需給動向 海外 |
枝肉価格は低水準だが、上昇基調で推移 |
2015年2月の豚肉生産量、前年同月比3.5%増 欧州委員会によると、2015年2月のEU28カ国の豚枝肉生産量は、前年同月比3.5%増の186万トンと、やや増加した(図8)。2015年の予測では、夏前までは前年をやや上回って推移し、年間では前年並み(前年比0.9%増)の生産量とみている。
前年並みの生産が見込まれる要因として、豚枝肉卸売価格が低水準にとどまっているものの、飼料価格が安価で推移していることが挙げられる。2015年4月の豚用配合飼料価格は、1トン当たり264.5ユーロ(3万6237円:1ユーロ=137円、前年同月比4.8%安)と、前年のEU域内の穀物の豊作を受けて安価で推移している(図9)。また、配合飼料の主原料の一つであり、輸入により調達されている大豆かす価格も、同13.4%安と、前年よりかなり大きく下げて推移している。加えて、欧州委員会の見通しでは、EU域内の穀物生産は2015年も豊作と予測されており、豚用配合飼料価格は、引き続き安値傾向が継続するものとみられている。
2015年4月の豚枝肉卸売価格、前年同月比10.8%安 2015年4月のEU豚枝肉卸売価格は、前月からやや値を上げたものの、前年同月比10.8%安の100キログラム当たり144.0ユーロ(1万9728円:1ユーロ=137円)と、かなり大きく下落した(図10)。過去3カ年平均と比べると、12.9%安(21.3ユーロ(2918円)安)と、依然として低い水準にあるものの、3月9日から7週間にわたって実施された豚肉の民間在庫補助(PSA)と季節的な需要増を受け、最安値をつけた1月(130.1ユーロ)から14ユーロ(1918円)値を戻している。
枝肉価格の緩やかな上昇を受け、肥育もと畜である子豚価格も上昇基調で推移している。2015年4月の1頭当たり子豚価格は、前年同月比15.2%安(44.6ユーロ、6110円)と大きく下落しているが、最安値をつけた2014年10月(35.5ユーロ)から9ユーロ(1233円)値を戻した(図11)。 枝肉価格の上昇と、安値で推移する飼料価格を背景に、肥育豚経営の導入意欲が高まっているものと考えられる。
民間在庫補助は7週間で終了も、今後に課題を残す 欧州委員会は4月27日、ロシアの禁輸措置などによる豚肉価格の低迷を受けて、3月9日から7週間にわたって実施していた豚肉のPSAを終了した。 今回の措置で、保管対象となった豚肉は合計6万3507トンであった(表2)。部位別に見ると、高級部位であるロイン(骨抜き)が3万9799トン(占有率:62.7%)と最も多く、保管期間別に見ると、90日間が4万5503トン(同71.7%)と最も多かった。
また、国別の申請実績を見ると、上位からデンマーク(占有率:24.0%)、スペイン(同21.6%)、ドイツ(同12.5%)、ポーランド(同12.0%)となっており、豚肉輸出国の利用実績が多かった(表3)。
このことから、豚肉輸出国が輸出対象としている品目(高級部位)が、PSAの対象となったことが推察できる。加えて、90日間の保管期間を選択した申請が多かった理由としては、保管開始から90日後が6月〜7月と北半球の夏季に当たり、アジア諸国など輸出先国では豚肉価格の上昇が見込まれる需要期となるためと考えられる。 欧州委員会は、今回のPSA発動により、「豚肉の市場価格は安定し、適度な流通量へ減少させることができた」とコメントしている。しかし、発動による豚枝肉価格の顕著な上昇は確認されなかった(図12)こともあり、本事業のあり方については検討を要する、との専門家の意見もある。
英国農業園芸開発公社(AHDB)は、(1)ダイオキシンの豚用飼料への混入問題が契機となって発動した前回(2011年)と異なり、ロシアの禁輸措置は解除までの道のりが予測できなかったこと、(2)申請された豚肉が、もともと輸出用であり、域内市場からの隔離という本来の目的が完全には達成されなかったこと、などからPSAの効果は限定的なものであったと分析している。 また、EU全体の農業協同組合の中央組織である欧州農業組織委員会/欧州農業協同組合委員会(COPA/COGECA)からは、豚肉産業全体へ効果を波及させるには、豚肉に限らず、ラードなど副産物も対象にすべきであるとの意見も出されている。 (調査情報部 宅間 淳)
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