需給動向 海外

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生乳価格は上昇も、ロシアの禁輸措置が懸念


2014年6月の生乳価格、前年同月比7.8%高

 オランダ農業園芸組織連合会(LTO)によると、2014年6月のEU域内主要乳業メーカー16社の6月の平均生乳買取価格は、前月からわずかに値を上げ、100キログラム当たり38.99ユーロ(前年同月比7.8%高、5420円:1ユーロ=139円)となった(図20)。
図20 生乳価格の推移
資料:LTO
  注:域内主要乳業16社の平均値
 乳業メーカー各社の動向を見ると、英国の企業(デイリークレスト、ファーストミルク)とフランスの企業(ボングレイン、ラクタリス、ダノン、ソディアール)は、季節調整などを行った結果、前月から生乳買取価格を引き上げた。

 一方、ドイツの企業(ミューラー)は、買取価格をわずかに引き下げた。同社は年初からの取扱量が500トンに達するまで、ボーナス価格を上乗せしていた。6月の基本買取価格はわずかに値上げしたが、5月で500トンに達したため、実質的に減額となった。

 価格上昇の主な要因は、新設された複数の粉乳工場が7月から稼働見通しとなったことに伴い、原料としての生乳を取り扱うスポット市場からの引き合いが強まったものとみられている。

 EU域内の乳価は高水準を維持しているものの、中国の粉乳在庫量に余剰感が出てきたとの見方から、ニュージーランド産の乳製品価格は大幅に下落している。このため、一部の専門家からは、生産増が続くEUにおいても、需給バランスの不均衡が生じた場合、乳価の急激な下落の可能性も指摘されている。

生乳出荷量、前年同月比3.6%増

 ドイツ乳製品市場価格情報センター(ZMB)によると、2014年5月の生乳出荷量は、1353万トン(前年同月比3.6%増)となった(図21)。
図21 生乳出荷量の推移

資料:ZMB
  注:2014年は暫定数値
 生乳出荷量は、例年4〜5月にピークを迎える。今年も同様の傾向を示しているが、前年同月比で見ると、5月単月では最も小幅な増加割合となった。これは、2〜4月が強い寒波の影響で、オランダ、英国、アイルランド、ドイツ、フランスなど主要国の生産が抑制され、2014年同期は、前年と比べて増加傾向が顕著になっていることによる。

 1〜5月までの累計出荷量を見ると、6276万トン(前年同期比5.2%増、同312万トン増)となっている。例年、下半期の出荷量は上半期に比べ減少に転じるが、2014年を通じて400万トン以上の増産になると見込まれている。

ロシア、経済制裁への報復措置を決定

 ロシア大統領府は8月6日、同日付で大統領令「ロシア連邦の安全保障を図るための特別経済措置」について、プーチン大統領が署名したと発表した。

 この経済措置は、今後1年間の輸入を含む国外からの経済活動を禁止、あるいは制限するものである。規制対象となるのは、ロシアに対し経済制裁を行っている国家、個人あるいはそれに賛同する者であり、特に「農業生産物、原材料と食材」を制限するとした。

 さらに、翌日の8月7日に、ロシアのメドベージェフ首相は、前日に発表された大統領令に基づき、規制対象とする国と品目を発表した。対象となる国は、米国、EU(28カ国)、カナダ、豪州、ノルウェーであり、対象国からの全ての乳製品は禁輸措置が取られることとなった。なお、乳児用粉ミルクなど乳幼児向け製品は対象から除外されている。輸入禁止の対象となる品目は、表4のとおり。
表4 輸入禁止となる対象品目
資料:ロシア連邦政府公表資料よりALIC作成
注1:乳幼児向けの製品を除く
  2:該当品目から生産されたもの
 ロシアが2014年1〜4月に輸入した乳製品の実績額を見ると、今回輸入禁止とした国々からの輸入額は全体の7割以上を占めており、そのほとんどがEUからの輸入である(表5)。さらに、今回の措置とは別に衛生上の理由により、7月末から禁輸されたウクライナ分を含めると、禁輸対象額は8割を超えている。

 EUは、他の農畜産物でもロシアの輸入量で高いシェアを持つことから、同国内での乳製品をはじめとした食料の需給ひっ迫を懸念する意見もある。
表5 乳製品輸入額(ロシア、2014年1〜4月)
資料:GTI社「Global Trade Atlas」
注1:1米ドル=104円(2014年7月末TTS)
  2:ウクライナに対し、今回の措置とは別に衛生上の理由から、7月末より乳製品を禁輸
 一方、EU側から乳製品の輸出状況(2014年1〜5月)を見ると、ヨーグルト(占有率15.9%)、バター(同23.8%)、チーズ(同23.3%)でロシア向けの割合が高くなっており、こうした製品への価格下落などの影響が懸念される(表6)。
表6 乳製品輸出額(EU28カ国、2014年1〜5月)
(調査情報部 宅間 淳)

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