需給動向 海外

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域内外の需要低下から枝肉価格はわずかに下落


豚肉生産量は前年をわずかに下回って推移

 欧州委員会によると、2014年6月のEU豚肉生産量は、前年同月比0.3%増の169万5000トンとなった。また、同年上半期(1〜6月)の豚肉生産量は前年同期比1.6%減となり、と畜頭数も同1.0%減となっている(図11)。

 同委員会では、2014年の年間豚肉生産量を前年比1.3%減と予測しており、年間を通じてわずかに減少傾向で推移すると見ている。加盟国別の動向を見ると、最大生産国のドイツが同1.4%減、続くスペイン、フランスがそれぞれ同0.4%減、同1.8%減と3大生産国でいずれも減少が見込まれている。2013年1月から実行されたアニマルウェルフェアの規制強化(妊娠母豚のストール飼禁止)に伴い、繁殖雌豚の飼養頭数が減少し、それによりと畜頭数も減少していることが減産予測につながったとみられる。
図11 豚肉生産量の推移
資料:欧州委員会
注1:2012年はEU27カ国、2013〜14年はクロアチアを含むEU28カ国
  2:2014年6月は速報値、同年7月以降は予測値

2014年7月の豚枝肉卸売価格、前年同月比6.4%安

 欧州委員会によると、2014年7月のEU豚枝肉卸売価格は、前年同月比6.4%安の100キログラム当たり169.51ユーロ(2万3392円:1ユーロ=138円)となり、前月からわずかに値を下げた(図12)。

 EU豚枝肉卸売価格は、2013年10月以降低下基調で推移しているが、2014年1月以降は、最大の輸出先であるロシアが、ウクライナで発生したアフリカ豚コレラ(ASF)によりEU産豚肉の輸入を禁止したため、例年であれば値上がりする時期にもかかわらず下落が続いた。その後、3月に底値となり、世界最大の豚肉輸出国である米国での豚肉生産量の減少を受けて、アジアからのEU産豚肉に対する代替需要が高まったことで、6月は3月から11.2%高となる同170.88ユーロ(2万3581円)の値を付けた。しかしながら、価格の上昇とともに輸出需要も弱まり、7月は前月からわずかに値を下げている。
図12 豚枝肉卸売価格の推移
資料:欧州委員会
 また、域内では夏場のバーベキュー需要が期待されたが、冷涼な天候もあって価格の上昇にはつながらなかった。

輸出はアジア向けが大幅に増加

 欧州委員会によると、2014年1〜6月のEU域外への冷蔵・冷凍豚肉の輸出量は62万2000トンとなり、前年同期比8.6%の減少となった(表1)。これは、ロシアがEU産豚肉の輸入を禁止したことが最大の要因であり、同国向けは前年同期比89.4%減と大幅に減少した。一方、北米での豚肉生産量の減少に伴い、調達先を北米からEUに変更したアジア向け輸出が大きく伸びた。国別に見ると、香港向けが21.0%増、日本が47.0%増、韓国が84.0%増、フィリピンが72.0%増といずれも大幅増となり、ロシアの禁輸の影響をかなり吸収した。しかしながら、輸出価格の上昇により需要が弱まったことから、6月の輸出量は5月を下回っている。このため、今後の輸出増は期待しにくい状況とみられている。
表1 EU域外への豚肉輸出量(2014年)
資料:欧州委員会(太字:1〜6月の累計値。ただし、シンガポール、台湾、タイ、ベトナムを除く。)、「Global Trade Atlas」(細字)
HSコード:0203
  注:製品重量ベース
(調査情報部 中野 貴史)

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