畜産の情報−豪州の牛肉の需給動向 2015年の牛飼養頭数は過去20年来で最低水準の見通し− 2014年9月
需給動向 海外

◆豪 州◆

2015年の牛飼養頭数は
過去20年来で最低水準の見通し


2014年以降、と畜頭数の増加傾向は強まる

 豪州統計局(ABS)が8月8日に公表した「Livestock and Meat, Australia」によると、2013/14年度(7月〜翌6月)の牛と畜頭数は876万4000頭(前年度比12.2%増)となり、うち雌牛は428万8000頭(同20.9%増)と大幅に増加した(図4)。この要因として、肉牛主産地であるクイーンズランド(QLD)州での長引く干ばつの影響が挙げられる。豪州北部が雨季となる夏の時期に2年連続で降雨が得られなかったことで、QLD州の飼養環境は著しく悪化しており、2014年に入って以降、と畜頭数の増加傾向は強まっている。特に、干ばつが長引くにつれて雌牛の淘汰が進み、全体のと畜頭数に占める雌牛の割合は2014年2月以降、50%を上回っている。
図4 牛と畜頭数の推移
資料:ABS
  注:子牛を除く。

7月牛肉輸出量は再び記録更新

 豪州農漁林業省(DAFF)が8月1日に公表した「Red Meat Statistics」によると、2014年7月の牛肉輸出量は12万1524トン(前年同月比14.4%増)と、今年に入り3度目の記録更新となった(図5)。輸出量を国別に見ると、米国向けが3万6799トン(同108.3%増)、日本向けが2万6284トン(同17.1%減)、韓国向けが1万3157トン(同3.1%増)、中国向けが1万949トン(同27.3%減)となった。

 また、輸出価格を見ると、米国向け加工用は米国内での牛肉減産による引合いの強まりから6月以降上昇し、7月末には1キログラム当たり600.3豪セント(588円、1豪ドル=98円)と最高値を更新し、日本向けもこれにつられる形で、ばらおよびグラスフェッド・フルセットがそれぞれ同544豪セント(533円)、同670豪セント(657円)と高騰している(図6)。
図5 主要輸出先別牛肉輸出量の推移
資料:DAFF
  注:船積重量ベース。
図6 米国および日本向け牛肉輸出価格の推移
資料:MLA
  注:米国向け加工用は経産牛の90CL(赤身率90%の加工用バルクパック)、
    日本向けばらはブリスケットで、いずれも豪州の港における船側渡し
    (FAS)価格。

2015年の牛総飼養頭数は過去20年で最低水準

 こうした中、豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)は7月22日、2014年以降の牛肉産業予測を公表した。これによると、前述のとおり、2013年から2014年にかけて、と畜頭数が高水準で推移したことに加え、これまでの雌牛の淘汰によって子牛の出生頭数が減少していることなどから、2014年6月末時点での牛総飼養頭数は、前年から8.8%減の2670万頭、2015年には過去20年で最低水準となる2610万頭(同2.2%減)と見込んでいる(図7)。

 供給面では、これまでの出生頭数の減少によると畜適期の肉牛不足や、雨季を迎える2014年10月頃から、豪州北部での干ばつ状況の改善が見込まれることから、2015年には牛群再構築のための保留が進み、と畜頭数は減少に向かうとみている。また、供給の減少を受けて今後、肉牛生体価格の上昇も見込まれており、中でも雌牛の価格が最も上昇するとの見通しになっている。

 このため、2016年以降は、飼養頭数は徐々に回復に向かうとみている。
図7 牛総飼養頭数の見通し
資料:2011年以前は豪州農業資源経済科学局(ABARES)、
    2012年以降はMLA
注1:2012年および2013年はMLAによる推測値。2014年以降は予測値。
  2:乳牛を含む。
(調査情報部 伊藤 久美)


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