需給動向 国内

◆牛 肉◆

枝肉卸売価格、好調続く


 平成27年4月の牛肉需給は、生産量は2万9154トン(前年同月比4.1%減)と、依然として全国的な出荷頭数の減少が続いている。輸入量は日豪EPAに基づく、通関繰り延べが行われたため、5万7863トン(同26.5%増)と前年同月を大幅に上回った。推定出回り量は7万9420トン(同3.8%増)と、6カ月ぶりに前年同月を上回った。推定期末在庫は前月より7491トン積み増して、13万4909トン(同26.5%増)と前年を大幅に上回る水準が続いており、特に輸入品在庫の積み増しが顕著となっている。一方、国産品在庫については2カ月連続で9千トンを下回っており、例年と比べて低い水準となった(農林水産省「食肉流通統計」、財務省「貿易統計」、農畜産業振興機構調べ)。

枝肉卸売価格、昨年末よりも高い水準続く

 枝肉卸売価格は、例年、最需要期の12月を過ぎると不需要期の3月ごろまでは低下し、4、5月は焼き材を中心に引き合いが強まることから上昇することが多い。しかしながら、今年は1月以降、昨年末を上回る水準で推移しており、異例とも言える動きとなっている。この要因として、全国的な出荷頭数の減少や需要回復、和牛の輸出量の増加などが挙げられる。特に供給面の要因が大きいとみられ、出荷頭数の前年同月比と価格の推移にはその影響が顕著に現れている(図1)。

訪日外国人数と株価も価格に影響

 今回は上記に加え、注目すべき需要面の要因を2つ紹介したい。

 1つ目は、訪日外国人の増加である。平成26年の訪日外国人は約1300万人(日本政府観光局)、訪日外国人旅行消費総額は約2兆円(観光庁)と、ともに過去最高となった。訪日外国人の外食店での和牛消費が堅調との声もあり、インバウンド需要が今の堅調な枝肉卸売価格を下支えしているとみられる。

 2つ目は、景気指標の1つである日経平均株価の上昇である。リーマンショックや放射性セシウム残留問題の時期を除けば、日経平均株価と枝肉卸売価格は同様の傾向を示しており、興味深い結果となった(図1)。これは、特に和牛は豚肉や鶏肉と比べて日常的に消費されるものではなく、ハレの消費としての性質もあることから、景気動向によって消費量、ひいては枝肉卸売価格が変動するためと推測される。

 以上のように、供給面・需要面ともに下げ要因が見当たらないことから、今後の枝肉卸売価格がどのように変動するのか、注目が集まっている。

図1 和牛枝肉卸売価格と日経平均株価の推移
資料:農林水産省「食肉流通統計」、東京証券取引所
  注:平成27年5月の和牛枝肉価格は速報値。
(畜産需給部 山口 真功)

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