需給動向 海外 |
生乳生産は増加する一方、乳製品輸出は減少 |
生乳生産、増加傾向が継続 デーリー・オーストラリア(DA)によると、2014年10月の生乳生産量は106万8600キロリットル(110万658トン相当、前年同月比6.0%増)と11カ月連続で前年同月を上回った(図29)。春先まで比較的良好な天候が続いたことや、乳製品の国際価格が低調であるにもかかわらず、大手乳業メーカーが生産者乳価を据え置いていることなどが背景にあるとみられている。しかしながら、夏(2015年2月頃)にかけて平年を下回る降雨量が予想されており、乾草や飼料穀物の価格も上昇傾向にあることから、今後、生乳生産が減少傾向に転ずる可能性もある。 なお、豪州全体の生乳生産の約3分の2を占め、輸出乳製品向けの主要生乳生産州であるビクトリア州の10月の生乳生産量は、前年同月を5.3%上回っているものの、同州西部では0.4%増とわずかな増加にとどまっている。同地域は、3カ月程度降雨量の少ない状態が続いており、州内でもすでに気象条件の悪化が生乳生産に影響を及ぼしている。
乳製品輸出、主要品目は軒並み減少 DAによると、2014年10月の主な乳製品の輸出量は、乳製品の国際価格が低水準で推移していることを受け、脱脂粉乳が1万1904トン(前年同月比9.5%減)、全粉乳が6227トン(同48.1%減)、バターが2947トン(同38.2%減)、チーズが1万3213トン(同5.7%減)と、いずれの品目も前年同月を下回っている(図30)。特に、大半が輸出に仕向けられる全粉乳は、国際価格の影響を最も受ける上、最大の輸出先である中国が在庫を抱え需要が弱まっていることから輸出量は半減している。また、バターは最大の輸出先であったロシアの禁輸措置の影響から、8月以降、毎月20〜40%の減少幅となっている。
豪州の酪農家、今後の情勢について悲観的な見通し オランダの農業系金融機関ラボバンクは2014年12月、今後の豪州の農業の見通しに関する生産者への意識調査の結果を公表した。 これによると、経営をめぐる情勢が悪化していると感じている酪農家は前回9月の25%から46%に増加している。この背景としては、乳製品の国際価格の下落に加え、中国向け乳製品の輸出減少とロシアの禁輸措置の影響があるとしている。また、農業全般において、乾燥気候などの気象要因が生産者の楽観的な見方を弱めている一因としている。 前年度の乳製品輸出数量、金額ともに中国向けが最大 DAは2014年11月、2013/14年度(7月〜翌6月)の乳製品需給を総括した「Australian Dairy Industry In Focus 2014」を公表した。 これによると、豪州の国別乳製品輸出量は、中国が14万3246トン(輸出先シェア19%)、日本が8万9164トン(同12%)、シンガポールが7万9090トン(同11%)となった(図31)。中国は2012/13年度に数量で日本を抜き、さらに2013/14年度は輸出額でも初めて日本を抜き、数量・金額ともに最大の輸出先となっている。これは、豪州にとって日本が主要な輸出先であるチーズについて、中国向けも増加していること、中国向けの主な輸出品目である脱脂粉乳、全粉乳の輸出価格が大きく上昇したことが影響している。 一方、金額でも2位に後退した日本は、3位のシンガポールとの差が縮まっている。豪州が日本よりも需要の増加が見込める中国や東南アジア向けの輸出を重視していることは関係者の発言などから確認されてきたが、輸出実績はこのことを裏付けるものとなっている。
(調査情報部 根本 悠) |
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