輸入飼料依存型畜産からの脱却に向けて |
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協同組合 日本飼料工業会 会長 山内 孝史 |
July 4−アメリカ合衆国の独立記念日。穀物取引に携わる者にとっては、毎年度、トウモロコシなどの収穫見通しや今後の穀物相場を占う上で、転換点となる重要な日である。幸い今年は、トウモロコシの生育期から7月の受粉期まで好天に恵まれ、単収の増加予想もあって、生産量は史上最高となる見通しであり、期末在庫も高水準の予想から、トウモロコシの国際相場(シカゴ相場)は3ドル/ブッシェル台半ばで推移している。 飼料をめぐる情勢変化 わが国では、飼料穀物などのほとんどを輸入に依存しており、輸入量は、米国、ブラジル、豪州、アルゼンチン、カナダなどから年間1500万トンにのぼる。
配合飼料価格安定制度
配合飼料価格安定制度は、輸入原料穀物価格の高騰による配合飼料価格の上昇が畜産経営に及ぼす影響を緩和するため、「通常補填」(生産者と配合飼料メーカーが積立)と、異常な価格高騰時に通常補填を補完する「異常補填」(国と配合飼料メーカーが積立)の2段階の仕組みで生産者への補填を行っている。 飼料用米の生産・利用拡大の意義政府においては、現在26%の飼料自給率を38%(平成32年度)に引き上げることを目標に、飼料基盤や機械の整備、飼料用稲の生産拡大、食品残さの飼料化(エコフィード)の推進などを支援し、足腰の強い畜産経営を実現しようとしている。こうした中、昨年末、政府は新たな農業政策、コメの生産調整の見直しを公表し、飼料用米の推進政策を拡充するとともに、飼料としての利用可能量を453万トンと試算した。飼料業界や畜産業界にとって、安価で安定供給できる国産原料の確保は極めて重要な課題であり、海外の穀物事情や為替相場に 先の国会で、関係者のご努力により、養豚農業振興法が成立したこともタイムリーである。同法では、国内由来飼料(食品残さまたは国内において生産された飼料用の米穀などを原材料とする養豚に係る飼料)の利用の増進が明記されている。さらに、飼料用米・稲WCSなどの利用拡大は、さまざまな機能を有する水田農業を維持・活用し、国土保全を図りながら、畜産経営の安定と構造改革を促すという大きな意味を持っている。 このため、私ども日本飼料工業会としても、昨年12月に飼料用米プロジェクトチームを立ち上げて諸課題を整理するとともに、「飼料用米に関するメッセージ」の公表や「飼料用米ダイヤル」の設置など、飼料用米の利用拡大に向けたさまざまな取り組みに努めている。 生産現場での不安これまで私どもが、稲作や畜産の現場を回り、生産やコメの流通に携わる方々からお話を伺うと、実際には、飼料用米の生産や利用が円滑に進んでいるとは言い難い。現場では、政府の飼料用米に関する政策がいつまで続くのか不安視する声が多く聞かれ、生産地における飼料用米生産に対する温度差や、流通・保管施設の整備など、新たな投資に対する慎重な姿勢がみられる。また、飼料用米の利活用を実際に推進するためには、低コストの生産技術や栽培体系の普及、流通・保管施設の整備などが必要である。このためには、生産者など関係者が腰を据えて飼料用米に取り組む必要があり、政策の中長期の安定が不可欠である。飼料用米の推進のためには、政府が飼料用米政策を法制化するなど、中長期の飼料用米政策の安定性を明確に国民に示すことが必要ではないか。 国土保全と食料供給そもそも、多額の財政負担によって支えなければ農地や生産を維持できないような、コメへの過度な依存は現実的に無理があり、コメから抜け出すことこそ必要だとの指摘がある。では、コメから抜け出して何に向かうのか。わが国の農地をどのように利用し、国土と環境を守りながら今後50年、100年にわたって国民にどのように食料を供給していくのか、そのための国家的戦略を提示し、国民のコンセンサスを得ることが必要だと考えている。私ども飼料メーカーとしても、多くの課題があるのは承知の上で、飼料用米に関する取り組みを強化し、畜産生産者と飼料用米生産者の幅広い観点からの「耕畜連携」に協力していきたい。
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