需給動向 海外 |
乳製品生産はおおむね増加傾向 |
2015年1月の乳製品生産は全粉乳を除き増加 生乳生産量の増加を背景に、乳製品生産量は全体的に増加傾向で推移しており、タスマニア(TAS)州をはじめとした多くの主要生産州における降雨による牧草生育環境の改善が、豪州全体の生乳生産増加を牽引しているとみられている。 デーリー・オーストラリア(DA)が公表した2015年1月の乳製品の品目別生産量は、以下の通りである(図23)。
脱脂粉乳は、インドネシアを中心とした東南アジアからの輸入需要の拡大、また、チーズは、主要輸出先である日本からの堅調な需要により、いずれも増加傾向が続いている。一方、全粉乳は、主要輸出先である中国で需要の低迷が続いていることもあり、減少傾向が続いている。
乳製品価格、再び下落傾向 2015年4月15日に開催された乳製品国際価格の指標とされるグローバルデーリートレード(GDT:ニュージーランド(NZ)最大手乳業メーカー、フォンテラ主催の電子オークション、月2回開催)における1トン当たり平均取引価格は、総平均で2620米ドル(約31万円:1米ドル=120円、前年同期比35.3%安、前回比4.6%安)となった。2015年1月から2月にかけて、NZの生乳生産の減少見込みから上昇したものの、3月以降再び下落傾向で推移している(図24)。品目別は以下の通り。 ・脱脂粉乳:2253米ドル ・全粉乳:2446米ドル ・バター:3026米ドル ・チーズ:2888米ドル
下落の要因としては、市場の先行きに対する不透明感が挙げられる。フォンテラが公表した「Global Dairy Update」によると、中東やアフリカの乳製品需要は堅調な一方、中国の需要は依然として弱まっているとしている。また、2015年3月にクオータ制を廃止したEUの主要生産国で増産が見込まれていることも、GDTの乳製品価格の下落に影響しているとみられる。 経営見通しは楽観的 オランダの農業系金融機関ラボバンクは2015年3月、2015年の豪州の農業経営環境に関する意識調査の結果を公表した。これによると、同年の経営見通しについて「良くなる」と回答した生産者は全体の45%を占め、「前年と同水準」との回答は同40%、「悪くなる」との回答は同13%にとどまった。「良くなる」と「悪くなる」の割合の差は+32ポイントとなり、2011年3月以来4年ぶりの高水準となった。 この要因としてラボバンクは、降雨によって良好な飼料作物の生育環境を得られる見通しが立っていることに加えて、乳価が堅調に推移していることを挙げている。また、米ドルに対して豪ドル安で推移する為替相場についても言及しており、海外市場で豪州産の競争力が増していることも、楽観的な経営見通しを立てる生産者が多いことの要因としている。 なお、地域別に見ると、TAS州で「良くなる」と「悪くなる」の割合の差は、14年前に統計を開始して以来の最高値(+55ポイント)となっており、同州に活発に参入している企業資本の参入による農家への直接投資の増加などが背景にあるとみられている。 乳業業界、中国市場への攻勢強める 4月17日、東京で開催されたDA主催の乳業セミナーでは、「中国では、過剰在庫の影響から、粉乳の需要は未だに低迷している一方で、生活の西洋化や食の安全に強い関心を持つ消費者層の拡大により、低温殺菌牛乳やフレーバーチーズといった高価格帯の乳製品の需要が増加している」と報告された。同セミナーでは、「中国とは自由貿易協定(FTA)が今年中に発効される見込みであることから、同国向け輸出をさらに増加させていきたい」と報告されており、豪中間のFTAへの期待が示された。 こうした中で豪州乳業業界は、中国市場への進出に積極的であり、DAによると、南オーストラリア州乳業協会(SADA)は、イタリアのパルマラット社と提携して、週4000リットルペースで中国への牛乳の空輸を開始したとしている。 (調査情報部 竹谷 亮佑) |
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