需給動向 海外

◆中 国◆

下半期に入り、粉乳の輸入量が減少


生乳の農場出荷価格は引き続き下落傾向

 中国農業部によると、生乳の農場出荷価格は2014年1月以降、下落基調にあり11月には1キログラム当たり3.8元(約72円:1元=19円)となった(図35)。現地報道などによると、乳製品の国際相場が軟化している現下において、国内乳業メーカーはその価格差を埋めるために、生乳を買い叩いていると見る向きもある。中国では近年、乳価が下落する一方で飼料費や人件費などの生産費が上昇しており、経営環境の悪化で、小規模経営を中心とした離農が進んでいる。

 中国乳業協会は、2014年の生乳生産量は前年から回復基調にあるとしているが、小規模経営の離農が進む中で、今後の生乳生産量の減少が懸念されている。

図35 生乳の農場出荷価格の推移
資料:中国農業部畜産局よりALIC作成
  注:統計の集計対象範囲は河北、山西、内モンゴル、遼寧、黒龍江、
   山東、河南、陝西、寧夏、新疆の10省で、全国の生乳生産量の
   8割強を占める

粉乳輸入量は2014年下半期に入り、前年同月を下回る状況が続く

 2014年1〜10月の全粉乳の輸入量は、前年同期比40.5%増の62万1000トンとなった(図36)。国別輸入量を見ると、全体の9割以上を占めるニュージーランド(NZ)が56万5000トン(同39.2%増)と大幅に増加したほか、豪州やウルグアイ、アルゼンチン、チリといった南米からの輸入量も増加している。しかし、9月以降については前年同月を下回っており、10月単月では1万5000トン(前年同月比71.5%減)と大幅に減少した。この要因として、生乳生産量の回復や粉乳在庫の積み増しのほか、中国経済の伸びの鈍化を挙げる声もある。

 また、脱脂粉乳の1〜10月の輸入量は、前年同期比27.0%増の22万4000トンとなった。このうちNZが10万トン(同10.2%増)と輸入量全体の4割以上を占め、これに米国4万7000トン(同11.9%増)、ドイツ1万6000トン(同26.3%増)と続く。脱脂粉乳については、8月以降前年同月を下回っており、10月単月では1万6000トン(前年同月比27.5%減)と大幅に減少した。

 なお、国際相場の軟化を受け、粉乳の輸入単価は下落基調にあり、10月は全粉乳が1トン当たり4174米ドル(49万6706円、1米ドル=119円)、脱脂粉乳が同4157米ドル(49万4778円)となっている。

図36 脱脂粉乳および全粉乳の輸入量の推移
資料:Global Trade Atlas
注1:HSコード040210(脱脂粉乳)、040221および040229(全粉乳)
  2:全粉乳輸入単価はHSコード040221

 一方、ホエイの2014年1〜10月の輸入量は、33万9000トン(前年同期比7.7%減)となった(表11)。国別に見ると、アルゼンチンやNZからの輸入が大幅に減少している。なお、NZ産ホエイの輸入については、NZ大手乳業メーカー、フォンテラ社のホエイ製品にボツリヌス菌が混入した可能性を受けて、中国政府が2013年8月から同社製のホエイパウダーと育児用粉乳原料の輸入を一時停止する措置を講じていた。その後の検査で混入の事実はなかったことが判明し、中国政府は輸入再開を決定し、2014年11月から輸入可能となっている。

表11 ホエイの輸入量の推移
資料:Global Trade Atlas
  注:HSコード040410(ホエイ)
(調査情報部 木下 瞬)

元のページに戻る