需給動向 海外 |
豚飼養頭数は減少傾向、豚価は引き続き低迷
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豚飼養頭数は依然として減少 中国農業部によると、豚飼養頭数は2014年9月以降、減少傾向にある。2015年2月には4億頭を割り込み、3月は3億8698万頭(前年同月比10.9%減)となった(図9)。また、繁殖母豚頭数も2013年1月以降、減少傾向にあり、2015年3月は4040万頭(同15.7%減)となった。
2014年1月の春節(旧正月)以降、豚肉は供給過剰にあるとされ、生体豚の農場出荷価格(豚価)は下落傾向にある。また、例年、豚肉の最需要期に当たる春節(2015年は2月下旬)前に出荷が集中するが、2015年は「中央八項規定」(倹約令)(注1)の影響などによる消費の減退で供給過剰となり、豚価の上昇は見られなかった(図10)。
このため、生産者の経営状況が悪化し、零細農家を中心に養豚業からの離農が進み、飼養頭数は前年同期を下回る状況が続いている。なお、政府が生産者の収益性の指標値とする豚/穀物比(注2)は、2015年4月時点で5.3と損益分岐点の5.5を下回っている。飼料となるトウモロコシ価格の上昇幅は小さいものの、豚価の下落幅が大きく、豚を出荷しても赤字となることから、生産者の増頭意欲はみられず、飼養頭数の減少による今後の豚肉供給不足が懸念される。一方、2015年4月の豚価は、1キログラム当たり12.9元(251円:1元=19.5円)と、前月比で上昇に転じたことから、豚価の下落は底を打ったとの見方もある。 このような中、中国農業部は4月20日、「中国農業展望報告(2015−2024)」を公表した。この報告では、2015年下半期に、豚肉需要が供給をやや上回るとし、豚価および豚肉価格が上昇すると見込んでいる。このため、豚/穀物比も改善し、2015年中には養豚経営が黒字に転換するとしている。さらに今後10年間は養豚経営の大規模化が進み、価格の変動幅は現在よりも縮小すると見ている。 (注1)2012年12月に中国共産党が採択した倹約を励行する規定。本規定では公費による接待・宴席や (注2)1キログラム当たり豚肉(生体)価格/1キログラム当たりトウモロコシ卸売価格。損益分岐点は 2015年第1四半期の豚肉生産量は前年から減少 中国国家統計局によると、豚肉生産量はと畜頭数の増加を受けて、近年増加傾向にあり、2014年の豚肉生産量は、5671万トン(前年比3.1%増、枝肉重量ベース)となった。しかしながら、2015年第1四半期は、供給過剰を反映して1557万トン(前年同期比3.1%減)とやや減少した(図11)。
一方、「中国農業展望報告(2015−2024)」では、豚肉生産量が、今後も安定的に増加すると見込んでいる。他方、生活水準の向上により、食肉需要が多様化していることも指摘しており、食肉生産量に占める豚肉の割合は、2014年の66.4%から2024年は64.9%に低下すると予測している。 2015年第1四半期の豚肉輸入量、前年比5.8%増の15万トン 2015年1〜3月の豚肉輸入量は、前年同期比5.8%増の15万310トンとなった(表2)。国別では最大の輸入先である米国は、中国政府が2013年3月からラクトパミンの残留検査に対する規制を強化しているため、同21.2%減と大幅に減少し、ドイツに首位を譲った。また、ドイツやスペイン、デンマークなどは、ロシアが2014年2月にEU産豚肉の禁輸措置を講じたことから、中国をロシアの代替市場として、中国向け輸出量を増加させた。 「中国農業展望報告(2015-2024)」では、国内生産量の増加よりも、国内消費の伸びの方が大きいと見込まれるため、長期的には輸入量が増加すると予測している。具体的な数値は、2015年の豚肉輸入量が59万トン、2019年が80万トン、2024年は100万トンに達するとしている。
(調査情報部 木下 瞬)
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