需給動向 海外

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需給の緩和により、乳製品価格は大幅に下落


2013/14年度の生乳生産、過去最高を記録

 ニュージーランド乳業協会(DCANZ)によると、2014年4〜5月の生乳生産量は、200万6000トン(前年比29.5%増)と、前年を大幅に上回った(図27)。4月から5月にかけては、多くの地域で十分な降雨が見られたこと、前年度は干ばつの影響で早期に乾乳期に移行した酪農家が多かったこと、が背景にある。

 2013/14年度(6月〜翌5月)の通期では、生乳生産量は、2130万3000トン(同9.4%増)と過去最高の数量となった。当初は前年度の干ばつの影響が予想されたものの、冬から春にかけて温暖な気候から牧草の生育が進み、年度を通じて生乳生産が好調に推移したことが増産要因に挙げられる。

 なお、6月から7月は乾乳期であり、季節的に生乳生産は大幅に減少するものの、同時期の乳牛の飼養管理、牧草の生育状況は、その後の生乳生産に大きな影響を及ぼす。6月以降の気象状況を見ると、多くの地域で平年以上の降雨とともに、温暖な冬を迎えており、乳牛、牧草の状況も良好であるとみられている。そのため、当面は、新年度についても堅調な生乳生産が予想されている。
図27 生乳生産量の推移
資料:DCANZ
  注:年度は6月〜翌5月

好調な生乳生産を背景に輸出量は増加傾向

 生乳生産が増加傾向で推移する中、2014年5〜6月の主な乳製品の輸出量は、脱脂粉乳が5万4756トン(前年比15.5%増)、全粉乳が20万9106トン(同34.7%増)、バターが8万6300トン(同29.0%増)、チーズが4万3736トン(同3.2%減)となった(図28)。生乳生産の増加に伴い、チーズを除きいずれも前年を上回っている。5月から6月にかけては、季節的に生乳生産量が減少する時期に当たるため、前年度は輸出量が月を追うごとに減少している一方、今年度は、4月以降ほぼ同水準の輸出量となっており、好調な生乳生産を背景に安定的に推移している。

 2013/14(7月〜翌6月)の乳製品輸出量は、全粉乳、バターは前年を上回ったものの、脱脂粉乳、チーズは前年を下回った。脱脂粉乳とチーズの減少は、年度を通じて、中国向けの全粉乳生産に生乳が優先的に仕向けられたことが要因である。なお、バターについては、中国に加えイランやベルギーなど安定的な輸出先があることなどから、前年を上回る輸出量となった。

図28 乳製品輸出量の推移
資料:Statistics NZ

乳製品国際価格、大幅な下落

 2014年8月5日に開催された、乳製品国際価格の指標とされるグローバルデーリートレード(GDT:ニュージーランド(NZ)最大手乳業フォンテラ社主催の電子オークション、月2回開催)によると、脱脂粉乳の平均取引価格は、1トン当たり3264米ドル(34万円:1米ドル=104円、前年比26.7%安、前回比7.2%安)、全粉乳は同2725米ドル(28万円、前年比45.7%安、前回比11.8%安)となった(図29)。NZはじめ主要乳製品輸出国の生乳生産が増加傾向にある中、今回の総売買数量が、2014年で最大になるなど数量が増加している一方、最大の輸出先である中国国内での在庫の積み増しにより、同国の需要が以前より弱まっているとされているため、下落傾向が継続している。

 こうした乳製品国際価格の下落傾向を受けて、フォンテラ社は7月、2014/15年度(6月〜翌5月)の生産者乳価の支払見込みを、乳固形分1キログラム当たり7NZドル(623円:1NZドル=89円)から6NZドル(534円)に引き下げることを発表しており、今後、酪農家の生産意欲にも影響を与えると予想されている。
図29 GDTの乳製品価格の推移
資料:GDT

NZの酪農家、今後の酪農産業について悲観的な見通し

 オランダの農業系金融機関ラボバンクは7月、今後の酪農産業に関する酪農家の意識調査結果を公表した。

 これによると、NZの酪農家の63%は今後の酪農産業について、悲観的な見通しを示している。これは、乳製品国際価格の下落、外国為替相場における米ドルに対するNZドル高傾向、高水準の政策金利などが背景にある。また、農場における設備投資などについて、他の部門(肉用牛、羊)の生産者は積極的な意向を示している一方、酪農家は比較的消極的であり、悲観的な考えを有する一面が表れている。

(調査情報部 根本 悠)

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