需給動向 海外 |
国内需要の増加により、牛肉輸入量は引き続き増加
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2014年は牛飼養頭数、牛肉生産量ともに前年から減少の見込み 米国農務省海外農業局(USDA/FAS)が10月17日に公表した「Livestock and Poultry: World Markets and Trade」によると、2014年の中国の牛飼養頭数は前年比0.4%減の1億300万頭と見込まれており、2010年以降、減少傾向で推移している(図9)。これは、国内の旺盛な牛肉需要を背景とした牛のと畜の増加が要因とみられる。また、中国では、小規模経営が多く、飼料費などの生産費上昇などで経営環境の悪化も伝えられており、これも飼養頭数の減少要因の一つとされている。
このため、2014年の牛肉生産量は、同2.6%減の653万トンと減少に転じている。 このような中、国家発展改革委員会(中央政府)は国内の牛肉生産の振興を図るとしており、増頭のため個人の肉用牛生産者に対して補助金を交付している(表1)。特に政府は大規模化を推進しているため、大規模飼養者に対する補助は手厚くなっている。
牛肉の小売価格は近年、上昇傾向にあり、11月は1キログラム当たり67.1元(約1275円、1元=19円)となった。国家統計局は、牛肉価格上昇の要因として、ここ2年間で消費量の年成長率が生産量を上回っていることを挙げている。また、現地報道などによると、政府が肉用牛の生産振興を図っているものの、牛の生産サイクルが長いため、短期間に需給バランスの改善が期待できず、牛肉価格は高止まりする状況が継続するとしている。
2014年1〜10月の冷凍牛肉輸入量は前年同期比13.9%増 増加する牛肉の国内需要を賄うため、牛肉輸入量は2013年以降、急増している。2014年1〜10月の冷凍牛肉輸入量は、前年同期比13.9%増の25万7000トンとなった(表2)。また、中国は輸入先の多角化も進めており、2014年に入りメキシコやブラジルとの間で輸入条件などの交渉を進めており、年内には両国からの輸入が可能となる見込みである。これで、中国への牛肉輸出が可能となるのは、豪州、ニュージーランド(NZ)、カナダ、ウルグアイ、アルゼンチン、コスタリカ、メキシコ、ブラジルの8カ国になる。 さらに最大の牛肉輸入先国である豪州とは、11月に自由貿易協定(FTA)の合意に至り、来年の締結が予定されている。牛肉については、現行12〜25%の関税率が9年かけて撤廃されるため、中国食品土畜進出口商会は、豪州産牛肉の輸入量が今後数年間で15〜20%程度増加すると見込んでいる。しかし、国産牛肉価格が高騰している現下において、豪州産牛肉の方が安価になると見込まれるため、国内市場への影響を懸念する声もある。 一方、香港の冷凍牛肉輸入量を見ると、中国本土と同様に増加しており、2014年1〜10月の輸入量は32万2000トン(同24.2%増)となった。主な輸入先は、ブラジルと米国であり、この2カ国で輸入量全体の約9割を占める。なお、オランダの金融機関ラボバンクは、今般、中国がブラジルからの輸入再開を決定したことで、ブラジルの香港向け輸出量は減少するとみている。
(調査情報部 木下 瞬)
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