話 題  畜産の情報 2015年8月号

平成26年秋以降の
バターの品薄について

農林水産省 生産局 畜産部
牛乳乳製品課 乳製品調整官 本田 光広


 昨年秋以降、店頭のバターが品薄となりましたが、これは、酪農家の離農などにより乳牛の頭数が減少していることなどにより、生乳(=搾ったままの牛の乳)の生産量が減少し、バターの生産量・在庫量が減少したことに加え、供給不安などを背景として店頭での家庭用バターの購入量が増加したことなどから起こったものと考えています。

1 バターは需給の調整弁

 国内で生産される生乳からは、牛乳、ヨーグルト、生クリーム、チーズ、バター、脱脂粉乳など、さまざまな乳製品が作られます(図)。

 生乳は、まず最も鮮度が求められる牛乳や生クリームなどに加工され、最後に保存性の高いバターや脱脂粉乳に加工されます。

 生乳生産が多いときは、バターや脱脂粉乳の生産を増やし在庫として保有しておき、一方、生乳生産が不足するときには、バターや脱脂粉乳の生産を減らして保有していた在庫を放出することにより、需給を調整することができ、バターは乳製品全体の安定供給のための需給調整弁の機能を持っています。

 このような生産構造となっているため、生乳生産量が減少してくると、牛乳は不足しないが、バターの生産量が大きく減少するということになります。

図 生乳生産量及び用途別仕向け量(一日平均量)
資料:農林水産省作成

2 平成27年度の生乳生産とバターの需給見込み

 平成27年度の生乳生産については、北海道を中心として回復傾向にあり、北海道の生乳生産量は388万トン、対前年度比+1.5%の増加となると見込まれ、全国の生乳生産量は、前年度と同じ733万トンとなる見込みです(表)。

 平成27年度のバターの生産量は、6万4800トン(対前年度比+5.2%)となる見込みですが、依然としてバターの需要量(消費量)が生産量を上回っており、27年度中に1万2800トンの輸入を農畜産業振興機構が実施することとしました。

 これにより、27年度末の在庫量は、26年度末から16.3%増加し、2万700トンとなる見込みです。

表 平成27年度のバターの需給見込みについて
資料:農林水産省「牛乳乳製品統計」、Jミルク「平成27年度の生乳及び牛乳乳製品の
    需給見通しと当面する課題について」
注1:消費量(推定出回り量)=前年度末在庫量+当年度生産量+当年度輸入量−
    当年度末在庫量。
  2:在庫量は、3月末現在の値。
  3:27年度の値(見込み)は、Jミルク「平成27年度の生乳及び牛乳乳製品の需給見通しと
    当面する課題について」(5月25日公表)に基づき、輸入、在庫量に、27年5月に決定した
    輸入量を算入。
  4:バターの数値は10の位で四捨五入している。

3 農畜産業振興機構を通じた輸入について

 バターが国内の生乳需給の調整弁として機能するためには、無秩序な輸入ではなく、(1)国内で不足する場合には追加輸入(注)により輸入量を増やし、(2)需給が緩和する場合には輸入時期を調整するなど、輸入の量や時期を調整する必要があります。

 こうした運用は、通常の関税の仕組みでは困難であることから、農畜産業振興機構を通じた輸入を行っています。

 こうした仕組みを通じて、バターが需給調整弁として有効に機能するようにし、日本国内のバターだけでなく牛乳なども含めた乳製品全体の需給の安定を図っています。

4 生乳生産基盤の回復のための取り組み

 国内の生乳生産が不足する場合には、バターや脱脂粉乳の形で輸入し、不足を補うこととしていますが、国内の乳製品の需要は、国産で賄うことが基本です。このため、農林水産省としても、生乳の増産に向けて、生乳生産基盤の回復のためのさまざまな対策を実施しています。

 特に、酪農家をはじめとした地域の関係者が連携・結集して、地域全体での畜産の収益性の向上を図る畜産クラスターの仕組みを活用して、(1)経営規模の拡大や新規参入の促進のための施設整備、(2)労働負担の軽減に資する搾乳ロボットなどの機械導入などを支援しているところです。

 農林水産省としては、今後とも、生乳およびバターの需給動向を注視しつつ、酪農および乳業界とも協力して、牛乳・乳製品の安定供給に努めてまいります。

注: 農畜産業振興機構が、国際約束に従って生乳換算13.7万トン/年のバター・脱脂粉乳を輸入するものを
   カレントアクセスという。
    追加輸入とは、農畜産業振興機構が、カレントアクセスによる輸入を実施しても、なお、不足が生じる
   おそれのある場合に、農林水産大臣の承認を受けて、バター・脱脂粉乳などを輸入するもの。

(プロフィール)
本田 光広(ほんだ みつひろ)

平成 2年    農林水産省入省
平成22年4月 牛乳乳製品課課長補佐(生乳班担当)
平成25年7月 畜産企画課課長補佐(総括班担当)
平成26年4月から現職

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