【要約】
熊本県農業研究センター畜産研究所では、飼料用米、稲ホールクロップサイレージ(以下「稲WCS」という。)(注1)およびエコフィード(注2)などの地域飼料資源を利用した発酵TMR(注3)の利用を推進している。
本調査研究では、TMRの原料として重要な飼料用米を短時間かつ省力的にソフトグレインサイレージ(以下「SGS」という。)(注4)に調整する方法の検討とともに飼料用米を含んだ発酵TMRを肥育牛へ給与し、慣行法と遜色ない結果を得た。
さらに、乳用牛を対象にミカンジュース粕や稲WCSなどを用いた発酵飼料を用いた給与試験を行い、トウモロコシサイレージの代替が可能であることを確認した。
第1 はじめに
国内の多くの畜産経営は、飼料を海外輸入に依存しているため、穀物の国際相場、気象変動、原油価格および為替変動により大きく翻弄されている。
特に近年、配合飼料価格は高止まりが続き、畜産経営を圧迫し続けていることから、飼料コスト削減が必要とされている。
これらに対応するには、国産飼料の利用拡大が必要とされ、特に唯一の穀物飼料である飼料用米や食品残さの飼料化(エコフィード)などが極めて重要となっている。
特に、これらの国産飼料および飼料資源を肉用牛や乳用牛に給与する場合においては、長期保存が可能な発酵TMR化が必要になるとともに、飼料用米を飼料原料として利用する時は、その供給および保管システムの確立が必要となり、多岐にわたる課題の解決が必要となる。
今回、当研究所では、発酵TMRの普及のアプローチとして以下の調査研究を行ったので報告を行う。
1 飼料用米の調整・保管技術の検討
2 肥育牛の玄米発酵TMRおよびSGS−TMR給与結果
3 乳用牛におけるトウモロコシサイレージをミカンジュース粕・稲WCS発酵飼料に代替給与した結果
(注1)ホールクロップサイレージ(Whole Crop Silage)
飼料用稲や飼料用とうもろこしのように実をつける飼料作物を茎葉ごと密封して一定期間貯蔵し酸性発酵させた飼料のこと。
(注2) エコフィード:エコフィード(ecofeed)とは、“環境にやさしい”(ecological)や“節約する”(economical)等を意味する
“エコ”(eco)と“飼料”を意味する“フィード”(feed)を併せた造語。食品製造副産物(醤油粕や焼酎粕等、食品の
製造過程で得られる副産物)や余剰食品(売れ残りのパンや弁当など、食品としての利用がされなかったもの)、
調理残さ(野菜のカットくずや非可食部など、調理の際に発生するもの)、農場残さ(規格外農産物など)を利用して
製造された家畜用飼料。
(注3)TMR:完全混合飼料(total mixed rations)
サイレージや干草を細断したものに、配合飼料や米ぬかなどを用いて、栄養成分をバランスよく調製した混合飼料を
完全混合飼料のこと。
(注4)ソフトグレインサイレージ(Soft Grain Silage)
もみ(子実)の部分だけを用いて、密封して酸性発酵させた飼料のこと。濃厚飼料に属する。
第2 飼料用米の調整・保管技術の検討
1 目的
飼料用米は、海外から輸入されるトウモロコシなどと代替可能であるため、飼料自給率の向上や水田の有効活用などが期待されている。
最近、飼料用米は、水田の転作作物として、栽培する農家には戸別所得補償制度において交付金が助成されている。
しかし、飼料用米は飼料として、低価格での販売が求められるものの、それに見合った生産・流通コストの低減は進んでおらず、販売価格がコストを下回る場合も多い。このため本報告では、調整・保管コスト低減のための取り組みとして、ほ場からの生もみを短時間で粉砕、貯蔵ができる高性能な穀物粉砕機を用い、SGS化する試みを行った。
一般的に、飼料用米の調製貯蔵法は、もみを穀物乾燥貯蔵施設などで乾燥貯蔵する方法とSGS化して保存する方法があり、SGS化保存は乾燥調製コストが不要であるなどの経済的なメリットが得られる。
今回、穀物のサイレージに利用されるローラーミル式充てん機を用い、大型の保存袋(チューブバック)を利用して飼料用米のサイレージ調製を行った。
2 材料と方法
試験は地元で生産されたもみ米(飼料用米品種:モミロマン・ミズホチカラ)を供し、ほ場収穫直後にローラーミル式充てん機(ROMILL社 CP1)で破砕後、チューブバックへ詰め込みサイレージ調製した。
また、同機で破砕まで行ったもみ米をフレコンバック法(注5)(200キログラム)およびパウチ法(注6)(200グラム)によりサイレージ調製した。
チューブバックおよびフレコンバックは屋外で保存し、パウチは室内で2カ月間保存し発酵品質を調査した。なお、成熟期で収穫したもみ米(水分:14.3%)は、水分含量が30%になるように水分調整し、黄熟期で収穫したもみ米(水分:27.7-29.6%)は水分調整を行わずサイレージ調製を行った。
(注5)フレコンバック法:フレキシブルコンテナバッグ(穀物や飼料、石灰、土砂などの梱包、輸送、保管に適した袋状の包材。
丈夫で柔らかな科学繊維が素材に用いられており、使用しない時には小さく折り畳むことができる。)を用いたサイレージの調製法。
(注6)パウチ法:食品包装材(パウチ)を容器として用いたサイレージの調製法。
3 結果と考察
試験に用いた充てん機の能力は1時間当たり7.6トン(カタログ値:8-20トン/時)の粉砕とチューブバックへの充てん処理を行うことが可能であり、高い処理能力を有することが確認できた。
チューブバックで調製した飼料用米サイレージは、乳酸が現物中1.20%含まれpHも4.3まで低下したことから、乳酸発酵が誘起されたことが認められた。また、フレコンバックおよびパウチで調製したサイレージと比較してもpH、有機酸含量およびV-score(注7)に差がみられなかったことから、それらと同等のサイレージ保存性を確保できる可能性が示された(表1)。
しかし、屋外で保存したチューブバックには、カラスやネズミによるフィルムの破損および食害が見られ、雨水の進入やカビの発生が確認された。そのため、安定的に長期保存するためには、チューブバック貯蔵中の鳥獣害対策が課題として挙げられた。
(注7)V-score:サイレージの品質評価法。基準:80点以上は良、60〜80点は可、60点以下は不良。
表1 調製方法の違いが飼料用米の発酵品質に与える影響 |
|
|
第3 肥育牛の玄米発酵TMRおよびSGS−TMR給与結果
1 目的
肥育牛において発酵TMRの利用を推進するため、玄米発酵TMRおよびSGS−TMRを試作し、研究所所有の肥育牛に給与し、発育、飼料摂取量などの影響を調査した。
2 材料と方法
(1)供試牛は、表2に示すように、黒毛和種の去勢牛1頭、雌牛2頭を用い、
平成25年1月から開始し、月齢28カ月で終了することした。
(2)給与飼料は、表3に示す玄米を含む発酵TMR(以下「玄米発酵TMR」という。)と
SGSを含む発酵TMR(以下「SGS−TMR」という。)としたが、ビタミンA欠乏症が
疑われるときはトウモロコシサイレージまたは稲WCSを給与した。
(3)肥育開始時から約4カ月間は玄米発酵TMRを、その後はSGS−TMRを給与した。
(4)体重は、4週間(28日)ごとに測定した。
表2 供試牛の血統、月齢、体重および1日当たり増体量 |
|
|
表3 発酵TMRの内容とトウモロコシサイレージ及び稲WCSの成分 |
|
トウモロコシサイレージ、稲WCS(飼料用品種・黄熟期):日本標準飼料成分表(2009) |
(※1)TDN:家畜が消化できる養分を数値化した可消化養分総量(Total Digestible Nutrients)のこと。
粗蛋白質,粗繊維,粗脂肪,NFE(可溶無窒素物)それぞれの可消化分を合計したもの。
(※2)CP:粗蛋白質(Crude Protein)
3 これまでの結果
(1)体重と1日1頭当たり増体量
肥育開始時体重は、去勢牛で371キログラム(10.8カ月齢)、雌牛で367キログラム(12.7カ月齢)と238.5キログラム(9.9カ月齢)であった(表2)。
平成26年1月29日現在で、体重および肥育開始時からの1日1頭当たり増体量は、去勢牛で723.5キログラム、0.90キログラム、雌牛で688キログラム、0.82キログラムおよび608.5キログラム、0.95キログラムであった(表2)。
(2)飼料摂取量および摂取状況
飼料摂取量については、1日1頭当たり摂取量として、図1に示した。
その1日1頭当たり飼料摂取量については、開始から4カ月間程度は玄米発酵TMRを給与し、9キログラムから13キログラム程度と順調に摂取量が増加した。5月からSGS−TMRに変更したが10月までの間は8キログラム程度の摂取量となった。さらに、ビタミンA欠乏症の可能性が考えられたので、9月下旬からトウモロコシサイレージを給与し、その後は稲WCSを給与した(図1)。気温が低下してきた秋から冬では、摂取量は10キログラムとなり回復傾向となった(図1)。
図1 1日1頭当たり飼料摂取量の推移 |
|
注:平成25年1月から試験開始 |
双方の発酵TMRの摂取状況は、給与してもすぐに食べに来ない場合や、食べに来ても短時間しか摂取せず、3〜4時間程度は飼槽に飼料が残っていることが多かったが、夕方の給与時や翌朝の給与時までには、飼料をほとんど摂取していた。
濃厚飼料と粗飼料が均一に混合されているTMRでは、通常牛が好む濃厚飼料のみを摂取できず、すなわち、嗜好性が濃厚飼料より劣ると思われる粗飼料も一緒に摂取することが、採食速度が遅くなる要因ではないかと考えられた。現物飼料摂取量は、SGS−TMRより玄米発酵TMRを多く摂取していたが、嗜好性の優劣や夏場の高温による食欲低下およびSGS−TMRの保存状態などの影響などがこの要因として考えられたが詳細は不明であった。
また、夏場の高温時に発酵TMRの変質が疑われた時期以外では、下痢の症状も見られず、その他、鼓張症、尿石症などの肥育牛で起こりやすい疾病についても観察はされていない。なお、本試験は現在継続中となっている。
参考 農家での肥育牛給与実証
1 給与実証の概要
肥育農家での給与実証は、肥育前期から後期まで農家慣行法で飼育されていた黒毛和種肥育雌牛(24カ月齢)5頭に出荷前148日間(平成25年1月〜5月)に前述の試験で用いた玄米発酵TMR(表3)を給与した。その他の管理方法は農家慣行法とした。
2 結果
(1)体重、増体重量、1日1頭当たり摂取量および1日1頭当たりの増体量の推移
肥育開始時体重は、平均512キログラム(24カ月齢)、出荷時体重は、平均652キログラムとなった。体重および肥育開始時からの1日1頭当たり飼料摂取量は13.4キログラム、増体量は70.8キログラム、1日1頭当たりの増体量は0.64キログラムとなった。(図2、図3)
図2 体重の推移 |
|
|
図3 飼料摂取量の推移 |
|
|
(2)経済性の検討
期間内に摂取した玄米発酵TMRは、1頭当たり1980.7キログラムとなり、玄米発酵TMR製造単価は1キログラム当たり34.7円(民間TMRセンター製造委託)であったことから、飼料費は1頭当たり7万1304円と試算(平成25年7月〜9月の配合飼料単価)された。これは、農協推奨法と比較して9%、農家慣行法と比較して6%程度の飼料費削減となった。また、粗飼料給与はわらを別途、給与する体系が一般的であるが、TMRとしたため給与にかかる労力が節減された。
図4 飼料経費の比較 |
|
|
(3)枝肉成績および出荷金額
平均脂肪交雑等級は3.4、平均枝肉重量は445キログラム、平均BMS.Noは4.4、平均販売価格は64万0782円となった。実証農家は肉質より枝肉重量を志向する経営であり、総じて実証農家の通常の出荷成績と同等程度となった(表4−(1)、(2))。
表4−(1) 枝肉成績 |
|
|
表4−(2) 枝肉成績 |
|
参考:農家平均については過去のデータがないものがあります。 |
(※1)BMS:ビーフ・マーブリング・スタンダード(Beef Marbling Standard)。「脂肪交雑(赤身の肉にどれだけ
サシ(霜降り)が入っているか)」を評価する基準のこと。
「肉質等級」は、「脂肪交雑」、「肉の色沢」、「肉の締まり及びきめ」ならびに「脂肪の色沢と質」の4 項目で判定する。
(※2)BCS:ビーフ・カラー・スタンダード(Beef Color Standard)。「牛肉の色」を評価する基準のこと。
(※3)BFS:ビーフ・ファット・スタンダード(Beef Fat Standard)。「脂肪の色」を評価する基準のこと。
なお、当農家においても夏場のTMRの変質による採食量の低下が見られたため、TMRの保存方法および梱包単位の検討が必要とされた。
第4 乳用牛にトウモロコシサイレージの代替として
ミカンジュース粕・稲WCS発酵飼料を給与した結果
1 目的
熊本県では、平成25年の乳用牛飼養戸数642戸、成畜飼養頭数4万4200頭、飼料作付面積4850ヘクタールとなっている。また、1頭当たりの飼料作付面積は11.0アールで減少傾向となっている(図5、6)。
図5 成畜飼育頭数と飼料作付面積 |
|
|
図6 1頭当たりの飼料作付面積 |
|
|
また、成牛を100頭以上飼育する大規模経営層の増加傾向、1戸当たり飼育頭数の増加により、自家生産する自給飼料を通年で給与ができる農家が少なくなっている(図7、8)。一方、飼育頭数が少ない経営体についても、高齢化により自給飼料生産の労力負担が難しくなってきている。
図7 飼育頭数階層別飼養戸数 |
|
|
図8 階層別1戸当たりの飼育頭数 |
|
|
すなわち、トウモロコシを栽培している農家であっても、栽培面積の制限や労力不足によって、トウモロコシサイレージが不足し、一時的に海外産輸入飼料に頼らざるを得ない状況となることを示している。
このような一時的な自給飼料不足の対応策として、県内の民間TMRセンターでは、地元産の稲WCSやミカンジュース粕などを主原料とした、トウモロコシサイレージの代替として発酵飼料の製造を開始した。本報告では、稲WCSやミカンジュース粕など混合発酵飼料の給与による搾乳牛への影響を調査し、トウモロコシサイレージの代替としての可能性を検討した。
(1)材料と方法
供試牛には、ホルスタイン種泌乳牛6頭(試験開始時の平均分娩後日数110±13日、平均体重651±35キログラム)を用い、3頭づつ2群に配置した。ドアフィーダー(注8)を設置したフリーストール牛舎内で、予備期18日間、本期3日間の計21日間を1期とするクロスオーバー法により泌乳試験を実施した。
飼料は13時に給与し、飲水と鉱塩は自由摂取とした。残飼は9時に回収した。搾乳は1日2回、9時および16時に行い、乳量をミルキングパーラー内に設置したミルクメーターで毎日計量した。牛乳の一定量を冷蔵保存し、乳成分を本期間中毎日測定した。また、最終日の飼料摂取2時間後に経口カテーテルを用いて第一胃内溶液を採取し、pHを測定した。また、頸静脈より採血を行い、血液生化学検査をした。
飼料は、トウモロコシサイレージを給与する対照区と、トウモロコシサイレージの代替として圧ぺんトウモロコシ、ミカンジュース粕および稲WCSなど混合発酵飼料(以下Aサイレージとする)を給与する試験区の2区を設けた。粗飼料としてオーツ乾草、ルーサン乾草およびビートパルプを給与し、飼料給与形態はTMRとした。飼料の組成および成分を表5、6に示した。
(注8)ドアフィーダー:1頭毎に給餌場所が決まっていて、牛が決められた場所に行くと牛に装着した
識別装置に反応してドアが開き、採食できるシステム。
牛をつながずに、自由に歩き回れるスペースを持った牛舎などで、1頭毎の飼料摂取量を測定することができる。
表5 Aサイレージの原材料 |
|
CP:4% TDN:44% |
表6 発酵飼料組成 |
|
注:ミカンジュース粕、稲WCSを中心に、穀類として圧ぺんトウモロコシ、
粗飼料としてオーツ乾草を使用。
(※1)NDF:中性デタージェント繊維
(※2)NCF:非繊維性炭水化物 |
(2)結果と考察
図9に乾物摂取量、図10に乳量、表7に乳量および乳成分、表8に血液生化学検査値およびルーメンpHを示した。乾物摂取量、乳量・乳成分には両区で有意な差は認められなかったものの、試験区が乾物摂取量、乳量、4%FCMともに多い傾向であった。血液生化学検査値およびルーメンpHにおいても両区に有意な差は認められなかった。
飼料の嗜好性については、試験区のTMRはミカンジュース粕が入っていることもあり、やや柑橘性の匂いがし、良好であった。このことは、乾物摂取量が試験区のほうが多いことからも判断できる。
飼料費は、Aサイレージの販売価格は21.9円/キログラム(原物当たり)、トウモロコシサイレージを実績価格から17円/キログラム(原物当たり)として試算を行った。
4%FCM (4パーセント脂肪補正乳量)1キログラム当たりの飼料費は、試験区が50.8円/キログラム、対照区が49.4円/キログラムとなり試験区が1.4円高くなった。しかし、表9の通りトウモロコシサイレージなどの自給飼料不足時に、代替として輸入飼料に100%頼ると試験区よりもさらに飼料費がかかる試算となっており、稲WCSやミカンジュース粕など混合発酵飼料を一時的に活用することで、飼料費を抑えられることが明らかとなった。
これらのことから、トウモロコシサイレージの代替として、圧ぺんトウモロコシ、ミカンジュース粕および稲WCSなどの混合発酵飼料を泌乳牛へ給与しても、乳生産性への悪い影響は見られず、かつ大幅な飼料費の増加がなかったことから代替可能であることが明らかとなった。
表7 乳量および乳成分 |
|
注:MUN(乳中尿素態窒素)は、給与飼料のエネルギーとタンパク質のバランスを表す指標
4%FCM:4パーセントの乳脂肪分の牛乳を生産したと仮定しての乳量 |
表8 血液性状およびルーメンpH |
|
|
表9 経済性の検討 |
|
※単価は平成25年12月価格引用
設定乳量:36kg FAT:3.8 Weight:680kg CP:3.30 |
第5 おわりに
現在の輸入飼料への依存から脱却し、自給飼料に立脚した循環型畜産への転換を実現するためには、飼料用米や稲WCSの生産・利用の拡大、飼料の生産・流通体制の整備、土地利用型畜産経営の推進、食品残さなどの飼料化などを総合的に推進していくことが重要である。
特に、飼料用米は、ほぼ唯一利用可能な国産飼料穀物で、大家畜の発酵TMRの重要な原料になり得るが、活用が思うように進んでいない。この理由のひとつに、飼料用米の供給コストが、畜産農家にとって輸入トウモロコシと比較しては高く、稲作農家にとって食用米と比較すると安く、所得確保が難しいことに起因していると考えられる。今後、双方が納得できる価格を実現するために、生産・流通・飼料化コストを総合的に削減していく必要がある。
また、農家の高齢化や経営規模の拡大が進むにつれて、労働負担が大きい飼料生産業務は畜産経営上の特に大きな課題となっているため、集落営農組織、コントラクター集団およびTMRセンターの連携がますます重要になると予想できる。
これらのことから、地域飼料資源を利用でき、低コストで長期保存が可能で畜種毎に栄養バランスを調整できる発酵TMRの普及が重要と考えられる。
今後、当研究所では、飼料用米や稲WCSの低コスト生産を進めるとともに、乳用牛のほか、利用が進んでいない肉用肥育牛、繁殖成牛および育成牛への応用を農業団体や民間のTMRセンターと連携して推進することになっている。
本稿は、畜産関係学術研究委託調査報告書の要約です。報告書の全文は、当機構のホームページに掲載しています。
|