畜産の情報−豪州の牛肉の需給動向 肉牛取引価格、上昇傾向が継続− 2015年8月
需給動向 海外

◆豪 州◆

肉牛取引価格、上昇傾向が継続


牛肉輸出量、米国向けを中心に増加

 豪州農漁林業省(DAFF)によると、2015年6月の牛肉輸出量は11万8713トン(前年同月比15.0%増)と、5カ月連続で前年同月を上回った。干ばつに伴いと畜頭数は高水準で推移しており、増加基調が続いている(表1)。

 特に米国向けは、米国内の牛肉生産量の減少に伴い、2015年1月以降、毎月、前年同月比で30%以上の輸出増加となっている。また、韓国や中国向けも増加している一方、日本向けは、3〜4月の輸出量が増加した反動や前年同月が高水準であったことから、わずかに前年同月を下回った。しかしながら、日豪経済連携協定(EPA)発効により関税が削減された中、米国における牛肉生産量の減少もあり、日本向けも2015年累計では前年を7.4%上回っている。今後は牛群再構築に伴い生産量の減少が予想されているが、米国や中国からの需要は堅調に推移すると見込まれ、さらに、両国向け輸出で競合するニュージーランドの牛肉生産が季節的に減少することから、豪州の牛肉輸出をめぐる環境は比較的良好とみられている。

表1 輸出先別牛肉輸出量(2015年6月)
資料:DAFF
  注:船積数量ベース。

肉牛取引価格、記録的な高水準

 豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、肉牛取引価格の指標となる東部地区若齢牛指標(EYCI)価格は、2015年6月末日時点で1キログラム当たり530豪セント(509円:1豪ドル=96円)と、過去最高を記録した(図5)。これは、6月半ばに豪州東部の主要肉牛生産地域を中心に、かなりの降雨が見られたことから、肥育農家の買い付け意欲が高まった一方、繁殖農家が牛群の保留を図っていることで、肉牛市場への出荷頭数が減少したためとみられている。今後の価格については、6月の降雨により、肥育生産者の導入意欲が引き続き高まることで、比較的高水準の価格で推移するとみられている。

図5 家畜市場におけるEYCI価格の推移
資料:MLA
注 1:年度は7月〜翌6月。
  2:東部地区若齢牛指標(EYCI)価格は、東部3州(クイーンズラ
     ンド州、ニューサウスウェールズ州、ビクトリア州)の主要家畜
     市場における若齢牛の加重平均取引価格で、家畜取引の指
     標となる価格。肥育牛や経産牛価格とも相関関係にある。

2015/16年度の需給見通し、生産、輸出ともに減少

 豪州農業資源経済科学局(ABARES)は6月、2015/16年度(7月〜翌6月)の牛肉需給に関する見通しを公表した(表2)。

 これによると、牛総飼養頭数は、高水準となった直近のと畜頭数と生体牛輸出頭数を反映して、前年度をやや下回ると見込まれている。一方、牛肉生産量は、2015/16年度前半は、高水準の肉牛価格とクイーンズランド(QLD)州の一部乾燥気候に伴うと畜頭数の増加により、高水準で推移するものの、2015/16年度後半は、干ばつ後の牛群再構築の始まりにより、減少が見込まれるため、年度全体では、前年度をかなりの程度下回るとみられている。

 また、牛肉輸出量は、牛肉生産量の減少に伴い、前年度をかなりの程度下回ると見込まれている。国別に見ると、絶対的な数量が減少する中で、他の国よりも比較的高い価格で取引される米国、日本、韓国向け輸出の比重がこれまで以上に高まるとしている。ただし、日豪経済連携協定、韓豪自由貿易協定による関税削減などにより、日本向け、韓国向けは増加が見込まれるのに対し、前年度が記録的な高水準であった米国向けは減少が見込まれている。

 なお、肉牛の取引価格は、豪州産牛肉および生体牛に対する海外からの強い需要に加え、2015/16年度後半には牛群再構築とと畜頭数の減少が見込まれていることから、前年度を大幅に上回ると予想されている。

表2 牛肉の需給見通し
資料:ABARES
注 1:年度は7月〜翌6月。
  2:牛総飼養頭数は6月末時点。乳牛を含む。
  3:生産量は枝肉重量ベース。輸出量は船積重量ベース。
  4:2014/15年度は推計値、2015/16年度は予測値。
(調査情報部 根本 悠)


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