需給動向 海外

◆中 国◆

2014年の全粉乳の輸入量は100万トンの大台へ


2014年の生乳生産量は前年比5%増の3600万トン

 米国農務省海外農業局(USDA/FAS)が7月17日に公表した「Dairy:World Markets and Trade」によると、2014年の中国の生乳生産量は3600万トン(前年比5.0%増)と見込まれる(表7)。増産の背景には、国内の乳製品需要が好調なことで、乳業各社ともに生乳の確保を強めているとみられ、生乳の農場出荷価格上昇に伴う生産意欲の向上があるとされる。2014年に入ってからも生乳の同価格は1キログラム当たり4.0元(約66円、1元=16.6円)台の高水準にある(図30)。USDAは、高い乳価水準によって生産者が良質な飼料を購入する余裕が生じていることから、結果として1頭当たり乳量の増加につながるとしている。

表7 生乳生産量などの推移

資料:USDA
  注:2013年は推定値、2014年は予測値

図30 生乳の農場出荷価格の推移
資料:中国農業部畜産局よりALIC作成
  注:統計の集計対象範囲は河北、山西、内モンゴル、遼寧、黒龍江、
   山東、河南、陝西、寧夏、新疆の10省で、全国の生乳生産量の
   8割強を占める。
 近年、中国は良質な飼料を求めて、アルファルファの輸入量を増やしており、2013年は過去最高の79万8000トン(前年比73.5%増)となった(図31)。中国農業部は、国内の飼料増産を推進しており、アルファルファの作付面積を一年間で3万ヘクタール以上拡大する計画を打ち出している。しかし、旺盛な需要に生産が追いつかず、2014年上半期は前年同期を上回るペースで輸入しており、USDAは2014年の輸入量が100万トンに近い数字になると見ている。

 一方、中国では、好調な消費需要を背景に牛肉価格が高騰を続けており、小規模経営を中心に、肉用向けに乳牛出荷が増加していることから、頭数が減少している。さらに、2013年から生乳の品質管理基準が厳格化されたことで、USDAは今後、小規模経営の離農が加速し、生乳生産に影響を及ぼす可能性があると指摘している。
図31 乾牧草(アルファルファ)の国別輸入量の推移
資料:GTI社「Global Trade Atlas」
  注:HSコード121490

2014年の全粉乳の消費量は225万トン、脱脂粉乳は38万トン

 中国で、粉乳類は飲用乳や育児用粉乳、はっ酵乳などの原料用など利用範囲が広く、その需要は年々増加している。USDAは、こうした需要が継続的に増加するとし、2014年の全粉乳の消費量を225万トン(前年比19.8%増)、脱脂粉乳を38万トン(同31.1%増)と見込んでいる(表8)。

 こうした中、中国国家食品薬品監督管理総局は、国内の育児用粉乳生産メーカーに対して、生産許可証の更新を義務付けた。生産許可証の有効期限は5月末であるため、安全基準を満たせず、更新が認められないメーカーは生産停止となる。USDAは、これにより国内生産の伸びが鈍化するとしており、2014年の全粉乳の生産量を125万トン(同4.2%増)、脱脂粉乳は4万9000トン(同9.3%減)と見込んでいる。
表8 粉乳需給の推移
資料:USDA
  注:2013年は推定値、2014年は予測値

2014年の輸入量は、全粉乳が100万トン、脱脂粉乳が33万トン

 2014年1〜6月の全粉乳の輸入量は、前年同期比73.5%増の53万トンと大幅に増加した(表9)。輸入量全体の9割以上を占めるニュージーランド(NZ)からは47万9000トン(同62.1%増)と、前年を上回るペースで輸入されている。また、2014年上半期はウルグアイやアルゼンチン、チリなど南米からの輸入量増加が目立っており、中国が輸入先の多角化を進めていることがうかがえる。

 一方、脱脂粉乳の輸入量も同82.9%増の15万1000トンと大幅に増加している(表10)。最大の輸入先はNZであり、6万9000トン(同11.3%増)と輸入量全体の4割以上を占める。これに米国が2万9000トン(同281.8%増)と続く。USDAは、前述の通り国内生産だけで需要を賄えないため、2014年の全粉乳の輸入量は過去最高の100万トン、脱脂粉乳は33万トンに達すると見込んでいる。
表9 全粉乳の輸入量の推移
資料:GTI社「Global Trade Atlas」
  注:HSコード040221
表10 脱脂粉乳の輸入量の推移
資料:GTI社「Global Trade Atlas」
  注:HSコード040210
 中国では、5月1日から同国に輸出する海外の乳製品メーカーに対し、事前の登録を義務付ける登録管理制度を実施している。この実施日から未登録のメーカーで生産された乳製品は輸入できなくなることから、実質的に輸入育児用粉乳に対する規制を強化するものである。これによる輸入量の減少も懸念されたが、育児用調製食品の2014年1〜6月の輸入量は、5万9000トン(前年同期比6.4%増)と堅調に増加している(表11)。
表11 育児用調製食品の輸入量の推移
資料:GTI社「Global Trade Atlas」
  注:HSコード190110、育児用粉乳も含む。
(調査情報部 木下 瞬)

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