需給動向 海外

◆チ リ◆

2014年1〜5月の豚肉生産量、前年同期比9.9%減


と畜頭数、前年同期比10.1%減

 チリ農業省農業政策・調査局(ODEPA)によると、2014年5月の豚と畜頭数は、前年同月比6.8%減の43万3060頭となった(図12)。また、2014年1〜5月では、212万6435頭(前年同期比9.1%減)となった。この結果、同期間の豚肉生産量(枝肉換算ベース)も、20万9802トン(同9.9%減)とかなりの程度減少した。この減産要因として、2012年5月に、チリ最大手豚肉インテグレーターの一部生産施設が環境問題により閉鎖し、同年末にかけてかなりの程度母豚頭数を減らした影響が依然として続いていることが挙げられる。この生産施設の閉鎖により、2013年1月時点の繁殖母豚頭数は、前年同月比約15%減となり、以降、子豚の生産に影響が及んでおり、2014年の上半期になってもこうした状況から回復していない。

 国内生産が減少している中、同国では安価な外国産豚肉の輸入量が増加している。ODEPAによると、2014年1〜5月の豚肉輸入量は、前年同期比16.4%減の1万1889トンとなったものの、輸入が急増した2012年以前と比べると依然として高い水準にある。チリ養豚生産者協会(ASPROCER)は、政府に対し、急増する外国産豚肉による国内養豚産業への影響を懸念してセーフガード(SG)措置を要請したものの、生産者側の主張は根拠のないものとして退けられており、2014年8月現在、SG措置の導入には至っていない。

図12 豚と畜頭数の推移
資料:ODEPA
  注:2012年と2013年の9月は、例年よりも祝日が多く工場稼働日が少なかった
   ため、と畜頭数は減少。

輸出量は減少も中国向けが大幅増

 豚肉生産量の減少は輸出にも影響を及ぼしており、2014年1〜5月の豚肉輸出量は、4万4747トン(前年同期比16.1%減)と大幅に減少した(表2)。上位5カ国で見ると、中国向けを除き、軒並み減少となった。これは、EU域内でのアフリカ豚コレラ(ASF)発生により最大の輸出先であるロシアがEUからの豚肉輸入を禁止したことで、EUが他国向け輸出を拡大させていることが背景にあるとみられている。これにより、相対的にチリ産豚肉の市場シェアが縮小した。一方、中国向けの増加要因は、2006年に中国との間で締結した自由貿易協定(FTA)が挙げられる。現在は、チリから中国への豚肉は無税で輸出できる状況にあり、中国向けはチリにとって価格優位性が高くなっている。2014年1〜5月の輸出実績を見ると、日本に次ぐ輸出先となっており、近年大幅な拡大を続けている。

表2 輸出先別豚肉輸出量(2014年1-5月期)

資料:ODEPA
  注:HSコード020311、020312、020319、020321、020322、020329
(調査情報部 米元 健太)

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