需給動向 海外

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生乳価格は前月から横ばいも、需要に弱含み


2015年2月の生乳出荷量、前年同月比1.7%減

 ドイツ乳製品市場価格情報センター(ZMB)によると、2015年2月の生乳出荷量(EU28カ国)は前年同月比1.7%減の1112万トンとなり、前月に続き前年同月を下回った(図20)。生乳クオータ制度の最終年度である2014/15年度(4月〜翌3月)の2月までの累計生産量は、1億3505万トンと前年同期比3.3%増に達しており、一部の加盟国では、クオータ超過を避けるため、前月に続き減産に動いたものとみられる。

図20 生乳出荷量の推移
資料:ZMB
  注:2015年は暫定値。

2015年3月の生乳販売価格、前年同月比18.6%安

 欧州委員会によると、2015年3月の平均生乳販売価格(EU28カ国)は、前年同月比18.6%安の100キログラム当たり31.98ユーロ(4285円:1ユーロ=134円)と、7カ月連続で前年同月を下回った(図21)。なお、乳製品の国際価格を反映し、前月比ではわずかに上昇(0.4%高)しているが、酪農関係者の間では、生乳生産量がピークを迎える5月に向け、再度の価格下落を懸念する見方もある。

図21 生乳販売価格の推移
資料:欧州委員会

 また、乳製品の価格は、年明けから3月にかけて上昇基調にあったが、4月に入り再び下落に転じている(図22)。直近の4月第3週の価格を品目別に見ると、次のとおり軒並み下落している。

・バター:100キログラム当たり321ユーロ
 (4万3014円、前月第1週比2.6%安)

・脱脂粉乳:同198ユーロ
 (2万6532円、同9.4%安)

・全粉乳:同266ユーロ
 (3万5644円、同1.1%安)

・チェダーチーズ:同322ユーロ
 (4万3148円、同2.7%安)

図22 乳製品価格の推移
資料:欧州委員会

輸出は、新規市場で増加

 欧州委員会によると、2015年1〜2月のEU域外への主要な乳製品の累計輸出量は、脱脂粉乳(前年同期比24.3%増)を除き、バター(同1.7%減)、チーズ(同17.1%減)、全粉乳(同9.8%減)は、いずれも減少した(表3〜6)。

 地域的に見ると、全体としては減少傾向が強い中、中東や北アフリカ地域を中心に大きく増加している。ユーロ安米ドル高が進む為替相場を背景に、ロシアを含むCIS諸国向けの代替輸出先として、新規市場の開拓が進んでいるものとみられる。ただし、バターや粉乳類については、輸出数量は多いものの、輸出単価は安いとの見方もあり、収益性の面から、これら新たな輸出先へのさらなる拡大は難しいとの意見もある。

表3 バター輸出量の推移(1〜2月累計)
資料:欧州委員会
表4 チーズ輸出量の推移(1〜2月累計)
資料:欧州委員会
表5 脱脂粉乳輸出量の推移(1〜2月累計)
資料:欧州委員会
表6 全粉乳輸出量の推移(1〜2月累計)
資料:欧州委員会

欧州委、新たな農産物販売促進策を採択

 欧州委員会は、4月21日付で新たな農産物販売促進事業の承認を発表した。承認されたプログラムは、全体で41件(事業費:1億3000万ユーロ(174億2000万円))で、うち6件(3カ国、事業費:2439万ユーロ(32億6822万円))が乳製品に関連した内容となっている(表7)。これらの販促プログラムは、半額を欧州委員会の農業予算から、残りを事業実施国の公共あるいは民間からの拠出により実施され、2015年半ばから開始される予定としている。

 欧州委員会は生乳クオータ制度廃止に向けて、(1)生乳の売買に係る契約関係の健全化を目的としたミルクパッケージ政策の推進と、(2)乳製品の需給動向に関する情報提供を目的とした牛乳・乳製品市場観測サイト(MMO)の運営を、既に実施してきた。このため、制度が終了した2015年4月以降には、追加的な対策を打ち出してはいない。しかし、今回採択した販促プログラムは、全てEU域外を対象としたものであり、輸出需要の強化により、乳製品市場の安定を図ろうとするものと考えられる。

表7 新規農産物販売促進事業(乳製品)
資料:欧州委員会
  注:欧州委員会は事業費の半額を補助。
(調査情報部 宅間 淳)

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