需給動向 国内 |
4月の推定期末在庫、6カ月ぶりに積み増す |
平成27年4月の豚肉需給は、生産量は前年同月をわずかに下回る7万4970トン(前年同月比1.4%減)、輸入量は前年同月をわずかに上回る7万3092トン(同0.5%増)、推定出回り量は前年同月をやや下回る13万8720トン(同5.5%減)となり、推定期末在庫は前月から9315トンを積み増し、18万7909トン(同11.4%増)となった(農林水産省「食肉流通統計」、財務省「貿易統計」、農畜産業振興機構調べ)。26年10月の約22万トンをピークに、その後は減少傾向で推移した推定期末在庫は、6カ月ぶりに積み増しへと転じた。 4月の輸入量は前年並みも、冷凍品はスペイン産の割合が増加 平成27年4月の輸入量は前年同月をわずかに上回ったが、その内訳も、冷蔵品が2万7898トン(前年同月比0.7%減)、冷凍品が4万5194トン(同1.2%増)と、いずれも小幅な増減にとどまった。 冷蔵品については、依然として米国、カナダ、メキシコからの輸入がほぼ全量を占め、各国の輸入量に増減はあるものの、順序に変化は見られなかった。 一方で、EU産が輸入量の5〜6割を占める冷凍品では、国別の割合に変化が見られた。中でも注目されるのは、15.6%を占め、デンマーク、米国に次ぐ量となったスペインである(図2)。スペイン産冷凍品の輸入量および冷凍品に占める割合を月別に見ると、数年間にわたり増加傾向で推移していることが分かる(図3)。26年度前半に急増したものの、10月には割合が、11月には輸入量が大きく落ち込み、その後、再び増加基調となっている。
スペイン産の増加、米国産および国産の供給環境が一因 冷凍品輸入量を年度別に見ると、平成25年度は第5位であったスペインからの輸入が大幅に増加し、前年度からやや減少となったメキシコ、カナダを上回り、デンマーク、米国に次ぐ第3位となっている(図4)。なお、冷蔵品を加えた豚肉全体の輸入量では、米国、カナダ、デンマークに次ぐ第4位である。 スペイン産増加の背景として、以下の要因が考えられる。まず、日本の最大の豚肉輸入相手国である米国においては、25年度から26年度にかけて、現地牛肉相場の高止まりや、豚流行性下痢(PED)の感染拡大に伴う生産量の減少により、現地豚肉相場が上昇したことが挙げられる。現地豚肉相場は史上最高値を更新するほど上昇し、加えて円安傾向も継続したため、米国産の輸入量は大幅に減少した。 次に、25年10月に日本国内で発生したPEDが、翌年春頃に全国的に拡大したことから、秋以降の豚肉生産量が減少すると予想されたことが挙げられる。特に加工原料向け豚肉の供給が不安視され、相場高にあった米国以外から冷凍品を調達する動きが強くなったものと思われる。 冷凍品調達先の多様化も、スペイン産の増加に拍車をかける 一方で、冷凍品輸入量の5〜6割を占めるEUにおいては、ポーランドでアフリカ豚コレラが発生したため、日本は同国産の豚肉を輸入停止としたものの、ウクライナ情勢を契機としたロシアのEU産農畜産物の禁輸措置により、EU産に日本向けの輸出余力が生じた。また、その他の国の内訳では、オランダ、ハンガリー、オーストリア、ドイツ、イタリアなどからの輸入量が増加していることから、輸入商社が冷凍品の輸入相手国を分散させる動きもあったと考えられる。 これらの要因が重なったことでEU産冷凍品の輸入量が増加し、中でも、その時点における日本の需要への対応が可能であったスペインからの輸入量が、大きく増えたとみられる。 前述のとおり、4月もスペイン産の割合は高水準を維持しているが、これが一時的な傾向なのか、あるいはすでに一定の需要が定着しているのか、現時点では不明である。日本の生産量はPEDの影響から回復傾向にあり、米国では秋以降増産が予想されるなど、今後の供給環境が日々変化していく中、輸入品の動向についても注目されるところである。
(畜産需給部 三田 修司)
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