需給動向 海外 |
域内外の需給緩和が継続し、枝肉価格は大きく下落 |
豚肉生産量は前年をわずかに下回って推移 欧州委員会によると、2014年7月のEU豚枝肉生産量は、前年同月比1.5%減の182万トンとわずかに減少した(図9)。 主要国の生産動向をみると、前年同月比で減少となったのは、ドイツ(前年同月比2.8%減)、フランス(同1.4%減)、イタリア(同38.7%減)である。 一方、スペイン(同6.0%増)、ポーランド(同3.4%増)、デンマーク(同1.6%増)、オランダ(同22.5%増)は増加となった。EU最大の消費国であるドイツでは、6月から7月中旬にかけて、例年季節変動に伴う供給不足により短期的な価格上昇が起きる。この上昇が昨年よりも顕著であったため、オランダ、ポーランドなどの国々がドイツ向けとして、と畜頭数を急増させたとみられる。
2014年8月の豚枝肉卸売価格、前年同月比13.3%安 欧州委員会によると、2014年8月のEU豚枝肉卸売価格は、前年同月比13.3%安の100キログラム当たり164.8ユーロ(2万3072円:1ユーロ=140円)と、かなり大きく値を下げた(図10)。EU豚枝肉卸売価格は、2013年10月以降低下基調で推移している。 2014年1月以降は、最大の輸出先であるロシアが、ウクライナで発生したアフリカ豚コレラ(ASF)によりEU産豚肉の輸入を禁じたため、価格は下落した。しかし、世界最大の豚肉輸出国である米国では、豚流行性下痢(PED)拡大の影響により生産が減少したため、アジアを中心にEU産の代替需要が高まり、6月まで価格は上昇した。 ところが、7月以降は、EU域内では冷涼な天候が続いたことでバーベキュー需要が不振となり、加えて米国の豚肉生産量が回復しつつあることから、輸出需要の低下により、価格は下落している。
飼養頭数は明暗がわかれる 2014年6月時点の13カ国の豚飼養頭数よると、各国で状況はさまざまであり、ドイツとスペインが繁殖豚をはじめ総飼養頭数を増加させる一方、フランスは各生育ステージのいずれも頭数を減少させている(表3)。 繁殖豚は、2013年1月に施行されたアニマルウェルフェア規制強化による妊娠母豚のストール飼い禁止の影響から、多くの加盟国が頭数を減少させたが、その影響も一服し、ここに来て飼養頭数を増加させる国々が現れてきている。
ロシア向け減少分を代替できず輸出は減少 欧州委員会によると、2014年1〜7月のEU域外への冷蔵・冷凍豚肉の輸出量は81万2000トンとなり、前年同期比9.0%の減少となった(表4)。これは、最大の輸出先であったロシアが禁輸措置をとっていることが主因である。また、加工品、内臓などもかなり減少している。 北米でのPED発生に伴う生産減を追い風に、アジア向けなどで輸出を伸ばしてきたが、ロシアやウクライナ向けなどの減少分を完全に代替出来ない状態が続いている(図11)。加えて、北米では豚肉生産の回復が伝えられていることから、さらなる輸出減と域内枝肉価格の下落が懸念されている。
(調査情報部 宅間 淳)
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