需給動向 海外

◆N Z◆

新年度の生乳生産も増加傾向を維持


 ニュージーランド乳業協会(DCANZ)によると、2014/15年度(6月〜翌5月)の生乳生産は、好調なスタートを切った。同年度6〜7月の生乳生産量は、33万1000トン(前年同期比7.8%増)と前年をかなりの程度上回った(図21)。季節生産体系のNZでは、6月から7月は北島において分娩時期に当たり、搾乳が開始され、南島では8月以降に分娩、搾乳が本格化する。このため、同時期の生乳の大半は北島での生産となるが、天候に恵まれ、北島の放牧環境が良好であることが、生乳生産の増加に寄与したとみられている。

図21 生乳生産量の推移
資料:DCANZ
  注:年度は6月〜翌5月

輸出量は増加傾向が継続も中国向けが減少

 生乳生産が増加傾向で推移する中、2014年7〜8月の主な乳製品の輸出量は、脱脂粉乳が5万3681トン(前年同期比31.3%増)、全粉乳が12万9295トン(同31.1%増)、バターが6万561トン(同25.0%増)、チーズが3万9027トン(同3.4%増)となった(図22)。7〜8月にかけては、季節的に輸出量は低水準となるものの、生乳生産の増加傾向に伴い、いずれの品目も前年を上回っている。特に、粉乳類については、脱脂粉乳は東南アジア向け、全粉乳は中東・北アフリカ向けを中心に大幅に増加している。

図22 乳製品輸出量の推移
資料:Statistics NZ

 なお、粉乳類の最大の輸出先である中国向けは、同国での乳製品在庫の積み増しを背景に、8月に入り大幅に減少している。

乳製品国際価格、下落傾向が止まらず

 2014年10月1日に開催された乳製品国際価格の指標とされるグローバルデーリートレード(GDT:ニュージーランド(NZ)最大手乳業フォンテラ社主催の電子オークション、月2回開催)によると、脱脂粉乳の平均取引価格は1トン当たり2540米ドル(28万円:1米ドル=110円、前年比43.4%安、前回比3.0%安)、全粉乳は同2443米ドル(27万円、前年比53.1%安、前回比9.2%安)と、2014年2月以降、乳製品国際需給の緩和から下落傾向が継続している(図23)。今回の取引では、売買数量は過去1年間で2番目に多く、入札参加者数は過去1年間で最も少なく、国際的な乳製品需給の緩和を反映した結果となった。

図23 GDTの乳製品価格の推移
資料:GDT

 フォンテラ社は、9月下旬に生産者乳価の引き下げを行ったが、現地報道によると、今回の取引結果からさらなる引き下げの可能性も示唆されており、今後も乳製品国際価格は下落傾向が継続する、という見方が広がっている。

フォンテラ社、2013/14年度の年次レポートを公表

 フォンテラ社は9月、2013/14年度(8月〜翌7月、生乳生産に関しては6月〜翌5月)の年次レポートを公表した。

 これによると、同年度のNZ国内におけるフォンテラ社の集乳量は、冬から春にかけて温暖な気候であったことから、前年を8%上回る158万4000トン(乳固形分ベース)となった。内訳は、北島が同9%増の96万9000トン、南島が同7%増の61万5000トンであり、北島については、夏場の乾燥気候の影響が懸念されたものの、秋には気象条件が改善したため、生乳生産への影響は軽微なものとなった。

 乳製品の販売については、中国向け全粉乳の増加が特筆すべきこととしている。また、バターについても、中東・アフリカからの需要により好調であったが、チーズ、カゼインについては、粉乳生産の高まりに相殺される形で、販売数量が減少したとしている。

 なお、フォンテラ社は9月の月次レポートで、2014/15年度の生乳生産量を前年度比2%増と見込んでおり、今後も生乳生産の増加傾向は続くと予想している。

(調査情報部 根本 悠)

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