需給動向 海外 |
輸出・域内消費の停滞により、価格は大きく下落 |
2014年8月の豚肉生産量、前年同月比0.7%増 欧州委員会によると、2014年8月のEU28カ国の豚枝肉生産量は、前年同月比0.7%増の171万トンと、前年並みであった(図14)。2014年1〜8月の期間でみると、前年同期比1.3%減の1436万トンとなっており、わずかに減少して推移している。
同年9月の豚肉生産量は、一部の加盟国の数値しかまだ公表されていないが、主要国(8カ国)は前年同月に比べ、かなりの増加を見せている(図15)。このため、同月のEU全体の生産量は、大きく増加したものとみられている。
2014年11月の豚枝肉卸売価格、前年同月比17.9%安 欧州委員会によると、2014年11月のEU豚枝肉卸売価格は前年同月比17.9%安の100キログラム当たり140.9ユーロ(2万994円:1ユーロ=149円)と、大幅に値を下げた(図16)。EUの豚枝肉卸売価格は、2013年10月以降、14カ月連続で前年同月を下回って推移している。
価格下落の要因としては、需要面で(1)今夏の平均気温がEU全域で平年を下回り、域内のバーベキュー需要が伸び悩んだこと(図17)、(2)北米地域で、豚流行性下痢(PED)の発生件数が減少して豚肉輸出量が回復したため、EUからの豚肉輸出が鈍化したこと、(3)これまで夏場に最盛期を迎えていたロシア向け輸出が、停止したままであること(図18)、などが挙げられる。
これら需要面の要因に加え、2014年9月の豚肉生産量が前年同月よりも大きく増加したこともあり、10月にかけて価格が大幅に下落し、11月も下げ止まりを見せていないと考えられる。 また、子豚価格も枝肉価格と同様に大幅な下落をみせている(図19)。2014年11月の子豚価格は、1頭当たり35.89ユーロ(5,348円)と前年同月を22.1%下回った。枝肉価格が下落し、ロシア向け輸出の再開が見通せない中、肥育経営の子豚導入意欲は低下している。
豚肉輸出は減少が続く 欧州委員会によると、2014年1〜9月のEU域外への豚肉等輸出量は前年同期比7.7%減と、かなり減少した(表4)。 北米地域でのPEDの発生による豚肉生産量の減少を受け、日本や韓国などアジア地域向けは大幅に増加した。しかし、ロシアやベラルーシ向けの減少分を補完するまでにはいたらず、全体では減少となった。
ロシアの国内豚肉価格は高騰 2014年1月下旬から、ロシアは、ポーランドとリトアニアで発生したアフリカ豚コレラ(ASF)を理由に、EU全域から豚肉の輸入を停止している。 国内での増産により、安定的な供給を目指すとしているものの、同国の豚肉価格は輸入を停止してから大きく上昇している。2014年11月の豚肉の消費者価格は、前年同月比21.0%高のキログラム当たり353.86ルーブル(920円、1ルーブル=2.6円)となっている(図20)。 8月からは、ウクライナ問題に対して欧米諸国がとった経済制裁への対抗措置として、EUから食肉や乳製品を含む幅広い農産物の輸入を禁止しており、ロシア国民の生活は圧迫されているものと推察される。
(調査情報部 宅間 淳)
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