需給動向 海外

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生乳出荷増を見込み、乳価は弱含み


2015年3月の生乳出荷量、前年同月比1.8%減

 ドイツ乳製品市場価格情報センター(ZMB)によると、2015年3月の生乳出荷量(EU28カ国)は、前年同月比1.8%減の1276万トンとなり、同年1月及び2月に続き前年同月を下回った。2014/15年度(4月〜翌3月)の出荷量は、1億4787万トンと前年度比2.9%増となった(図23)。

図23 生乳出荷量の推移
資料:ZMB
  注:2015年は暫定値。

 1984年度以降、31年間続いた生乳クオータ制度の最終年度(2014/15年度)は、制度廃止後を見越して増産体制を整えつつある出荷量上位5カ国、全ての国で増加した(図24)。

・ドイツ   前年度比1.9%増 3124万トン(対EU28カ国占有率21.1%)

・フランス     同2.9%増 2513万トン(同17.0%)

・英国       同5.4%増 1485万トン(同10.0%)

・オランダ     同0.4%増 1240万トン(同8.4%)

・ポーランド    同4.8%増 1058万トン(同7.2%)

図24 生乳出荷量の推移(年度別上位5カ国)
資料:欧州統計局(EUROSTAT)
  注:年度は4月〜翌3月。

穀物、牧草ともに生育は好調

 欧州委員会が公表した作物の生育状況調査によると、2015年の穀物の生育状況は概ね好調であり、特段の懸念材料は見当たらないとされている。同年の穀物全体の単収見通しとしては、豊作であった前年と比べると4.8%減とされているものの、過去5カ年平均との比較では2.7%増と予測されている(表7)。要因としては、ヨーロッパ全域で冬期の気温が平年よりも高かったことに加え、十分な降水量があったためとされている。

表7 穀物単収の予測(EU28カ国)
資料:欧州委員会
  注:2015年5月26日発表 「Crop monitoring in Europe」より作成。

 また、牧草の生育も順調であり、同調査の分析によればEU加盟国全てで平年以上の生育状況が確認されている。特に、アイルランド、イタリア、スロベニアでは、同様の調査が開始された1998年以降で、最大の収量が見込まれている(図25)。

図25 牧草の生育状況(2015年5月1〜10日)
資料:欧州委員会資料よりALIC作成
  注:緑が濃いほど生育が良好な地域。

2015年4月の生乳取引価格、前年同月比19.6%安

 オランダ農業園芸組織連合会(LTO)によると、2015年4月の平均生乳取引価格(EU域内主要乳業メーカー16社)は、前月から0.3ユーロ下落し、前年同月比19.6%安の100キログラム当たり31.44ユーロ(4307円:1ユーロ=137円)となった(図26)。

 ロシアの禁輸措置の解除が見通せない中、EUの乳製品市場は、生産量のピークとなる5月をクオータ廃止後に初めて迎える。加えて、良好な気象条件により、飼料作の好調な生育が伝えられており、昨年以上の増産も予測されるため、一層の価格下落が懸念されている。

図26 生乳取引価格の推移
資料:LTO
  注:域内主要乳業16社の平均値。
(調査情報部 宅間 淳)

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