需給動向 海外

◆タ イ◆

2015年5月の鶏肉輸出量、かなり大きく増加


鶏肉生産量は引き続き増加

 タイ農業・協同組合省によると、2015年5月の鶏肉生産量は前年同月比7.1%増の14万9796トンとなり、同年1〜5月の累計では、前年同期比7.1%増の73万7883トンとなった。(図11)。

 EUがタイ産生鮮鶏肉(注)の輸入を解禁した2012年以降、堅調な輸出需要を背景に鶏肉生産量は継続的に増加しており、2015年に入っても、生産量は前年同月を上回って推移している。

(注)ここでいう「生鮮鶏肉」とは、加熱加工していない鶏肉で、主に、生で加工処理され冷凍したもの
    である。

図11 鶏肉生産量の推移
資料:タイ農業・協同組合省

2015年5月の鶏肉輸出量は日本向けが増加

 2015年5月の鶏肉輸出量は、生産量の増加に伴い、冷凍鶏肉(カット品)、冷凍加塩鶏肉および鶏肉調製品それぞれの輸出が好調であったことから、全体では5万9126トン(前年同月比13.1%増)とかなり大きく増加した(図12)。

図12 鶏肉輸出量の推移
資料:「Global Trade Atlas」
  注:HSコード:020714(冷凍鶏肉カット品)、021099(冷凍加塩鶏肉)、
     160232(鶏肉調製品)を合計した値である。

 品目別で見ると、冷凍鶏肉(カット品)(HSコード:020714)は1万1616トン(同9.3%増)とかなりの程度増加した。特に、2013年末に10年ぶりに輸出再開となった日本向けが6859トン(同75.2%増)と半数を占めた。日本向け輸出量は今年に入っても増加傾向にあり、直近3カ月は常に6000トン台で推移している(図13)。

図13 冷凍鶏肉(カット品)輸出量の推移
資料:「Global Trade Atlas」
  注:HSコード:020714。

 冷凍加塩鶏肉(HSコード:021099)は、輸出の9割以上を占めるEU向けの増加により、7445トン(同33.2%増)と大幅に増加した(図14)。

図14 冷凍加塩鶏肉輸出量の推移
資料:「Global Trade Atlas」
  注:HSコード:021099。

 鶏肉調製品(HSコード:160232)は、3万9888トン(同10.8%増)とかなり増加した。このうち、日本向けが1万8824トン(同25.4%増)と大幅に増加する一方、EU向けは1万7369トン(同0.6%減)とわずかに減少した。(図15)。

図15 鶏肉調製品輸出量の推移
資料:「Global Trade Atlas」
  注:HSコード:160232。

ブロイラー供給過多は2015年末まで続く見通し

 ブロイラー輸出業者協会によると、現在、タイのブロイラー出荷羽数は週当たり200万羽と供給過多の状態にあり、この状態は年末まで続くとみられている。

 原因は、鶏肉需要の増加により、2014年に入り経営危機に陥っていた大手インテグレーターをはじめ、多くの企業が生産を拡大したことが挙げられる。

 このような状況の中、タイ国内の鶏の取引価格は大きく低下しており(図16)、輸出業者は、一部の大手インテグレーターが生産コストを下回る価格で生体取引を行っていると指摘している。

図16 生体卸売価格の推移
資料:タイ商務省

米国からの輸入停止により、今年前半の原種鶏輸入は大幅減

 タイ農業・協同組合省畜産局によると、2014年、タイは原種鶏56万羽を輸入しており、その内訳は米国が74%、英国が14%、フランスが6%、ニュージーランドが6%である(表4)。しかし、これらの国々での鳥インフルエンザ発生に伴い、2014年11月に英国およびオランダ、2015年1月からは米国からの輸入を停止している。

表4 2014年タイの原種鶏および種鶏の輸入先別羽数とそのシェア
資料:タイ農業・協同組合省畜産局

 現地報道によると、英国はすでに鳥インフルエンザ清浄国への復帰を宣言していることから、タイ当局は近々に輸入再開を許可するとの見通しであり、英国に一部生産拠点を有する米国企業を通じて原種鶏を輸入することにより、米国からの輸入停止の影響を緩和させることが可能としている。

 また、大手インテグレーターは、米国産の代替として、ヨーロッパ、南米など他地域からの原種鶏の調達を検討しているが、今年1月から5月にかけて、タイは原種鶏をニュージーランドからごくわずかに輸入しただけである。今後、原種鶏の輸入を増やすことが出来なければ2016年7月頃からひなが不足し始め、来年のブロイラーの生産量は減少するとみられている。

(調査情報部 中島 祥雄)

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