畜産の情報−豪州の牛肉の需給動向 牛肉生産見通し、増加傾向を受けて上方修正− 2015年6月
需給動向 海外

◆豪 州◆

牛肉生産見通し、増加傾向を受けて上方修正


増加傾向が続く牛肉生産

 豪州統計局(ABS)によると、2015年2月の牛肉生産量は、22万609トン(前年同月比7.1%増)となった(図5)。29カ月連続で前年同月を上回っており、増加傾向が続いている。

図5 牛肉生産量の推移
資料:ABS
  注:子牛肉を除く。

 同月のと畜頭数は、主要肉牛生産州であるクイーンズランド州をはじめ、豪州国内の多くの地域で乾燥気候となったため、これまでの高水準を維持し、79万228頭(同6.2%増)となった。一方、同月の1頭当たり枝肉重量は、重量の重い穀物肥育牛のと畜頭数の増加傾向を反映して、279キログラム(同0.8%増)となった。

上昇傾向が続く肉牛取引価格

 豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、肉牛取引価格の指標となる東部地区若齢牛指標(EYCI)価格は、2015年4月23日時点で1キログラム当たり445豪セント(432円:1豪ドル=97円)となった(図6)。2014年12月のまとまった降雨を受けて、2015年1月から2月にかけて過去最高を記録した後、3月から4月にかけて下落したものの、再び上昇傾向となっている。これは、穀物肥育生産者からの強いもと牛需要を反映している。穀物肥育は、牧草肥育ほど乾燥気候の影響を受けないことに加え、日本や韓国など穀物肥育牛肉の安定的な輸出先からの強い需要が背景にある。

図6 家畜市場におけるEYCI価格の推移
資料:MLA
注1:年度は7月〜翌6月。
  2:東部地区若齢牛指標(EYCI)価格は、東部3州(クイーンズランド州、ニューサウス
    ウェールズ州、ビクトリア州)の主要家畜市場における若齢牛の加重平均取引価格で、
    家畜取引の指標となる価格。肥育牛や経産牛価格とも相関関係にある。

 なお、豪州気象局は、2015年4月〜6月の降雨量の見通しは、南部を中心に平年を上回るとしている。こうした見通しが実現した場合、放牧環境が良好となることで、南部を中心に牧草肥育生産者の肥育もと牛導入意欲も高まり、さらなる価格上昇が予想される。

MLAの牛肉需給見通し、生産量、輸出量ともに上方修正

 MLAは2015年4月、四半期に一度の牛肉需給見通しを公表した。これによると、2015年の牛と畜頭数は、820万頭(前年比11.1%減)と見込まれている(表1)。2014年の牛と畜頭数は記録的な高水準であったため、前年比では減少しているものの、前回1月時点の予測を40万頭上回る頭数となっている。この上方修正についてMLAは、2015年第1四半期のと畜頭数が予測を上回る高水準であったことに加え、第2四半期も穀物肥育牛を中心に引き続き高水準での推移が見込まれるためとしている。また、1頭当たり枝肉重量は安定的な推移が予想されるとしており、その結果、同年の牛肉生産量は、226万トン(同11.4%減)と見込まれている。

 一方、2015年の輸出量についても、牛肉生産量の上方修正を受けて、115万トン(同10.9%減)と上方修正された。このうち、米国向けについては、米国市場において、米国国内で生産された牛肉、豚肉、鶏肉の小売店での販売量増加との競合を懸念材料としている。一方、日本向けについては、日本市場での競合国である米国の西海岸港湾における労使交渉難航に伴う物流の混乱や、為替相場の豪ドル安傾向が、豪州産の輸出増加を後押しするとしている。

表1 牛肉需給見通し
資料:MLA
注1:牛総飼養頭数は各年6月末時点、乳牛を含む。
  2:牛と畜頭数は子牛除く、牛肉生産量は子牛肉除く。
  3:生産量は枝肉重量ベース、輸出量は船積重量ベース。
(調査情報部 根本 悠)


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