、また9月以降にさらなる引き下げを表明していることから、生乳価格は下落傾向で推移するとみられている。 乳用経産牛飼養頭数は増加も、牛群更新が進む 欧州委員会は9月、一部の調査対象国について、2014年6月時点の経産牛飼養頭数の統計を公表した(表5)。 これによると、EU最大の生乳生産国であるドイツは前年比2.1%増、続くフランスで同2.0%増、イタリアで同3.2%増、オランダで1.2%増となるなど、主要な生乳生産国の増頭傾向が明らかとなった。なお、主要国の中でポーランドのみ同2.2%減となったが、生産量は増加しており、経営の集約化と生産性の高い牛群への更新が進められているとみられている。 しかし、各乳業メーカーの生乳買取価格引き下げの方針を受け、減少傾向にあった乳用経産牛と畜頭数が上向きつつあることから、年末にかけて飼養頭数は減少に向かうとの見方もある(図18)。
2013/14年度生乳供給実績(クオータ実績)を公表 乳用経産牛飼養頭数の増加傾向は、10月3日に公表された2013/14年度(4月〜翌3月)の生乳供給実績にも現れており、EU全体の生乳出荷実績(出荷クオータ)は、前年度比2.9%の増加となった(表6)。 なお、クオータを超過したのは、ドイツ、オランダ、ポーランド、アイルランド、デンマーク、オーストリア、ルクセンブルグ、キプロスの8カ国であり、合計で147万2000トン超過し、4億960万3000ユーロ(573億4442万円)の課徴金が課せられることになった(表7)。 生乳クオータ制度は、2014/15年度(2015年3月31日)をもって廃止されることとなっているため、廃止後の増頭と増産を見越した動きが活発化しているものとみられている。
チーズの市場隔離措置を停止 欧州委員会は、ロシアの禁輸措置によるEU域内市場への影響緩和のため、共通農業政策(CAP)の民間在庫補助制度(PSA)を使ってバター、脱脂粉乳、チーズの市場隔離措置を9月1日から開始した(表8)。 しかし、チーズについては、9月23日に市場隔離措置を停止すると発表した。その理由として、特定の国から不釣り合いな量の申請があり、設定限度量へ達する前に予防的な措置をとったものとしている。公表されている統計によれば、2013年にはそれほどロシア向けの輸出実績のなかったイタリアが、申請量全体の過半を申請しており、この点が問題視されたものとされている。イタリアの過剰な申請について、フランスとオランダの農業大臣は、EUの結束を損なう行為であるとして、同国を非難するコメントを発表している。 なお、バターと脱脂粉乳については、予定通り2014年12月末まで実施するとしている。
(調査情報部 宅間 淳)
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