畜産の情報−豪州の牛肉の需給動向 干ばつの長期化に伴い、生産、輸出ともに増加傾向− 2015年7月
需給動向 海外

◆豪 州◆

干ばつの長期化に伴い、生産、輸出ともに増加傾向


牛肉生産量、30カ月連続で増加

 豪州統計局(ABS)によると、2015年4月の牛肉生産量は、20万1839トン(前年同月比8.6%増)となった(図4)。主要肉牛生産州であるクイーンズランド(QLD)州を中心とした2年以上に及ぶ干ばつの影響によりと畜頭数の増加が続いており、30カ月連続で前年同月を上回っている。

 州別に見ると、QLD州の牛肉生産量は、前年同月比12.7%増と、かなり大きく増加している一方、ニューサウスウェールズ(NSW)州、ビクトリア州は、それぞれ同4.5%増、同1.7%増と比較的小幅な増加にとどまっている。豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、最新の気象見通しではNSW州を中心に降雨量の少ない状態が続くとされているため、当面の間は、牛肉生産量は高水準で推移するとしている。

図4 牛肉生産量の推移
資料:ABS
  注:子牛肉を除く。

牛肉輸出量、増加傾向が継続

 豪州農漁林業省(DAFF)によると、2015年5月の牛肉輸出量は11万7487トン(前年同月比8.7%増)と、4カ月連続で前年同月を上回った(表1)。わずかに前年同月を下回った2015年1月を除くと、2年以上前年同月を上回って推移しており、干ばつに伴うと畜頭数増加の影響が表れている。

 国別に見ると、米国向けは、米国国内の生産量の減少と為替相場での米ドルに対する豪ドル安傾向を背景に大幅に増加している。一方、日本向けは、前年同月が比較的高水準であったことや、前月4月には日豪経済連携協定(EPA)が2年度目に入り、日本の牛肉輸入関税が削減され輸出量が大幅に増加した反動から、やや減少している。また、韓国向けは、ばら系などの部位を中心とした堅調な需要からかなり大きく増加しており、中国向けは、前年同月が中国政府の豪州産冷蔵牛肉に対する輸入禁止措置により低水準であったことから、前年同月を大幅に上回っている。

表1 輸出先別牛肉輸出量(2015年5月)
資料:DAFF
注 1:船積重量ベース。
  2:東南アジアは、フィリピン、タイ、マレーシア、シンガポール、インドネシアの合計。

肉牛取引価格、上昇傾向が継続

 MLAによると、肉牛取引価格の指標となる東部地区若齢牛指標(EYCI)価格は、2015年5月末日時点で1キログラム当たり485豪セント(470円:1豪ドル=97円)と、記録的な高水準となった(図5)。例年、5月から6月にかけて価格は季節的に下落するものの、今年度は5月以降も上昇傾向が継続している。これは、干ばつの影響や、継続的な穀物肥育牛肉への強い需要が背景にあり、もと牛需給のひっ迫が懸念される状況となっている。

図5 EYCI価格の推移
資料:MLA
注 1:年度は7月〜翌6月。
  2:EYCI価格は、東部3州(QLD州、NSW州、ビクトリア州)の
    主要家畜市場における若齢牛の加重平均取引価格で、家畜
    取引の指標となる価格。肥育牛や経産牛価格とも相関関係
    にある。

 なお、通常、肉牛取引価格は、6月にかけて下落した後、9月にかけて再び上昇することから、長期化する干ばつに伴う肉牛取引頭数の減少を考慮すると、9月の肉牛取引価格は、5月末日時点をさらに上回る高水準となることが予想されている。

乾燥気候、今後も継続する可能性が高まる

 QLD州政府は2015年5月、直近の気象動向を踏まえ、州全土の8割が干ばつ下にあると宣言した。これはQLD州で干ばつ宣言が出された土地面積としては過去最大であり、QLD州政府も肉牛生産者の水資源確保に及ぼす影響について懸念を示している。

 また、豪州気象局は2015年5月、エルニーニョ現象(注)の兆候が強まっていると公表した。一般に、エルニーニョ現象が発生すると、豪州東部の降雨量は平年を下回る可能性が高まるとされており、QLD州を中心とした干ばつがさらに長期化することが懸念されている。

(注):太平洋赤道域の日付変更線付近から南米のペルー沿岸にかけての広い海域で海面水温が
     平年に比べて高くなり、その状態が1年程度続く現象(気象庁HPより抜粋)

(調査情報部 根本 悠)


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