畜産の情報−豪州の牛肉の需給動向 米国産牛肉価格の高騰から8月の日本向け牛肉輸出量は増加− 2014年10月
需給動向 海外

◆豪 州◆

米国産牛肉価格の高騰から
8月の日本向け牛肉輸出量は増加


肉牛価格は過去5年平均の水準まで上昇

 豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、肉牛取引の指標となる東部地区若齢牛指標(EYCI)価格は、2014年8月以降上昇基調にあり、同年9月1日時点では1キログラム当たり357.75豪セント(340円:1豪ドル=95円)と、直近5カ年平均の水準にまで回復した(図4)。価格上昇の要因としてMLAは、フィードロットや放牧肥育生産者からの肥育もと牛需要の高まりを挙げている。クイーンズランド州やニューサウスウェールズ州北部では、干ばつの影響は依然として残っているものの、8月にはこれらの地域でも平年以上の降雨があり、今後の降雨による放牧環境のさらなる改善への期待が高まっている。
図4 EYCI価格の推移
資料:MLA
注1:枝肉重量ベース
  2:東部3州(QLD州、NSW州、VIC州)の主要家畜市場の若齢牛の
   加重平均取引価格で、家畜市場の指標価格となっており、肥育牛や
   経産牛の家畜市場価格などとも9割近い相関関係にある

日本向けは6カ月ぶりに前年同月を上回る

 豪州農漁林業省(DAFF)によると、2014年8月の牛肉輸出量は11万1872トン(前年同月比13.4%増)となり、単月の実績としては前月に次ぐ好記録となった(図5)。

 国別では、米国向けが3万7499トン(同107.5%増)と2カ月連続で前年同月の2倍を超える高水準となり、米国内での牛肉生産量の減少とそれに伴う牛肉価格高の影響から、豪州産への引合いが強まっていることがうかがえる。日本向けも、冷蔵牛肉の増加により2万7049トン(同9.2%増)と、6カ月ぶりに前年同月を上回った。日本向けを種類別に見ると、冷蔵牛肉は、米国産牛肉価格の高騰から豪州産に需要がシフトしていることで、1万1824トン(同32.5%増)となる一方で、冷凍牛肉については、好調な米国向けと競合し、1万5226トン(同3.8%減)とやや減少した(図6)。

 米国および日本向けが増加する一方、韓国向けは1万2140トン(同3.4%減)と8カ月ぶりに減少に転じ、中国向けは9239トン(同42.9%減)と大きく落ち込んだ。中国向けは、成長促進ホルモン(HGP)を使用した牛肉の輸入が禁止された今年5月以降、前年を大幅に下回って推移している。
図5 主要輸出先別牛肉輸出量の推移
資料:DAFF
  注:船積重量ベース
図6 日本向けの冷蔵・冷凍別牛肉輸出量の推移
資料:DAFF
  注:船積重量ベース

2013/14年度の内臓肉輸出量は過去最高を記録

 MLAによると、2013/14年度(7月〜翌6月)の内臓肉輸出量は15万4121トン(前年度比14.1%増)、輸出額が5億1500万豪ドル(同20.0%増、489億円:1豪ドル=95円)となり、干ばつによると畜頭数の増加や堅調な輸出需要を背景に、ともに過去最高となった。

 国別では、韓国向けが2万7458トン(同16.1%増)と大幅に増加して第1位の輸出先となり、次いで日本向けが2万5341トン(同1.9%増)、香港向けが2万3412トン(同8.6%増)となった。また、南アフリカ共和国が1万5325トン(同36.5%増)と、大きな伸びを見せている(図7)。

 部位別では、最も輸出量の多い反すう胃(トライプ)が、香港向け(2万2450トン、同6.5%増)や韓国向け(4140トン、同43.2%増)の増加を反映して、全体では3万6665トン(同13.1%増)と大幅に増加した(図8)。

 横隔膜(ハラミ・サガリ)は1万4753トン(同10.2%増)と増加したものの、このうち日本向け(7033トン、同10.8%減)は、韓国向け(7272トン、同69.9%増)との競合により減少した(図9)。

 タンは1万306トン(同20.4%増)となり、このうち日本向けは9279トン(同11.8%増)となった。タンの日本向け輸出については、2013年当初に米国産の月齢制限緩和により減少との見方も出ていたが、米国産が価格高となっていることで、これまでのところ好調に推移している(図10)。
図7 主要輸出先別内臓肉輸出量の推移
資料:MLA
  注:船積重量ベース
図8 反すう胃輸出量の推移
資料:MLA
  注:船積重量ベース
図9 横隔膜輸出量の推移
資料:MLA
  注:船積重量ベース
図10 タン輸出量の推移
資料:MLA
  注:船積重量ベース
(調査情報部 伊藤 久美)

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